気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【おいしく正しく食べるための「習慣」】では、食べ物をしっかり、そして楽しく食べることに関するしきたり22~43をご紹介します。
今回は、しきたり25:いただきますとごちそうさま、感謝して声に出して言う習慣をつける、についてです。
●おいしく正しく食べるための「習慣」●
四季があることは、食材にも四季があるということです。四季は身体にも影響があり、身体をスムーズに動かすためにも、四季に合わせた食べ物を身体に取り入れることが必要です。
食べられればなんでもいいのではなく、四季に合わせた食べ方、取り入れ方を考えなければなりません。食べ物に困らないからこそ、食べ方、食材の選び方が大切になっているのです。
食べ物をおいしく、楽しく食べることも大切です。姿勢、箸 の持ち方、食べる順序なども、昔から伝えられた習慣です。これらを守ってこそ、おいしく、そして楽しくいただくことができるのです。
食べるのは、基本的な生きる姿勢です。食べることは身体を維持する当たり前の行為です。生きること=食べることともいえるわけですから、シッカリ、キチンと選んで、最後まで残さず食べる、これは、なにより大切な家庭のしきたりとしなければならないでしょう。
しきたり25
いただきますとごちそうさま、
感謝して声に出して言う習慣をつける
いま、私たちは多くの食べ物を、なに不自由なく手にし、調理して食べることができます。それは、地域で生産・収穫されたものばかりではなく、遠く輸入された食べ物も含め、私たちは食糧に困ることはありません。
食べ物といえば、野菜でも、肉、魚、卵でも、生命の宿った生き物なのです。例えば、稲が育ち、実をつけるには、受粉期間がなければ、米という実をつけることはありません。その受粉期間はたった二週間というとても短いものです。また、鶏も生育して、ある年齢に達しなければ、卵を産み落とさないのです。
このように、生命を持つ植物や動物たちがいなければ、私たちは、自身の生命を養うことができないのです。ほかの生命があって初めて私たちは食べるものを確保できるというわけです。食べ物を食べる、つまり食事することは、それは命をいただくことですから、「いただきます」の言葉があるのです。
このような「いただきます」の気持ちを表して食事をするのは、気持ちよく暮らす家庭の食習慣です。何も言わずに食べ始めたり、いただきますを言っても、感謝の気持ちが込められなかったりしたのでは、食事がおいしくいただけません。
いつも食事をするときには、どんなところでも、どんな場合でも、必ず「いただきます」をきちんと声に出して感謝することが大切です。たとえ、立ち食い蕎麦をかき込んだりしても、食べる前には生き物たちへの感謝の気持ちを表すのが、生活の習慣でなければなりません。
さらに、食べ終わったあとは、「ごちそうさま」の感謝も必要です。ごちそうをいただいたのですから、食べ物を生産してくれた方、調理してくれた方、片づけてくれた方、始末してくれた方など、この食事をいただけたことへの感謝の気持ちを表すのが、「ごちそうさま」です。ごちそうさまを言わずに、途中で食事を中断したり、箸を置いたり、遊んだりして、食事を最後まできちんと食べず、いい加減な気持ちで食べることを慎むためにも、最後の「ごちそうさま」があるのです。
ヨーロッパでは、食事中のタバコは厳禁。私の友人は途中でタバコを吸い、食事を下げられた、とブツブツ言ってましたが、下げるのが正しいのです。途中でタバコを吸うなんて、食事を投げ出したということと同じなのですから、最後まできちんと食べ終わり「ごちそうさま」があって初めて終了となるのが、家庭の食習慣です。
「いただきます」と「ごちそうさま」は、常に一対となった家庭でのしきたりでなければならないのです。
次回は、しきたり26:食べ物をムダにせず、残さず食べる、についてご紹介します。