気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【おいしく正しく食べるための「習慣」】では、食べ物をしっかり、そして楽しく食べることに関するしきたり22~43をご紹介します。
今回は、しきたり27:嫌いなものが食卓に出ても、感謝を忘れずに食べる努力をする、についてです。
●おいしく正しく食べるための「習慣」●
四季があることは、食材にも四季があるということです。四季は身体にも影響があり、身体をスムーズに動かすためにも、四季に合わせた食べ物を身体に取り入れることが必要です。
食べられればなんでもいいのではなく、四季に合わせた食べ方、取り入れ方を考えなければなりません。食べ物に困らないからこそ、食べ方、食材の選び方が大切になっているのです。
食べ物をおいしく、楽しく食べることも大切です。姿勢、 箸の持ち方、食べる順序なども、昔から伝えられた習慣です。これらを守ってこそ、おいしく、そして楽しくいただくことができるのです。
食べるのは、基本的な生きる姿勢です。食べることは身体を維持する当たり前の行為です。生きること=食べることともいえるわけですから、シッカリ、キチンと選んで、最後まで残さず食べる、これは、なにより大切な家庭のしきたりとしなければならないでしょう。
しきたり27
嫌いなものが食卓に出ても、
感謝を忘れずに食べる努力をする
人には誰でも苦手だったり、嫌いだったりする食べ物があります。暮らしている環境が違うと、どうしても食べられない、匂いが受けつけられないなどといった食べ物に出会うことがあります。それが身体によいとわかっていても、なぜか苦手意識が先に立ってしまうのです。
例えば、にんにく、葱、玉ねぎなどは、私の苦手としている食べ物です。食べないということではありませんが、苦手で、あえて積極的に食べたいほどの食べ物ではないのです。もちろん、身体を温め、ビタミンB1の吸収促進をする食べ物ですから、とり続けることで、身体の抵抗力がつくことはわかっています。でも進んで食べたい、と思う食べ物ではないのです。
こうした苦手食べ物について思うとき、私は小さいころの食環境を考えずにはいられません。食べる物がなかった時代ではありませんので、これは好き嫌いによるものである、と考えるわけです。小さいときの食環境を直さずに、そのまま大人になり、好き嫌いがあると、困るのは自分です。
ことに、特別ではないにしろ、友人宅などに招かれたときの食卓が嫌いなものばかりだったりすると、途方に暮れてしまいます。招かれた人数が多ければいいのですが、少なかったりすると、本当に困ります。先日、友人宅で小さな集まりがあり、並んだ料理にすべて玉ねぎ、にんにく、葱が使われていたのです。
こんなときには、取り皿に少々盛りつけ、少しいただき、苦手なものをさりげなく取り皿に残しておくことにしています。あとで、友人が気がつくかもしれないし、気がつかないかもしれないのですが、せっかく一生懸命に作ってくれた友人への感謝の気持ちは忘れたくないので、つとめて食べるようにしています。ですから目立った嫌いの意思表示は、できるだけ慎むようにしたいのです。
家庭でも同じことです。食卓にいつも好きなものばかりとは限りません。子どもであれば、ハンバーグやシチュウなどは大好物かもしれませんが、一方、牛蒡のきんぴら、春菊のお浸し、にんじんの胡麻和えなどは嫌いな食べ物で、それらが食卓に出ることもあるでしょう。それを、「嫌い」のひと言で、食べないのでは大人になってから、私のように大変困ることになります。家庭の食習慣として心がけてほしいのは、食卓に嫌いなものが出たとしても、食べる努力をすること。嫌いとわがままを出させないようにすることです。それと、作物を作ったり、調理した人に感謝する気持ちを忘れないようにすること。この気持ちを持ち続け、少しずつ食べていけば、おいしさがいずれわかってきます。
嫌いな食べ物に対しても、つとめて感謝することが家庭の食習慣となってほしいものです。
次回は、しきたり28:食事の時間へ切り替えるために、食卓を整えて拭き清める、についてご紹介します。