気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり46:引っ越すときはきちんと挨拶し「飛ぶ鳥跡を濁さず」、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
つきあいをうまくするには、まず自分の性格、家族の性質などを十分に把握して、欠点をわきまえておくことが大切です。それがわかれば無理することがなく、背伸びすることもない、身の丈に合った、心地よいつきあいができるに違いありません。
しきたり46
引っ越すときはきちんと挨拶し
「飛ぶ鳥跡を濁さず」
入学、卒業、転勤、新居建築などで、これまで住んでいたところを移動しなければならないとき、あと始末をきちんとするのが、引っ越しのしきたりです。「飛ぶ鳥跡を濁さず」です。
引っ越しは、長年住み暮らしていたところを動くわけですから、暮らした長さにもよりますが、住まいが傷んでいたり、設備に不備が発生していたり、不具合が起こっていたりすることがあります。これらを見過ごしにして移動することなどできませんので、きちんと元通りにして、賃貸の場合などは、家主さんとのつきあいで、あとを濁さないことです。家主さんが企業などのときには、少なからず事務的にあと始末をすることになりますが、これは仕方ないこと。不備や不具合を回復して引き渡しを完了させることです。
家主さんと少なからぬおつきあいがあったときには、挨拶を欠かさないのがしきたりです。万一、移動したあとで新住所が必要となるかもしれませんので、家主さんには、連絡先の新住所をちゃんと知らせておくことです。引っ越す前日に、長年お世話になったお礼を述べましょう。そのときにはちょっとしたお菓子などを持参するのが普通です。
ところで、これまで暮らしていたところのご近所、地域で、親しくおつきあいをしていた方はいませんか? もし、いらっしゃったなら、早めにお別れの会などを開いてもいいでしょう。こうした会は、私の海外ホームスティでもしばしば行われます。たった一週間のホームスティであっても、別れを惜しむ会が開かれます。お茶会と同じような会です。私と知り合った人たちを二〜三人呼んで、お茶、お菓子で話しをするのです。楽しかった、可笑しかった、感動したなどどんなことでも話し、一緒にときを過ごすのです。これは思い出に残りますし、別れてもまた会えるような気がしてきます。
忙しい場合には、お別れの挨拶だけでも。特にご近所で親しくしていた方へは、お礼の品、例えば和菓子、チョコレート、写真立てなどを持参して、挨拶することを忘れないようにします。なんの挨拶もなく、そのまま引っ越ししてしまうのは、ご近所づきあいのしきたりに反することですから、気をつかうようにします。それは、引っ越しした先でも同様です。ご近所のお仲間入りをしたという挨拶が欠かせません。向こう三軒両隣といって、これからご近所づきあいをしていくところへは、引っ越して来ましたとの蕎麦代わりにハンカチ、タオルなど持って挨拶をしておくことです。
そのときに、ゴミ出しルール、町内会のことなど、必要な情報を伺うようにすると、あとで困ることにならないはずです。できれば夫婦揃って挨拶しておきましょう。
次回は、しきたり47:人を訪ねるときは手みやげを持参し、いただいたら「お持たせ」でもてなす、についてご紹介します。