気持ちよく暮らす「生活のしきたり」しきたり/60:モノを借りたら、親しければ親しいほど、すばやく返す
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり60:モノを借りたら、親しければ親しいほど、すばやく返す、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
しきたり60
モノを借りたら、親しければ親しいほど、
すばやく返す
モノは借りたら返すのが当たり前のことです。とはいっても、毎日が忙しい現代ですから、借りたモノをすぐに返す人は、珍しいかもしれません。特に親しければ親しいほど、借りたままにしないのは礼儀です。
貸したほうにすれば、いつまでも戻ってこない、いつになったら戻してくれるのか、戻ってきても傷んでいるのではないかなど、よけいな気をつかうことになりかねません。そして、貸さなければよかった、と思われてしまっては、つきあいに溝をつくることになるかもしれないのです。友人であれば、それまでのつきあいに亀裂が入るかもしれないのです。貸したモノが戻ってこない、というたったそれだけのことでです。これだけで亀裂ができるのも、つきあいとして深くなかったということなのでしょうが、反対に、つきあいとは、こんなことでダメになる、もろい絆(きずな)かもしれません。
どのようなつきあいであっても、自分と同じ気持ちでのつきあいはありません。人の気持ちは千変万化します。自分の気持ちひとつを取ってみても、昨日と同じではありえません。人の気持ちも千変万化するわけですから、ほんのちょっとした行き違いからでも、気持ちのずれが生じるものです。そこにつきあいの亀裂が生まれることにもなるのです。特に、金銭のことなどでは、家族、親戚であっても、つきあいに亀裂の入りやすい要素といえます。こと金銭では、それが原因で、親子、兄弟、親類などの仲がこじれてしまうことが多いものです。
どんな貸し借りについても、戻ってこないことを覚悟のうえで貸してあげるか、それができなければ、ハッキリと断るしかありません。これで、つきあいがダメになるようなら、初めからそのつきあいは、持続しなかったと思うしかない、とめることが肝心です。
つきあいをスムーズに、穏やかにしていくためには、ちょっとした失敗や失態などは早めに修復するに限ります。「言葉の行き違い」「説明不足」「気遣い不足」「返却忘れ」などに気がついたら早めに対処することです。遅くなればなるほど、取り返しがつきにくくなります。つきあいとは、なんにもなくて当たり前。どちらかが寄りかかっても、どちらかが引いてもつきあいは成り立ちにくく、対等なつきあいなどできません。失敗や失態は正直に修復するようにします。
また、自分のつきあいですから、失敗や失態は自分で責任を取ることです。人に相談して知恵を借りようなどと思わないこと。自分のまいた種は自分で刈り取るしかありません。つきあいを長く、よい状態で続けようと思ったら、相手の気持ちを推し量る努力をする、自分の気持ちを押しつけない、自分ができないことはしないなど、自分なりのつきあいルールを決めるのも大切なことです。
つきあいは、実は簡単なことですが、モノの貸し借りだけでも考えずに行動してしまうと、とても難しくなったりするものです。誰とでも心してつきあうことが肝心です。
次回は、しきたり61:縦つながりの上司とのつきあいは、その人のよいところだけを見てつきあう、についてご紹介します。