気持ちよく暮らす「生活のしきたり」/縦つながりの上司とのつきあいは、その人のよいところだけを見てつきあう
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介しています。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり61:縦つながりの上司とのつきあいは、その人のよいところだけを見てつきあう、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
しきたり61
縦つながりの上司とのつきあいは、
その人のよいところだけを見てつきあう
仕事の場である会社では、仕事の内容によらず、社内・社外などのさまざまな人とのつきあいが生まれるところです。つきあいたくないと思っていても、嫌がうえにもつきあいが生まれるところ、それが会社です。
しかも、会社でのつきあいは、縦につながるつきあいが多いところです。上司・部下、先輩・後輩、得意先・取引業者などです。
本来つきあいとは平等であるはずですが、会社でのつきあいばかりは、すんなりと平等というわけにはいかず、会社づきあいをとても難しく、面倒で嫌なものにしているのです。
なぜなら、仕事にかかわったつきあいだからです。仕事が関係しなければ、自分の決めた基準でつきあえばいいのですが、仕事は暮らしの糧を引き出すところゆえに、基準だけで判断できず、難しく、厄介で、大変で、面倒なものとなってしまっているのです。仕事ですから、仕事は仕事と割り切って、つきあいも割り切れれば、こんなに簡単なことはないのです。といって、簡単に割り切れるものではないのが会社づきあいです。
縦つながりの会社づきあいは、仕事が関係するだけに、自分の将来にも関係してくるかもしれないので、単純に割り切ることなどできないのです。縦つながりの社会は江戸時代から連綿とつながった社会ですから、このつながりを断ち切ることなど、無理なことです。
この縦つながりのつきあいを、どうしたらスムーズに、嫌な気持ちにならず、淡々とつきあっていくことができるのでしょうか。私は人を読むことだと考えています。人を読むとはその人なりの利点、性格、癖、考え、仕事ぶりなどから、どんな気質を持っているのかをいち早く知り得ることだと思うのです。そして、その人のよいところだけを見てつきあうに限る、と思っています。
人は悪いところも多く持ち合わせており、その悪いところを見てつきあえば、どんなにいい人でも嫌になってしまい、つきあいだけではなく、会社までもが嫌になってしまうのです。これでは、我慢しながら会社に勤めなければなりません。それは苦痛以外のなにものでもありません。苦痛を和らげながら、ほどほどにつきあっていくには、縦つながりの上にいる人を読むことだと思っています。
また、自分が縦の上にいったときには、下にいたときの気持ちをとかく忘れてしまいがちです。それではせっかく下にいたときの意味がありませんので、下へは自由を与えること、無理じいはしない、断られても受け止めるなど、下への配慮をするべきだと思います。会社は生き物です。嫌な縦つながりだと思っていても、いずれは嫌な縦の上は消えていくのです。そう思って縦つながりで働く意味を考えると、「横のつながりをラクにすること」が働くつながりだと思えるようになり、嫌なつきあいもなくなるはずです。嫌だと思っているから嫌になるのであって、いいなと前向きに思っているとつきあいもよいほうへ向いていき、仕事だけではなく、縦つながりもいいものになってきます。
会社のつきあいをよくするのも、悪くするのも、自分の気持ち次第だということです。
次回からは、●意思疎通をなめらかにする言葉遣いの「心がけ」●についてのしきたりをご紹介していきます。