気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
しきたり70:座席を譲られたら、その親切心にこたえる
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすためのカジュアルな決まり事を、テーマごとにご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【気持ちよい暮らしをするための、社会生活の「決まり」】では、暮らしを快適にするためのしきたり68~77をご紹介しています。
●気持ちよい暮らしをするための、社会生活の「決まり」●
社会には、気持ちよく、暮らしを快適にするための、社会を緩やかにかたちづくっているルールがあるのです。このルールは、誰が決めたわけでもないのですが、いわば長い歴史の常識がつくり上げてきたようなものです。それに逆らって暮らしても、きっと心地よさは得られないでしょう。少々はずれても、大きく添っていれば気持ちよく、暮らしていられるはずです。そんなルールを社会マナーとでも呼び、私たちはうまくルールに合わせてきました。
しきたり70
座席を譲られたら、その親切心にこたえる
つい最近の出来事です。仕事帰りに荷物を抱え、電車に飛び乗りました。私の前には、年配とおぼしき人が歩いています。電車が動き出したとき、一人の男性が年配者に席を譲るべく、立ち上がりました。その人は軽く会釈をして、スッと座りました。続いていた私の目の前に、若い男性が同じようにスッと立ち上がり、私に向かって座るようにというしぐさをしたのです。
その途端、私は「いいえ」と言ったきり座りもせずスタスタと歩き、次の車両に向かったのです。立ち上がった男性はさぞバツが悪かっただろうと思いました。でも、そのとき次で降りる、まだそんな歳じゃない、今日は疲れていない、といった気持ちがグルッグルッと頭を巡ったのだと思うのです。
その後、いろいろな人にこの話しをすると、「せっかく譲ってくれたのに」「親切心を無にして」「言訳より譲られる歳を自覚したほうがよい」など、いろんな意見を聞くことになりました。
なるほど、人が席を譲るとは、こんな親切心で譲ってくれていたのか。一方、譲られる側の気持ちになってみると、なんとまだ譲られたくない心境も浮かんできました。
ただ、反対に朝の満員電車では譲らない人がいるのも事実です。満員のときこそ譲ってほしいと思うのですが、誰も仕事に備え体力を温存しておこうと思っているのか、これはかないそうもありません。
席を譲る・譲られるという間には、これほどの距離があったことも実感できました。人の好意がまだまだ存在していることもわかりました。
こんな親切な人たちが多いこの社会では、この先も社会のルールがおおいに役立っていくこともわかりました。次回からは、こうした親切心にはありがたく添ってみようかと思っています。
次回は、しきたり71:気持ちよく電車の車内で過ごすためルールを守る、についてご紹介します。