気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
最初のパート【四季とつきあうための「習わし」】では、日本の四季にまつわるしきたり1~21をご紹介します。
今回は、【四季とつきあうための「習わし」】から、
しきたり14:お盆の帰省では、負担のないように気づかう、についてです。
●四季とつきあうための「習わし」●
季節が移り変わる日本では、季節を暦代わりにし、移りゆく季節の変化を愛でながら日々を過ごしていました。四季は暦代わりですから、四季折々が暮らしの節目ともなり、また暮らしに、その四季を取り入れる風流さも持っていたのです。着るものには、季節の模様、桜、菖蒲、花火などを描き、併せて帯にもマッチした模様を使いました。食では、必ず旬を味わい、盛りつけにも季節が感じられるよう工夫を凝らしていました。住まいでは、 、障子をうまく使いこなし、風、雪、雨などの季節を音で聴き、眺めることで、楽しんでいました。
季節行事は、季節に合わせていますから、暮らしの節目が感じられるばかりでなく、季節を楽しむ日本人の心の表れでもあるのです。
季節の移り変わりや自然の色や香りを、暮らしの中に取り入れながら、ゆとりを持って、暮らしを楽しむようにしたいものです。
しきたり14
お盆の帰省では、帰省する者も迎える者も
負担のないよう気づかう
お盆は、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ )から由来していると思われがちですが、仏教伝来以前から古い信仰による盆行事があったといわれます。それによれば、盆は祖霊を御霊として祭るだけでなく、生き御霊として健在である親に、魚を贈ったりする行事もあったそうです。七月あるいは八月の十三日から十六日までの盆行事は、正月行事と並び、民間では大事な行事だったのです。
年中行事の中でも正月行事と並ぶ大切な行事ですから、正月に故郷に帰省することと同様に、故郷から遠く離れて暮らす家族は、祖霊祭りに参加する、親のご機嫌を伺うなどの意識から盆帰省が当然だったのです。
しかし近年では、夏休みとも重なり、祖霊祭りや親のご機嫌伺いというよりは、夏休みの家族旅行意識が強いようです。それも、子どもが小さいときだけで、高校生くらいになると家族旅行などは疎ましくなりますから、盆帰省として、家族一緒の旅行もしなくなるようです。小さいときだけとしても、迎える側からすれば、気遣いはもちろん、金銭的にも大変です。実家とはいっても、宿代わり、甘え放題というのでは困ります。迎える側への配慮を十分に考えることが必要です。おみやげだけではなく、手伝い、あと始末、片づけなどを積極的に行うことです。
友人は年老いた親のところに孫まで連れて帰省するときには、参加した全員が合宿のように過ごし、親はもちろん弟家族にも負担がないように、最後には布団干し、掃除、ゴミの始末まですべて終えてくる、と話していましたが、それが本来の帰省だと、私は思いました。
家族大勢で押しかけるのですから、金銭的な提供を申し出たり、労働を請け負ったり、自宅で過ごすのと同じように考えることが、帰省するほう、迎えるほうどちらの気持ちも負担が少なく、お互いが心地よく過ごせると思います。
次回は、しきたり15:お墓参りはお盆や彼岸にこだわらず、無理せず行けるときに行けばいい、についてご紹介します。