今回の山形行きの目的は、1935年創業のオリエンタルカーペット を訪ねることでした。日本の絨毯業界の老舗オリエンタルカーペットが、世界的に有名なクリエイティブディレクター佐藤可士和氏とコラボレーションして創り上げた新作「TAIYO」を見るためです。
また、地元の女性に仕事を提供したいという思いで立ち上げた手織り絨毯の企業と知り、おでかけ女史としては興味津々です。
山辺木綿で知られる染色の町 山形県山辺町では、昭和初期の冷害凶作により、生活のために女性が身売りをするほどの大不況が起こりました。オリエンタルカーペット創業者の渡辺順之助は、中国北京..から手織り絨毯の技術者7名をよびよせ、2年間滞在させてその技術を伝承させました。当時中国では絨毯職人は男性と決まっており、女性に直接技術を教えることはなく、技術を習得した日本人男性技術者が、女性の織り手を育成したそうです。
当時からかわらない工場。
希望日の前日までに申し込めば、ものづくりの現場を間近で感じられる工場見学ができます。
工場に入り靴を脱ぎ、絨毯の上にのります。沈み込むような感覚のあと、程よい反発。一歩一歩足の裏で感じる心地よさが、旅で疲れた足をいたわってくれます。
“山形緞通クオリティー“とファーストコンタクト。「足下からのおもてなし」の洗礼をうけました。
欧米の靴の生活、日本の素足の生活、生活様式の違いが、如実に表れている気がします。
いよいよものづくりの現場に潜入です。
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デザインにあわせて自社で染色した毛糸が並びます。色鮮やかで眺めているだけでも楽しくなりますね。使用する毛糸は、作品ごとに色が組まれ、まるで絵の具のパレットのようです。
こちらは手織り緞通。
完成サイズにより、一人または複数人が織架台につきます。
たて糸に手結びした毛糸をカットするシュッシュッという音が、清潔でしんとした室内に響きます。リズミカルに音が続くのも、熟練した織り手さんならでは。
微妙な色変化を表現するため、瞬時に最適な色の毛糸を選ぶ技術も求められます。
このように、数人が並んで同時に手織り工程を進めるためには。よこ糸やあや糸の張り加減やスピードが揃わなければなりません。最低でも3~5年の経験が必要で、それでも1日に織り上げられるのは7~8cmほどだそうです。
宮内庁御用達、バチカン宮殿への納入などの実績を持つ、超一流品のものづくりには忍耐と高い技術が必要なのですね。
こちらは職人さんがフックガンを手に、手刺し緞通を制作しています。
基盤となる木綿の基布に、図柄にあわせた毛糸を打ち込んでいくのです。手織りよりはシンプルにみえますが、横・縦・斜め・曲線と自在に工具を操れるようになるまで3年ほどはかかるそうです。
今回発表される新作「TAIYO」も手刺しでつくられたもの。
3色展開の内の RED / レッドの制作途中の場にいあわせることができました。
裏からフックガンで撃ちこまれた毛糸は、立体感をもって表に現れます。
完成していたNAVY / ネイビー 。
「TAIYO」で「宇宙の神秘、無限のパワーを感じる皆既日食の太陽」を表現した佐藤可士和氏。「UMI」をデザインした奥山清行氏、「KOKE」をデザインした隈研吾氏ぶにつぐ「デザイナーライン」の三人目のデザイナーです。
太陽の白い輪郭部分浮き出たようにみえてとても神秘的です。他に BLACK / ブラックがあり、ベースの色によって神秘的、またはパワフルさが伝わってきます。
デザインから毛糸の染色、織り、オリジナル技法の「マーセライズ加工（化学洗濯艶出し加工）」、クリーニングなどのメインテナンスまで全て自社管理のもとで行われ、ヨーロッパの伝統がある「メゾン」のような印象を受けました。日本の緞通の老舗と世界的に有名な日本人デザイナーとのコラボレーション作品が、海外の邸宅に飾られているさまを想像し、日本人として誇らしい気持ちになりました。
日本のものづくりにふれる旅、これからも続けていきたいと思います。
