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初公開作品にも注目!「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

今回は、現在、六本木ヒルズ内の森アーツセンターギャラリーにて開催中の「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」[会期 2019年1月17日(木)~3月24日(日)]のご案内です。国内だけでなく世界中で人気の高い天才アーティスト、葛飾北斎の生涯にわたる画業を知ることができる貴重な特別展です。

北斎と言うと、まず思い浮かぶのは、この「冨嶽三十六景神奈川沖浪裏」。海外でも、「Great Wave」と呼ばれて、北斎の代表作として広く知られていますが、実は、こうした浮世絵の風景画は、北斎の画業のごく一部に過ぎません。「北斎」という名も一時期に使っていた画号のひとつで、20歳でデビューしてから90歳の絶筆まで、さまざまに画号を変え、手法も画風も時々によって大きく変化していきます。

 

今回の展覧会は国内外から集められた多数の作品を通して、北斎の多岐に渡る活動の全貌を知ることができます。多数の初公開作品がそろっていることもこの展覧会の特徴です。それによって、これまでの北斎像をアップデートし、また新たな魅力に気づくことができる。なるほど、それで展覧会の名称が「新・北斎 HOKUSAI UPDATED」なんですね。

 

この展覧会では、北斎の画家としての人生を、時期ごとの作風とその当時使っていた主な画号によって6つのパートに分けて展示しています。

第一章は「春朗期」。20歳から35歳ごろ。このころは、その時代に一世を風靡していた勝川春章の門人としての活動が中心で、「勝川春朗」という名で、役者絵を多く手掛けていました。

「五代目市川団十郎 松王丸・市川門之助 桜丸」

天明8年(1788)島根県立美術館(永田コレクション)展示期間1月17日(木)~1月28日(月)

 

五代目市川団十郎の表情が、先日、十三代目市川団十郎白猿を襲名すると発表された市川海老蔵さんに、どこか似ている気がします。

 

 

「新版浮絵両国喬夕涼花火見物之図」(天明年間1781~89)日本浮世絵博物館 展示期間1月17日(木)~2月18日(月)

「浮絵」と呼ばれる西洋の線遠近法が使われているため、手前のものが浮き出したように見えます。

 

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第二章「宗理期」は36歳~46歳ごろ。

勝川派から離脱して、琳派の「俵屋宗理」の名を受け継ぎました。この時期は、浮世絵版画は少なくなり、お金持ちが注文して作る私的な出版物「配り物」の挿絵が多くなりました。

「風俗三美人図」寛正10年(1798年頃)太田記念美術館 展示期間1月17日(木)~2月18日(月)

うりざね顔でほっそりしなやかな体つき。北斎好みの美人画。

 

 

第三章は「葛飾北斎期」46歳~50歳ごろ。

いよいよ、北斎という画号を使い、読本と呼ばれる小説の挿絵師として活動が多くなりました。

「しん板くミあけとうろふゆやしんミセのづ」文化中期(1807~12)頃 島根県立美術館(永田コレクション)展示期間1月17日(木)~2月18日(月)

 

これはすごく面白い。それぞれの絵を切り抜き、組み合わせて、立体的な物を作るためのものです。

組み立てると、ほら、こんなお風呂屋さんが出来上がります。

これを大きくした模型も展示され、前に立っての記念撮影が可能です。

 

 

第四章「戴斗期」は51歳~60歳ごろ。

このころは門人も増えたため、絵手本が多く発表されました。日本全国に、自分の画風を広め、伝承してもらうという目的もあったそうです。

かの有名な『北斎漫画』は、このころ制作された絵手本の一つです。

 

 

第五章「為一期」は61歳~75歳ごろ

わたしたちがよく知っている、「冨嶽三十六景」などの多色刷り錦絵が登場。数々の代表作が、意外にも、かなり高齢になってから制作されたことに驚きます。

左から「冨嶽三十六景 凱風快晴」・「冨嶽三十六系 深川万年橋下」いずれも天保初期(1830~34)頃。島根県立美術館(新庄コレクション)展示期間1月17日(木)~2月18日(月)

 

左から「百物語 お岩さん」・「百物語 こはだ小平二」いずれも天保2-3年(1831-32)頃 中右コレクション 展示期間1月17日(木)~2月18日(月)

 

 

「神奈川沖浪裏」の摺の工程を見ることもできます。こんなに何色も重ねて、あの美しい作品が出来上がるんですね。

 

次ページに続きます。

第六章「画狂老人卍期」は75歳~90歳ごろ。

さらに新しい技法を求め、題材も幅広くなります。

「向日葵図」弘化4年(1847年)シンシナティ美術館 通期展示

 

今回、初公開の作品。北斎にも向日葵の絵があったとは驚きです。江戸時代の絵に描かれた向日葵というもの自体、はじめて見た気がします。

 

 

「弘法大師修法図」弘化年間(1844年~47年)西新井大師總持寺 通期展示

 

宗教的な題材が増えたのもこの時期の特徴です。

 

 

 

音声ガイドのナビゲーターは落ち着いた語り口の女優、貫地谷しほりさん。語りは大人気の講談師、神田松之丞さんです。北斎がその絵を描いた時の状況や時代背景がよくわかります。

 

冨嶽三十六景や北斎漫画をモティーフにしたオリジナルグッズも魅力的です。

 

「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」[会期 2019年1月17日(木)~3月24日(日)]

森アーツセンターギャラリー

 

 

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

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