子どもたちや赤ちゃんの絵が並ぶ
「画家が見た子ども展」
こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回も、会期が延長された展覧会のご紹介です。
三菱一号館美術館で開催中(2020年9月22日<祝>まで)の、「画家が見たこども展」。主に19世紀にフランスで活動したナビ派の画家たちによって描かれたかわいらしい子供や赤ちゃんをテーマにした絵を楽しむことができます。
こちらの美術館でも、他の美術館同様に、検温、体調確認、密を避けるための事前予約制などのコロナウィルス感染対策が行われています。
訪れる側も、マスク着用、体調が優れない時、感染者の濃厚接触者と見なされる場合は行かないのなどのマナーを守りたいですね。
事前予約は、こちらのホームページから行えます。
この展覧会は、三菱一号館美術館の開館10周年を記念して開催されるものです。三菱一号館は、もともと、1894(明治27)年、英国人建築家、ジョサイア・コンドルによって設計された洋風事務所建築です。老朽化のために1968(昭和43)年に解体されましたが、40年あまりの時を経て、コンドルの原設計にのっとって同じ地に復元されました。復元に際しては、階段部の手すりの石材など、保存されていた部材を一部建物内部に再利用し、建築技術も当時のものを研究して再現しているため、明治期に建てられた洋館そのままの風格が感じられます。この建物は、2010(平成22)年春、美術館として利用されるようになりました。丸の内の一角にありながら、周辺もまるでヨーロッパの街角のような雰囲気。展覧会も、建物と同時代の19世紀末から近代のヨーロッパ美術を中心としたものが多く、他では見られない作品が展示されることもよくあるため、わたしも、しばしば足を運んでいます。
今回の展覧会は、南フランスのル・カネというところにあるボナール美術館との共同開催で、こちらでの展示が終わったあとは、そちらの美術館でも同様の展覧会が開催されます。ピエール・ボナールは、印象派の続く世代の芸術家グループであるナビ派を代表する画家のひとりで、日本の浮世絵にも影響を受けた色彩の美しい作品を数多く残しました。自身には子供はいなかったものの、5人の甥と姪がいました。ボナールというと、まず思い浮かぶのは、奥さんのマルトが入浴している様子を描いた絵ですが、甥や姪をモデルにしたかわいらしい絵もよく描いていました。
(右)ピエール・ボナール 歌う子供たち(シャルルとジャン・テラス)
(左)ピエール・ボナール 小さな少年
右の絵に描かれたシャルルとジャンは、ボナールの妹の子供たちです。妹の夫は音楽家だったので、子供たちも小さなころから音楽を学んでいたようです。譜面を見つめる二人の真剣な表情が愛らしいです。左の絵の少年も甥のひとりなのでしょうか。ボナールは、このように、子供が一心不乱に何かをしている時の表情を捉えるのが得意なようです。
(右)ピエール・ボナール サーカスの馬
(左)ピエール・ボナール 雄牛と子ども
ボナールは奥さんのマルトを亡くした後、ル・カネのアトリエにこもって制作に没頭しました。こちらの二枚は、ボナール最晩年の作品です。右の絵は馬だけ、左の絵は、雄牛と子供を描いたもので、ボナールが子供だけでなく、動物も愛情深く見つめていたことがわかります。左側の絵の子供を見る雄牛の目が何とも言えず優しくて、絵の中の世界に引き込まれます。
(右)モーリス・ドニ 入浴するノノ
(左)モーリス・ド二 入浴、システィーナ通り
モーリス・ド二も、ナビ派を代表する画家のひとりです。二度の結婚を通じて9人もの子供をもうけたため、家の中には、常に小さな子供がいたことでしょう。そのため、このような日常的なシーンをもっとも重要なテーマとしていました。右の絵に描かれた赤ちゃんは、ノノという愛称で呼ばれた長女のノエル。左の絵にもかわいらしい女の子が三人も描かれています。
(右)モーリス・ドニ 親密さ(窓辺で縫物をする女性)
(中)モーリス・ド二 ベランダでボールを持つ子ども
(左)モーリス・ド二 子ども部屋 (二つの揺りかご)
こちらも三枚ともド二の作品。家の中に子供がいるだけで、こんなに生き生きとした絵になるのですね。
(右)アルフレド・ミュラー 踏切(四輪車)
(左)アルフレド・ミュラー ピクニック
ミュラーは版画家として活躍した人で、ナビ派とのコラボレーションも行っています。
左側のピクニックは、当時の少女たちがどんなおしゃれをしていたかも知ることもできる、たいへん興味深い作品です。
(右)アリスティード・マイヨール 若い少女の横顔
(左)アリスティード・マイヨール 若い少女の胸像
マイヨールは彫刻家として有名ですが、画家を目指し、ナビ派とともに活動していたこともあります。どちらも色合いが柔らかく、おしゃれな構図。わたしなら、この絵を部屋に飾りたい。
(上)フェリックス・ヴァロットン 事故 (『息づく街パリ』より)
(下)フェリックス・ヴァロットン 女の子たち
ヴァロットンは、スイス生まれ。ボナールなどとは違った視点でパリの街かどで起こる出来事などを描きました。斬新な構図で、写真のように一瞬をとらえています。下の版画の中の女の子たちの表情は、ちょっと意地悪そう。単にかわいいだけではない、子供の持つ別の側面を描いたのでしょうか。
三菱一号館美術館の中の、わたしが好きな場所のひとつ。展示室を巡る途中に一休みできるコーナーがあり、今回の展覧会に関係するいろいろな資料を見ることもできます。
三菱一号館美術館はミュージアムショップの品物もハイセンス。今回のオリジナルグッズでは、ヴァロットンの版画をモティーフにしたTシャツが秀逸です。
作品の中の子供たちをモティーフにした缶バッジもいいですね。
開館10周年記念 画家が見た子ども展
2020年~9月22日<日>
・開館時間 10:00~18:00
・休館日 月曜日(但し、祝日・振替休日、7/27、8/31は開館)
◆来館にあたって:
入場者数を管理するために、日時指定予約制を導入しています。
チケットの日時指定予約とご入館にあたっての詳細は、こちらからご確認ください。
吉田さらさ 公式サイト
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