※7月に北海道白老にオープンし話題のウポポイ (民族共生象徴空間=アイヌのさまざまな文化を学べる施設が点在する国立民族共生公園と国立アイヌ民族博物館)。アイヌについて学びたくて、10月に訪ねました。
こんにちは、寺社部長の?田さらさです。東京都民にもGOTOキャンペーンの利用が許可されるようになった10月、北海道に出かけました。紅葉が美しく、よい旅になりました。しかし現在、北海道は、新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向で、少し心配な状況になっています。今はちょっと遠出を見合わせたいという方は、状況が落ち着いてから旅行するための情報としてお役立てください。
今回わたしは、新千歳空港から札幌に行き、小樽などを旅してから、白老というところに行きました。ここは、海、山、湖などの自然に囲まれた、アイヌの文化を体感できる町です。
駅から徒歩で10分ほどのところに、今年の7月にオープンしたばかりの施設、ウポポイ (民族共生象徴空間)があります。ポロト湖という美しい湖に面した敷地内には、アイヌのさまざまな文化を学べる施設が点在する国立民族共生公園というエリアと、国立アイヌ民族博物館があります。現在、ウポポイの入場には日付け予約が必要です。国立アイヌ民族博物館は、それとは別に、日時を指定した入場整理券が必要となります。予約は2週間前からですが、現在は、新型コロナウイルス感染防止の観点から、特に博物館の入場人数の制限が厳しいため、日程が決まったら、早めに予約を取る方がよいと思われます。ウポポイの公式サイト内の「チケット・予約案内」の部分をよく読んで、間違いのないようにしてくださいね。
今回、わたしは入場してすぐ、国立アイヌ民族博物館に行きました。
現代的な美しい建造物です。
2階に上がると、壁一面の大きな窓から、ポロト湖と国立民族共生公園の美しい風景を眺めることができます。まるで絵のようです。
展示室に入る通路の壁に、このような映像が映し出されます。歓迎してくださっている雰囲気が伝わってきて、わくわくしますね。
基本展示室には、アイヌ民族の視点で語られる6つのテーマ展示があり、ことば、世界、くらし、歴史、しごと、交流にまつわる展示物を通して、アイヌ民族について学ぶことができます。わたしはまず、正面にある、「わたしたちの歴史」のコーナーから見学しました。ここでは、地図と年表を使った映像で、現代に続くアイヌの歴史を知ることができます。
こちらは、「私たちのことば」のコーナーです。アイヌ民族は文字を持たず、物語を口伝えで語り継いできました。こちらの映像では、代々伝承されてきた物語や、アイヌ語のしくみ、アイヌ語由来の地名などについて知ることができます。
館内及び展示室の表示や解説パネルには、アイヌ語による表示が行われています。アイヌ語はこちらの第一言語とされ、最初に表示してあります。
各展示には、このように、アイヌ語を受け継ぐ人々が書いたアイヌ語による解説文があります。アイヌ語にも、地域によってさまざまな方言があります。そうしたことばの多様性を守り、後世に伝えるため、それぞれの執筆者の方言や表記法でアイヌ語が記されています。
こちらは、「私たちのくらし」コーナーにある、アイヌ民族の食事の一例の模型です。穀物、魚、肉など、さまざまな食材が使われています。手前の引き出しは、本来は、自分で開けて見るためのものですが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、現在は触れることができません。
これは鮭のいろいろな調理法を示す模型です。鮭は利用価値が高く、大切な食物であったことがわかります。
アイヌの人々の衣装です。普段はもっと簡素な衣服を着ており、このように手の込んだ刺繍のある衣装は、祭など、特別な時のための正装用です。
こちらは、「私たちの世界」の展示です。神道や仏教とはまた違う、アイヌ民族の世界観、自然観、死生観などがわかり、たいへん興味深いです。
イオマンテの祭の様子を表現した模型です。アイヌの世界では、神はカムイと呼ばれます。熊に代表される動物のカムイは、肉や毛皮などを土産に人間の世界にやってきます。その動物のカムイの霊魂(ラマッ)をもてなし、再びカムイの世界に送り返すのが、イオマンテの祭です。カムイの世界に戻ったラマッは、自分がどれほどのもてなしを受けたかを他のカムイに話し、その結果、また土産を持ったカムイが人間の世界にやってくるというサイクルになっているようです。
博物館を見学した後、ランチに行きました。
入場ゲート手前の無料エリアには、レストラン、カフェ、フードコート、ショップがあります。
今回は、その中のひとつ、「焚火ダイニング・カフェ ハルランナ」というレストランで、蝦夷鹿の焚火ローストコースをいただきました。鹿はアイヌの人々にとっても重要な食物でした。こちらで出されるのは、アイヌ文化に源流がある食材を現代の技術を用いて調理し、かつ北海道産の食材を多用した創作料理です。
まずは、スープ、そして、クルミとセタエント(ナギナタコウジュ)という香草が入ったパンです。アイヌの人々は、このセタエントをお茶にして飲んだり、おかゆに入れたりするそうです。右の薄緑色の飲み物にはヨモギのゼリーが入っています。苦味はなく、すっきりと飲みやすいです。
続いて、秋鮭のマリネとヤリイカのマリネの前菜です。お皿の上にもソースがありますが、さまざまな香草をすり鉢ですって、オリーブオイルと混ぜたソースも少しずつかけて、味の変化を楽しみます。
いよいよメインの蝦夷鹿の焚火ローストです。骨付きのバラ肉と、シンタマという部位(後ろ足のもも肉の前側の部分)が、朴葉の上に豪快に盛られています。白老の自然をイメージし、もみじや赤い木の実も飾られています。
デザートは、キャラメル風味のジェラートとブドウのレアチーズケーキ。上にかかっている白い泡は、白樺の樹液とレモン果汁を混ぜたものです。以上、こちらでしか食べられない、ユニークなお料理の数々でした。盛り付けも素晴らしく、楽しくおいしくいただきました。
キッチンも覗かせていただきました。なるほど、焚火ですね。ちなみに店名の「ハルランナ」とは、新築を祝う儀式の際に家の屋根から食べ物をまく風習のことで、食べ物が降ってくるという意味だそうです。お寺などでよく行われる「餅まき」と似ていますね。
お食事のあとは、体験交流ホールという建物内で、上演を鑑賞しました。歌、踊り、語りで構成された、とても素晴らしいものでした。ウポポイとは、「(おおぜいで)歌うこと」という意味です。アイヌの人々のくらしの中で、歌や踊りは欠かせないものだったようですね。エリア内には、木彫や刺繍、アイヌ料理の調理(事前予約制)などの体験をできる場所もあり、タイムテーブルが表示されています。入場整理券が配布される場合もあるので、注意しましょう。
続いて伝統的コタン(集落)と呼ばれるエリアに行きました。こちらには、アイヌの昔の家「チセ」が並んでいます。
チセの内部も見学できます。
真ん中に囲炉裏があり、くらしの中心となっています。
湖の前の野外ステージで、再び、歌や踊り、語りを鑑賞しました。この方は、わたしたちの身近でも意外にアイヌ語が使われているという話をしてくれています。札幌など、北海道の多くの地名はアイヌ語から来ています。また、集英社の女性雑誌「ノンノ」の名称も、アイヌ語で「花」という意味だと教えてもらいました。
最後に工房と呼ばれる建物の中で、刺繍や木彫の実演を見せていただきました。これらの技術は今も伝承され、新しい作品が作られています。
ゆっくり見ているうちに、もう日没近くになってしまいました。まだまだ興味はつきないです。また、季節を改めて、ここに来てみたいと思いました。
最後にもう一度ご注意を。北海道では、現在、新型コロナウイルスの感染者数が増加しています。最新の情報を入手し、ご注意ください。
また、ウポポイに行かれる際は、公式サイトから、必ず事前予約をしてください。
吉田さらさ 公式サイト
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