こんにちは。寺社部長の?田さらさです。
新型コロナウイルスの感染者が日本で確認されたのは、今年の1月のことでした。そしてわたしたちは、まもなく、はじめてのコロナ禍の中での正月を迎えます。里帰りや家族との会食はどうしたらいいのかなと、いろいろな疑問や心配事が多いと思いますが、中でも特に気になるのは、「初詣はどうするのか」ということではないでしょうか。今回は、伊勢神宮を本宗として日本各地の神社を包括する団体である神社本庁に、そのテーマでお話をうかがいました。答えてくださるのは、総合研究部長の浅山雅司さんです。
まずは、初詣だけでなく、コロナ禍の時代における一般的な神社参拝に関する質問からはじめましょう。
Q1 特別な人出が予想される初詣以外でも、すでに神社様の方で新型コロナウイルス拡大防止のための取り組みをしておられると思いますが、具体的にはどんなことが上げられますか。
A 神社本庁では、境内に張り出すためのポスター作製に使えるピクトグラムを準備し、公式サイトからダウンロードできるようにしています。マスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンスを保つなど、一般的な注意事項を喚起するためのものです。もっとも、特別な日以外、神社の境内でのお参りで密になることは比較的少ないと思いますが、神社側の指示に従って、十分注意してください。
山梨県金毘羅神社・写真提供/神社本庁
Q2 お参りの際に、たとえば鈴を鳴らすための鈴緒など、多くの人が触る場所に手を触れなくてはいけない場合もありますが、どうすればいいでしょうか。
A 神社の考えにより、鈴緒などは、一時的に使用できなくしてあるケースも多いかも知れません。また、近くに消毒薬が置いてある場合もあるでしょう。お参りにおいては、「必ずこれをしなければいけない」という決まりはないので、今は触れたくないと思うものがあれば、省略しても大丈夫です。あくまでその時にできる範囲でよいでしょう。
Q3 手水は神社に入る前の大切な行為と聞きましたが、やはり、多くの人が触れる柄杓を使う必要があるので心配です。
A 手水は神様の前に立つ前に心身を清める行事ですので、とても大切です。しかし今は「特殊な時」なので、意識して家で手をきれいに洗って来るなどでもよいと思います。また、神社の方でも、柄杓は片づけ、上の写真のように、直接自分の手で水を受けられるようになっているところも多いです。昨今では、インターネットショップなどで自分専用の柄杓(マイ柄杓)を買って持ち歩く人もいるようですが、よほど頻繁にお参りに行く方以外は、家にあるカップを持ってきて水を受けるようにしてもよいのではないでしょうか。手だけでなく、口に水を含んですすぐのが作法ですが、今の時期、口に水を入れるのに抵抗がある人は、省略してもよいです。これも状況に合わせて、できる範囲で行ってください。
※ただし、カップやマイ柄杓など持参の道具を使う場合は、以下のことに注意してください。
①通常の柄杓の作法通り、道具に直接口をつけない。まず道具で水を汲んでから、それを手に受けてお清めを行う。
②もしも、一度道具に口をつけてしまったら、それで再度水を汲まないように注意する。(再使用しない)。
ここからは、新型コロナとは関係なく、一般的な初詣についてうかがいます。習慣として毎年初詣に行っていても、実は、その意味をあまり知らないという人も多いのでは、
千葉県諏訪神社・写真提供/神社本庁
Q4 そもそも、初詣にはどんな意味があるのですか。
A お正月は、年神様にご挨拶し、無事新年を迎えられたことに感謝するための日です。年神様とはご先祖様のことでもあります。近年の初詣は、友人同士で出かける人も多いでしょうが、昔のお正月を思い出してみてください。朝起きて、家族に新年の挨拶をし、お屠蘇、お雑煮、お節料理をいただき、午後になってから、家族で近くの神社にお参りに出かけるのが普通だったのではないでしょうか。また、元日の午後は親戚の人、翌日からは、お父さんの会社の人などのところに挨拶に出かけたり、逆にお客さんが来ることもあったでしょう。お客さんの中でも、もっとも大切なのが神様です。お正月は、まず、年神様、すなわちご先祖様をお迎えしてご挨拶をし、地域を守ってくれている神様に、新しい年もよろしくお願いしますとお願いするために神社に行きます。
Q5 初詣はいつごろある風習なのでしょうか。
A 「初詣」という言葉自体は、意外に新しく、明治以降にできたものです。しかし、それ以前から、各地方で独自に伝承されるものも含めて、大晦日や元旦などに神社にお参りする風習は数々存在しました。正月に先祖を祀る行事については、古くは平安時代にまで遡ることができ、現代のように新年に神社に詣でる風習は、江戸時代には、恵方参りや七福神詣も含めて、庶民の間でも盛んにおこなわれていました。
Q6 大晦日の深夜に神社に出かけ、そこで年越ししてお参りするのが正しい初詣なのでしょうか。また、遠方の著名な神社に出かける人が多いのは、それが正式だからでしょうか。
A 現在は、大晦日の深夜に出かけるのが人気のようですが、それが可能になったのは、電車の終夜運転が行われるようになって以降のことです。また、自宅から離れたところにある著名な神社に出かける習慣も、電車ができ、「行楽を兼ねて初詣に行きましょう」という宣伝が行われるようになって以降です。したがって、古くからの新年のお参りは、家の近くの神社で行うのが普通でした。と言っても、現在行われている初詣がよくないわけではありません。伝統的な文化も、時代の状況によって、さまざまに変化していくものです。
Q7 いつからいつまでに行うのが初詣ですか。
A 初詣とは、その年に始めて行うお参りのことです。したがって、元旦、三が日、松の内になどにはこだわらず、自分が行ける時に行けばよいのです。
なるほど、今まで知らなかった初詣の意味がわかってきましたね。以上を踏まえた上で、コロナ禍の時代の初詣についても、詳しくうかがってみました。
山梨県酒折宮・写真提供/神社本庁
Q8 毎年、電車に乗って遠方の神社に行っていますが、今年は密を避けて、近所の神社に行っても大丈夫でしょうか。
A もともと神社はその地を守る役割を持っているので、近所の神社にお参りに行くのはとてもよいことです。大きな神社は総合病院、小さな神社は近所の行きつけのお医者さんのようなもの。大きな神社が混雑しそうな日は、まず、あなたのことをもっともよく知ってくれている近所の神様にご挨拶し、混雑が緩和されてから、いつも行っている著名な神社に行くのもひとつの方法です。
Q9 三が日は混雑しそうなので、別の日に行ってもかまいませんか。
A 先にも述べたように、初詣は、いつ行かなければいけないという決まりはありません。ただ、神社の側の事情により、新年の縁起物の授与などが行われる日が限定される場合もあるでしょう。それぞれの神社で方針が違うと思いますので、事前に確認の上、お出かけください。また、今年の場合は、「幸先詣で」と言って、年内から縁起物の授与を行う神社もあるようです。
山梨県酒折宮・写真提供/神社本庁
Q10 密を避けていつもと違う神社にお参りする場合、前年に別の神社で受けたお札や縁起物は、どこにお返しすればいいのでしょうか。
A 授与品は、基本的には、日本全国、どこの神社にお返ししてもよいことになっています。しかし、地域によっては、大量のお焚き上げがしにくいなどの理由で、他の神社の授与品は遠慮してほしいというところもあるでしょう。その場合は、自宅のしかるべき場所にお祀りし続け、行ける時に、受けた神社に持って行ってお返ししてください。そうすれば、願いごとを積み重ねるというよい意味も生まれてきます。
Q11 御祈祷をお願いする場合は、多人数で行かない方がよいですか。
A 新年には、会社などの団体で御祈祷を受ける場合もありますが、そうした御祈祷は建物内で行われるため、より密になりやすいです。事前に連絡し、混雑しそうな日を避ける、代表者だけで行くなど、いつもと違う注意が必要でしょう。
千葉県諏訪神社・写真提供/神社本庁
Q12 参道の屋台などは利用しない方がいいでしょうか。
A 今度の年末年始にどれほど屋台が立つのかはわかりませんが、神社ごとの考え方にもよりますね。利用する場合は、できるだけ家に持ち帰って食べるなどの注意が必要だと思います。
Q13 コロナ禍の中、たとえばお墓参りなどをオンラインで行うサービスもあるようですが、初詣にもそのような方法があるのでしょうか。
A 今のところ、「オンラインで初詣」を唄っている神社があるかどうかは不明ですが、お参りはやはり、その場に行って行うのが基本だと思います。境内の様子をリアルタイムで見られるサービスをしているところはあるようですが、それなら、現状、混んでいるかどうかを調べる役に立つでしょう。
Q14 こんな時代の初詣では、神様にどんなことをお願いすればいいでしょうか。
A いつもの年と同じでよいと思います。まずは神様にご挨拶と、今年も新年を迎えることができたことへの感謝を述べ、世の中がよくなりますようにとお願いします。続いて、家内安全、縁結び、金運上昇、病気平癒など、個人的なお願いをすればよいです。現在、世の中がよくなるということは、コロナが収束するということでもありますし、そうなれば、個人的な願いごとも叶いやすくなるのではないでしょうか。
Q15 コロナの影響を受けている家族が多く、お願いごとが多岐に渡ります。お賽銭はどれくらいすればよいのでしょうか。
A お賽銭の額には決まりはありませんので、自分が出せる範囲で、お願いごとの数にふさわしいと思えるだけの額でよいと思います。よく、始終ご縁があるから45円がよいとか、これ以上硬貨(効果)がないから500円玉はダメなどと言いますが、それは単なる語呂合わせで、意味はありません。また、仮に、五千円や一万円などまとまった金額を奉納したい場合は、昇殿して正式参拝をさせていただけることもあります。より神様に近いところでお参りでき、忘れがたい経験になると思います。
コロナ禍の時代の初詣に限らず、神社や神様とどのようにおつきあいして行ったらいいかという指針も含んだ、とても深いお話が聞けました。神社は、もともと、災害や疫病から地域を守り、人々が平和に暮らせるようにという願いを込めて建てられたものです。こんな時代だからこそ、感染対策を行った上でお参りに行き、日本の再生を祈りたいものですね。
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