こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回は、お寺の境内にできた新しいお店で、おいしいお寿司をいただくお話です。
お寺とお寿司、イメージ的にはちょっと結びつかないかも知れませんが、お寺が経営しているということではなく、境内の土地にある建物内にあるお寿司屋さんという意味です。
でも、そのような立地だけに、他にはない隠れ家感と独特の風情があって、なかなかよいです。
場所は赤坂、一ツ木通り。数々のお店が建ち並ぶ賑やかな通りです。
そんなところにお寺なんかあったかしらと思う方もいるでしょうが、実は赤坂は、徳川家康によって多くの大名屋敷や武家屋敷が建てられたことから発展した歴史の古い街で、有名な氷川神社、豊川稲荷東京別院だけでなく、大小のお寺や神社も数多く点在しています。
今回ご紹介する江戸前鮨『すし いわお』は、その中のひとつ、浄土寺というお寺の境内にあります。
寺名が書かれた赤い提灯が目印です。ここから参道が続いています。
少し参道を歩くと、本堂の手前に路地があり、その奥に『すし いわお』がありますが、まずは本堂にお参りさせていただきましょう。
このお寺は、創建時は別の場所でしたが、1665年にここに移転しました。浄土宗のお寺でご本尊は阿弥陀如来様。そちらは本堂の中に祀られており、直接拝ませていただくことはできません。
しかし、お堂の外にも素晴らしい仏像があります。
ひとつは銅造地蔵菩薩坐像。1719年に建立されたもので、港区の有形民俗文化財に指定されています。地蔵菩薩は、生前に罪を犯したため極楽に行けず、六道を輪廻して地獄に落とされる人を救う役割を持つとされます。
そして、その罪ある人を裁いて地獄に落とす役割を持つのが閻魔大王です。
お地蔵さんは慈悲深い人で閻魔様はこわい人というイメージがありますが、実はこの二つは同じ仏様の二つの面を表したものとされ、地蔵菩薩像の近くには閻魔様の像があることが多いです。
このお寺にも、ちゃんと石でできた閻魔様の像があります。閻魔様も本当は心優しくて、誰も地獄に落としたくないのに、なぜ人は罪を犯すのだと悲しんでいらっしゃるとも言われます。
この閻魔様の表情も、ユーモラスながら、どこか悲しげですよね。
さて、ようやく本題のお寿司です。
この日はオープン前の試食会にお呼ばれしたため、ランチで出されるちらし寿司と夜の握りコースの両方をお試し。どちらも、このお店ならではのお味とビジュアルで、独創的なお寿司の世界を堪能させていただきました。
まずは店主さんのご紹介から。
岡部巖(おかべたかし)さんは、「ヒルトン東京」や「」フォーシーズンズホテル香港」の日本料理店で料理長を務めた後、ミシュラン一つ星の「銀座いわ」の料理長を経て独立。
このお店の名前、『すし いわお』は、お名前の「巖」という字から来ています。でも、お名前は、「いわお」ではなく「たかし」と読みます。「この字をたかしと読むのは、日本中でも自分ひとりかも」と岡部さんはおっしゃいます。
お席はカウンターに8席だけで、岡部さんの楽しく奥深いお話を聞きながら作業を見学し、一品、一品、じっくり味わうことができます。他の店ではやらないことをしたいという岡部さん。
同じネタを使っても、手の入れ方や盛り方などがまったく違います。
まずは、ランチで提供される華麗なちらし寿司です。
でも、16品ものネタは散らさず、きっちり整列しています。一見押し寿司のようにも見えますが、ごはんは押さず、ネタもふんわり乗せてあるだけ。それにしても量が多く、これでひとり分? と驚きます。
こちらは1日16食限定で、これにお椀や茶わん蒸しがついて6000円(税込み)。この日は試食会なので、参加者数人で少しずつ分けていただきました。
その後いよいよ、夜の握りコースに。
本来は、握りに入る前につまみのお刺身が6~7品出るのですが、この日はちらし寿司も試食していたので、すぐに握りになりました。ネタだけでなく、シャリにも特徴があります。マグロやイワシなど脂の多いネタは赤酢を合わせた「赤シャリ」、白身など淡白な魚の場合は優しい味わいの「ロゼシャリ」と使い分けているのです。
全部で十数品いただき、どれもこれも美味しかったのですが、中でも特に印象に残ったものをご紹介しましょう。
最初はこはだ。岡部さんは、特にひかりものが得意とのことです。
くさみを完全に取る秘密の技があるのですって。
あぶったノドグロの上にキャビア。ノドグロの分厚さとキャビアの量に驚きます。
キャビアはN25というドイツのブランド。塩味が少なく、クリーミーな味わいです。
とろたくのおはぎ。軽く握ったシャリの上に、おはぎのあんこのようにとろたくがのっています。柔らかいとろとカリカリしたたくわんのハーモニー。
サバの棒鮨。京都のサバ鮨と違ってシャリは柔らかめ。
たくわんとアサツキも入ったオリジナリティあふれる一品。
車エビ。エビの持つうまみや甘みが凝縮されています。
車エビは、うまみが逃げないように、一番よい温度でゆっくりと茹でられています。
アワビの胆を練ったソースに浮かぶアワビ。ソースがたっぷり過ぎて余るかと思いきや…
続いて、同じソースでウニの握りをいただいて完食。
デザートは鮮やかなオレンジ色のプリン。
でも、マンゴなどのフルーツではなく、色の濃い卵の黄身で作られています。
「寿司屋では必ず卵焼きが出るものですが、自分は他の店とは違うことがしたいので、最後に卵をデザートにしたのです」と、岡部さん。こくがあって本当に美味しいプリンでした。
どのネタも、ちょっと他では見たことのない技を使い、独創性のあるお寿司を食べさせてくれる素敵なお店です。夜の握りコースは、これにお味噌汁がついて22000円(税込み)。
これだけの内容とクオリティなら、このお値段も納得。
特別な日に、ぜひお出かけください。
すし いわお
東京都港区赤坂4ー3ー5
03-5544-9862
営業時間 昼第一部11:30~ 第二部13:00~
夜第一部18:00〜 第二部20:30〜
定休日 土日祝(月曜日はディナー営業のみ)
𠮷田さらさ 公式サイト
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