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見ごたえたっぷり 特別展「琉球」

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。

 

今回は、東京国立博物館で開催中(~2022年6月26日〈日〉)の「沖縄復帰50年記念 特別展『琉球』」のご案内です。

 

この南の島々が日本に復帰して今年で50年。

わたしも何度か旅をしたことがあり、風景の美しさはもちろんのこと、歴史、文化、工芸、食べ物など、多彩な魅力のとりこになりました。

この展覧会を見れば、そんな沖縄が持つさまざまな面をより深く知ることができます。

 

 

第1章「万国津梁 アジアの架け橋」では、まず、琉球王国とはどのようなものだったかについて学びます。

 

そもそも琉球王国とは、現在の沖縄県から鹿児島県の奄美諸島にかけて存在した王国。12世紀以降、一体的な文化圏を形成し、15世紀に沖縄本島を中心として政治的に統合され、琉球王国が誕生しました。この時代は海上貿易が盛んで、琉球王国は中国、日本、朝鮮半島、東南アジアなどの各地を結ぶ物流の中継地点として栄えました。

日本は当時、室町時代。琉球王国を経由してもたらされる珍しい文物は、人々を大いに驚かせたそうです。

東インド諸島とその周辺の地図(『世界の舞台』)一冊のうち

アブラハム・オルテリウス編 1579年刊 九州国立博物館蔵

展示期間:5 月3日(火・祝)~5月29日(日)

 

16世紀にアントワープ出身の地図作者によって編集された東アジアの地図。

右側のページの左上の丸い形の島が日本、そこから左下に連なる小さな島々が琉球です。

 

 

銅鍾 旧首里城正殿鍾(万国津梁の鐘)重要文化財

藤原国善作 1458年 沖縄県立博物館・美術館蔵

 

三山統一を成し遂げた第一尚氏の六代尚泰久王は仏教に深く帰依しました。そのためこの時代には京都から禅宗の僧侶が招かれ、首里や那覇に多くの禅宗の寺を建立しました。そして、王府の主導により鋳造された梵鐘が各寺院に納められたのです。

この鐘は寺院ではなく旧首里城の正殿に掲げられていたもので、琉球が世界の架け橋(万国津梁)にならんという気概を示す銘文が彫られています。

 

 

 

第2章は「王権の誇り 外交と文化」と題して、琉球王国の華麗なる文化財を展示しています。17世紀の琉球王国は島津藩の侵攻や中国の政治体制の変化などに大きな影響を受けますが、あらたな体制と国際関係を築き、独自の文化を開花させました。

〈写真中央〉玉冠(付簪)[琉球国王尚家関係資料]一具 国宝 

18~19世紀 沖縄・那覇市歴史博物館

展示期間:5月3日(火・祝)~5月15日(日)

 

現存する唯一の琉球国王の冠。金筋に色とりどりの玉を取り付けた豪華なもので、金の簪を挿しています。

戦前に東京に移されていたため、戦禍を免れたという貴重な品。

 

 

赤地龍瑞雲嶮山文様繻珍唐衣裳[琉球国王尚家関係資料]一領 国宝

18~19世紀 沖縄・那覇市歴史博物館

展示期間:5月3日(火・祝)~5月15日(日)

 

琉球国王の正装用の衣装で、国の公式行事などの際に着用されました。

龍、瑞雲、青海波などの伝統文様がびっしりと刺繍されています。

 

 

黒漆雲龍螺鈿大盆 一枚 沖縄県指定文化財

18~19世紀 沖縄・浦添市美術館

 

黒漆の地にヤコウガイの螺鈿。見る角度によって微妙に色が違って見える素晴らしい芸術品です。

この時代、琉球王国は、こうした品を中国に献上していました。

 

 

緋色地波濤桜樹文様紅型木綿衣裳 一領

19世紀 神奈川・女子美術大学美術館

展示期間:5 月3日(火・祝)~5月29日(日)

 

沖縄の染と言えば紅型。

今回の特別展では、このように魅力的なデザインの着物も数々展示されています。

 

 

御玉貫 一口

17~18世紀 沖縄県立博物館・美術館

 

錫でできた瓶子に、色とりどりのガラス玉を麻糸で綴った覆いを被せた酒器。

つまり、ビーズ細工のカバーをかけた徳利です。琉球独特の美しい工芸品。

 

 

 

第3章は「琉球列島の先史文化」。南島とも 呼ばれた琉球列島では、日本や中国、朝鮮半島、台湾、東南アジアともかかわりの深い文化が展開しました。

縄文時代から先史時代の土器たち。沖縄各地から出土したもの。

わたしたちが知っている一般的な縄文式土器とは違う、すっきりとしたシンプルなフォルムです。

 

 

 

第4章は「しまの人びとと祈り」。琉球には、王族の華やかな文化だけでなく、島に暮らす人々の間で生まれた独特の文化もありました。それらは今も伝承され、沖縄の魅力のひとつとなっています。

ノロの図 一幅

19世紀 東京国立博物館

展示期間:5月3日(火・祝)~5月29日(日)※東京会場のみ

 

ノロとは村落の祭祀を司る女性のこと。

女性が祭祀の中心となるのは琉球の宗教の特徴のひとつです。

 

 

神扇 一握

19世紀 東京国立博物館

展示期間:5月3日(火・祝)~5月29日(日)※東京会場のみ

 

祭祀を執り行うノロが使う大型の扇。

中央に日輪、左右に鳳凰や瑞雲など、伝統的な王家の衣裳の柄にも似ています。

 

 

 

第5章は「未来へ」。これまで幾多の困難を乗り越えて文化を伝承してきた沖縄。その象徴的存在であった首里城は、1992年に再建され、復元作業が続けられてきました。

 

しかし、2019年、火災によって正殿をはじめとする主要な建物が消失しました。その様子はテレビでも大きく報道され、沖縄だけでなく、日本全国の人々に衝撃を与えました。しかし、その後すぐ再建作業がスタートし、2026年には正殿がよみがえる予定とのことです。

 

大龍柱(旧首里城正殿前)一柱

1711年 沖縄県立博物館・美術館

 

戦前、首里城の正殿の前に設置されていた龍の形をした柱。本来は下部にとぐろを巻いた部分もあったと推定されていますが、沖縄戦で胴体の中ほどから下が欠損しました。

そのような状況で、この頭の部分が残ったことが奇跡のように思われます。

 

 

音声ガイドのナレーターは、沖縄出身で、現在NHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」でお母さん役をなさっている女優の仲間由紀恵さん。

穏やかな聞きやすいお声で、沖縄の歴史と文化について説明してくれます。

 

 

今回の特設ショップは沖縄の特産品が多く、旅行に行った気分であれもこれもと手が伸びます。こちらはユーモラスなシーサーの置物。

沖縄そば、ソーキそばなど、食品もあります。

 

 

沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」

東京国立博物館

2022年5月3日〈火・祝〉~6月26日〈日〉

九州国立博物館

2022年7月16日〈土〉~9月4日〈日〉

 

詳細は、展覧会公式サイトをごらんください。

 

 

𠮷田さらさ 公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

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