こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回は、わたしの大好きな奈良にあるとっておきのレストランと宿泊施設をご紹介しましょう。
ひとくちに奈良と言ってもさまざまなエリアがあり、それぞれに奥深い歴史を持っていますが、中でも飛鳥と呼ばれる地域は、古墳や謎の石造物、日本最古級の寺院など、興味深い史跡が数々ある、とりわけ魅力的な場所です。
今回ご案内する「奥明日香さらら」は、そんな飛鳥のさらに奥にある日本の原風景のような農村にあります。正確に言えば「奥明日香」という地名は存在せず、明日香村の奥、南東方向にある稲渕(いなぶち)栢森(かやのもり)入谷(にゅうだに)の3つの集落をさします。
「奥明日香さらら」は、栢森という集落の中にあります。
明日香の有名な史跡「石舞台古墳」を通り過ぎると、稲渕というところに着きます。
ここは棚田の風景が美しいところです。
そこからさらに道なりに車を走らせます。
どんどん山道に分け入って行き、本当にこの先に民宿などあるのかなと心配になって来たころ、道端に「奥明日香さらら→この先○㎞」という立て札がいくつかあり、それに導かれてさらに進むと、ようやく栢森の集落に着きます。
「奥明日香さらら」は、堂々たる佇まいの古民家です。築およそ60年。
左側に立っておられるのが女主人、坂本博子さんです。
実はわたしは、坂本さんと10年以上前に一度お会いしたことがあります。
取材で立ち寄ってお茶とケーキをごちそうになりました。最近になって、またSNSでやり取りをするようになり、今回の再訪となりました。
お話と笑いが尽きないとても楽しい女性で、今回も、会った瞬間に、まるで長年の友達みたいになりました。
まずは、レストランとして使われている建物内で、10年前と同じようにケーキをいただきました。これは、お手伝いをなさっている娘さんの手作りです。
母屋の中はこんな感じ。こちらは坂本さんのご自宅ではありません。
この建物はもともと空き家で、坂本さんが買い取って改装しました。一緒に蒟蒻づくりや村おこしのイベントなどの活動をしてきた近所の方々の助けも借り、2008年にレストランとしてオープン。お金も借りました。今でこそ古民家レストランはブームになりましたが、当時はまだ珍しく、「ずいぶん無茶なことをする女性がいると注目され、記事にしてくれる方もいたし、テレビで取材されたりもして、何とか今まで続き、とりあえず借金だけは返せました」と、坂本さん。
「ここに来てくれるのは面白い方ばかり。そうしたみなさんとの会話を、自分が一番楽しんでいるかも知れません」とも。
お客さんたちの方も、人間が大好きでコミュニュケ―ションの達人でもある坂本さんの魅力にひかれて、はるばる奥明日香までやって来るのでしょう。
奥明日香が気に入って映画を撮られた河瀬直美さんのサインを発見。
ついこの前は、NHKBSの長寿番組、「日本縦断こころ旅」の撮影で、火野正平さんもここに立ち寄られ、ランチを召し上がりました。
その番組はわたしも見ましたが、正平さんと坂本さんの会話が面白くて爆笑でした。
今ではめったに見なくなったブラウン管テレビと黒電話。
これは、もともとこの家に置いてあったもので、オープン当初はこの電話で予約も受けていたとのこと。
このラジオもすごい年代物!
これは、ご主人がゴミ捨て場に持って行こうとしたのを坂本さんが止め、ディスプレーとして使われています。
夕食はこちらの建物内でいただきます。
ずらりと道具が揃った台所で、坂本さんが手早く料理してくださいます。
これは、「そのへんで取って来た」というユキノシタの葉っぱ。
美味しい天ぷらになります。
本日のさらら膳。黒米ごはん。神奈備豆腐(下出さんという方が作った豆乳を吉野葛で固めたもの)、割り干し大根とあげのたいたん、先ほどの葉っぱの天ぷらなど、いかにも農家らしいお食事。
「レストランを始める前から家で作っていたような料理ばかりです。ランチで来てくださる方にも、これと同じようなものをお出ししています」と坂本さん。
メニューを詳しく書いたマスク入れが添えられています。
坂本さんのご自宅は、「農家民宿sarara」という宿泊施設にもなっています。
民宿としてオープンしたのは2020年3月。なんと、コロナ禍が始まったころです。もちろんそれ以前から計画を進めていて、レストランの常連客の方に泊まってもらおうと思っていたところ、意外にも、インターネットで探してこれまでとは違うお客さんが来てくれるようになったのだそうです。
「普段は出会えないような面白い生き方をしている人が多くて、これもまた楽しいです」と坂本さん。何でも前向きに捉えて先に進もうという考え方が素晴らしいです。
朝食も手作り感満載でした。
スープは、ご主人が畑で育てた「アイコ」というトマトで作ったもの。パンは坂本さんが焼いたもので、玄関先に植えてあるローズマリーで香り付けしてあります。
畑で採ってきたスナップエンドウ、自家製大豆を使った煮物、キャラブキ、梅干しなど、思わず「ごはんもください」と言いたくなる、味わい深いおかずの数々。
お漬物や手作りクッキーなどを購入することもできます。
どれも、こちらだけの特別な味がしました。
あいにくの小雨模様ではありましたが、坂本さんの案内で、奥明日香の他の場所を探訪しました。さららのすぐ近くには、こんな清流が流れています。
さらに山に分け入ると、「古道 芋峠」という立て札がありました。芋峠を超えると、その先は吉野です。
今から1300年以上昔、天武天皇・持統天皇が、奥明日香から芋峠を通って吉野宮滝へ30回あまり通われたと伝わっています。持統天皇と言えば、里中満智子先生の名作「天上の虹」の主人公でもある人気の女帝です。本名は鵜野讃良皇女。漫画の中では讃良(さらら)と呼ばれています。
なるほど、それが、「奥明日香さらら」というネーミングの由来なんですね。
「奥明日香さらら」の看板の左手は、坂本さんのお宅の畑です。
今はちょうど端境期であまり作物が植わっていませんが、ここでご主人が端正込めて作られた野菜が食卓に並ぶわけですね。次に行った時は、農作業のお手伝いもさせていただきたいなと思いました。
お食事だけでなく、坂本さんとのおしゃべりが何より楽しく、常連になりたい「奥明日香さらら」。宿泊もよいけれど、まずはランチで行ってみようという方も、必ず予約を。
お茶とケーキだけなら、予約なしで気軽に立ち寄ることも可能ですが、営業日は事前チェックしてお出かけください。
営業日、料金などの詳細は、こちらのサイトをごらんください。
𠮷田さらさ 公式サイト
http://home.c01.itscom.net/
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