こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。
今回は、滋賀県甲賀市信楽町にある世にも美しい美術館を紹介します。
ミホ ミュージアムといい、人里離れた山の上に忽然と開ける桃源郷のようなところです。開館は1997年。わたしは取材やプライベートで何度もうかがっているのですが、かなり山奥でアクセスがやや難しい点もあり、まだ行ったことがない人が多いようですね。
むろん、車で行くのがベストですが、開館期間中は、JR琵琶湖線の石山という駅からバスも出ています。石山までは京都駅から15分、そこからバスで50分です。京都に行った際に足を伸ばしてみるのはいかがでしょうか。石山駅の近くには石山寺、瀬田の唐橋などの見どころもあるので、このあたりをゆっくり旅するのもお勧めです。
さて、現在この美術館では、夏季特別展「懐石の器 風炉の季節」(2022年7月9日<土>~8月14日<日>)、夏季・秋季特別陳列「中華世界の誕生─新石器時代から漢─」(前記の夏季特別展の期間及び、9月3日<土>~12月11日<日>も継続して開催)が行われています。
こちらの美術館の数々の所蔵品の中から、テーマに合わせた選りすぐりの名品が展示され、見どころ満載です。
車で来てもバスで来ても、まずは、レセプション棟に到着します。
ここにはチケット売り場(現在はインターネットによる事前予約制)、レストランなどがあります。そこで電気自動車に乗り換え、美術館棟に向かいます。歩いて行くこともできます。
ここからの風景が、この美術館の最初の見どころです。
まずは、枝垂れ桜の並木があるプロムナードです。
今はグリーンの季節ですが、桜の開花シーズンは、さらに夢のような眺めになります。見ごろは、その年の気候によっても違いますが、例年4月中旬ごろです。枝垂れ桜の木は100本あり、風雨の影響がなければ、比較的長期間楽しめるとのことです。
その先はトンネルです。桜の季節には、外の色がトンネル内に映り込み、このような絶景も楽しめます。
トンネルを抜けると吊り橋があり、その先に美術館棟があります。自然と人工的建造物が織り成す奇跡的な絶景に思わず息を飲みます。
こちらはフランス語版ミシュランガイドで「必ず訪れるべき場所」として3ツ星を獲得。2017年にはルイ・ヴィトンのショーも行われました。
この建物を設計したのは中国系アメリカ人建築家、I.M.ペイ氏。ルーヴル美術館のガラスのピラミッドなど数々の世界的ランドマークを設計したことで知られる方です。
この建造物の美しさも、こちらの魅力のひとつです。エントランスの部分は、日本の古い古民家をモティーフにしたように見えます。
館内から眺める山の風景も素晴らしいです。
この美術館棟は、周囲の自然との調和を図るために、建築容積の80%以上を地中に埋設し、建物の上にも自然を再現しています。
まずは、夏季特別展「懐石の器 風炉の季節」から見て行きます。
この美術館の所蔵品はエジプト、ギリシア、ローマ、アジアなどの古代美術、仏教美術、及び日本の古美術を合わせて3000件。その膨大なコレクションの原点となったのは、茶道具と懐石の器です。とりわけわたしはこちらの尾形乾山のコレクションが好きで、展示されるたびに足を運んでおります。
今回の特別展の特徴は、器だけでなく、実際にその器に料理を盛った様子の写真も同時に展示されていることです。
懐石とは正式な茶会で供される料理のことで、どんな器でどのような料理を出すかが亭主の腕の見せ所。単に料理が美味しければよいというわけではなく、季節感や美的感覚が問われる懐石のしつらえは、日本文化の神髄とも言えるでしょう。
こちらが、わたしが特にお気に入りの尾形乾山の向付。
紅葉の名所、竜田川の流れともみじという古典的なモティーフですが、デザイン感覚はとても斬新です。よく見ると、1枚1枚図柄が違います。ひとつ選ぶならどれがいいかなと思いながら眺めるのが楽しいです。
銹絵染とは、鉄釉という釉薬で描いた絵のこと。藤の花は白地に染付で縁取りされています。何度もの工程が必要な凝った絵柄です。
これらの器は上の写真のような形で使われます。
器だけで見ても美しいですが、料理を盛ると、さらに美しさが引き立ちますね。
こちらもこの美術館が誇る名品のひとつ。江戸時代に、こんなモダンなデザインを思いついた野々村仁清の感覚に驚きを覚えます。このような薄い地にたくさんの穴が開いていても崩れないのは、ろくろの技術が確かだからでしょう。
こちらも名品のほまれ高い織部の手鉢。内側に描かれたお花や市松模様がどことなく西洋的なのは、古田織部がキリスト教文化の影響を受けているからでしょうか。
井戸茶碗は、朝鮮王朝時代に庶民の雑器として作られ、日本に伝来して茶人に高く評価されました。戦国武将は優れた茶器を持つことがたしなみのひとつとされたため、彼らが所有した井戸茶碗が名品として現存しています。
こちらは小西家に伝来したもので、胴部の横一文字が特徴です。益田鈍翁が「小一文字」という銘をつけましたが、次の所有者は「小」では物足りないと思ったのか、「大一文字」という追銘をつけたのだそうです。さて、どちらの銘がこの器にふさわしいでしょうか。
ミュージアムショップでは、展示されている名品の写しが売られています。
本物は無理でも、これならちょっと頑張れば手に入るかな。でも、よく見れば、こちらもいいお値段。
引き続き、夏季・秋季特別陳列「中華世界の誕生─新石器時代から漢─」を見せていただきます。
こちらの美術館は中国美術のコレクションも充実しており、今回は、新石器時代の彩陶、殷や周時代の青銅器、国家の体裁を整えて行った漢の時代の俑など、比較的古い時代のものが展示されます。中国という国ができるまでの初期の段階なので、わたしたちがイメージする中国の美術品とは少し違う斬新なデザインのものも見られました。
新石器時代の壺。宇宙人のような人物(?)の柄が面白い。
のちの中国美術とはずいぶん違う素朴でおおらかなデザイン感覚ですね。
かなり写実的な犬の形をした俑。今にも「ワン」と吠えそうな表情です。
俑とは、中国の墳墓に埋める副葬品のことで、人型だけでなく、このような動物型もあったようです。
特別展や特別陳列以外にも、常設展で、古代エジプトやギリシアなどの名品も見られます。
こちらの収蔵品は、独特な美的センスで厳選されたものが多く、他の博物館などでは見たことがないタイプのものもあります。館内にはレストランやカフェも併設されているので、風景を愛でながら、ゆっくり過ごしてみてください。
※春季・夏季・秋季、各開館期間以外はクローズされています。期間中にも休館日がありますのでご注意ください。現在は、インターネットによる事前予約制となっています。
MIHO MUSEUM 公式サイトにて事前に詳細をご確認の上、お出かけください。
𠮷田さらさ 公式サイト
http://home.c01.itscom.net/
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