こんにちは、寺社部長で旅好きの吉田さらさです。
コロナ禍がようやく落ち着きを見せ、旅行に出かける人も増えてきた2023年のゴールデンウィーク。わたしも2019年のクィーン・エリザベス以来の客船の旅に出かけました。
イタリアのMSCクルーズという会社が保有するベリッシマという船です。
この船は2019年就航。翌年に日本発着ツアーが開催される予定でしたが、コロナ禍で中止になりました。2022年に再度ツアーが企画されましたが、外国船の日本国内での航海が認可されず再び中止に。
ということで、今回の日本発着ツアーは3度目の正直です。
無事ツアーが行われることになって本当によかった。
4月29日横浜港を出港し、鹿児島、那覇、石垣島、台湾を巡って5月7日に横浜港に帰ってくるコースです。今回は2回にわたり、その旅の様子をレポートします。1回目のこの記事では、これから船旅デビューを考えている人に向けての基礎知識を交えつつ、船上の様子などの概要をお伝えしますね。
まずは、費用について。船旅は高級でお金持ちの人が行くものというイメージをお持ちの方もいると思いますが、それはある面では事実です。
しかし一方では、思いのほか手頃な値段で乗れる場合もあるのです。コロナ禍後の今、海外旅行は円安と原油高騰の影響でずいぶん値段が跳ね上がっていますが、船旅はあまり値段が上がっておらず、日本発着であっても近場の海外まで足を延ばせるコースがあるという利点もあり、今もっともおすすめです。
客船の料金は船のランクと部屋のカテゴリーで大きく違い、高い船の高い部屋にはなかなか手が届きませんが、お安く乗る方法はたくさんあります。
ちなみに、今回わたしが乗ったMSCベリッシマは一番お安い2名1室の内側のお部屋で168000円。これは3食付き8泊9日、多くのアクティビティ込みのお値段、これに港湾税と船内チップ5万円ほどが加算されます。1部屋2人が基本ですが、狭くてもよいなら多くの部屋で3人~5人同室が可能。3人目以降の料金はかなりお安くなるので、1人当たりの値段がぐっと下がります。しかも3人目以降が18歳未満のお子様の場合は無料。というわけで、やり方次第では、かなりな庶民値段で船旅ができるのです。
ベリッシマ船内のショップが並ぶストリート。
天井の画像はさまざまに変化し、この日は日伊友好と歓迎の意味で、日本とイタリアの国旗の画像に。
わたしが今回泊まったのは海側バルコニー付き(228000円~)というカテゴリーです。前述の「内側」というのは、船の中央部に当たる部分で窓がないのが特徴です。これより1ランク上は海側になり、開けられない窓がついています。バルコニー付きはその上のランクで、窓を開けて外に出ることができるので、わたしはたいていの場合、このカテゴリーの部屋を選ぶことにしています。これがだいたい真ん中あたりで、ここから上は少しずつ広いお部屋となり、かつ、食事時間が自由などの条件がつきます。
そして、最高級スィート。これは船によって違いますが、MSCの場合は「ヨットクラブ」と呼ばれ、すべてが特別待遇。なんでもやってくれる専用バトラー付き、食事も専用レストラン。船の最上部に一般カテゴリーの乗客は入れないエリアがあり、そちらで優雅に過ごします。最高値段は995000円。しかしこちらも、人数が多ければかなりお安くなる部屋もあるので、一考の価値があるかも知れませんね。
このお値段とカテゴリー分けは今回わたしが乗ったベリッシマのもので、他の船だとまたいろいろ違ってくるようです。世界中をさまざまな客船が航行していますが、この記事では、その中から日本発着の5隻の船について少し比較してみようと思います。
これは2023年5月7日朝、ベリッシマの船上から、その5隻のうち3隻の船が横浜港に帰港したところを写したものです。手前の赤い手すりはわたしが乗っているベリッシマのもの。横浜ベイブリッジの下の黒い船体は「にっぽん丸」。
橋の向こうに見える2隻は手前が「ダイヤモンド・プリンセス」、その隣が「飛鳥Ⅱ」です。この2隻は大桟橋に着岸しています。これは客船好きにとっては、なかなかレアな写真と言えます。
にっぽん丸、飛鳥Ⅱは日本船籍の船。ダイヤモンド・プリンセス、ベリッシマは外国船籍、ここには写っていない「クィーン・エリザベス」も外国船籍です。現在、日本発着コースを定期的に運航し、日本人がよく乗っているのはこの5隻。日本船籍の2隻とダイヤモンド・プリンセスはベイブリッジをくぐれるサイズなので、橋の向こうの大桟橋や新港ふ頭に停泊できますが、クィーン・エリザベスやベリッシマは大きいのでベイブリッジをくぐれず、手前の大黒ふ頭というところに停泊します。
日本船籍と外国船籍の船の違いはサイズだけではありません。日本発着の場合、日本船は日本の港にだけ寄港すればよいのですが、外国船はいったん海外の港に出なければならないのです。わたしの乗ったベリッシマも、それもあって台湾の基隆という港がコースに組み込まれています。
コロナ禍以前、ロシアが戦争状態になる以前は、北海道からサハリンに寄港するなどのコースもあったのですが、現在は、この基隆コースか韓国の釜山もしくは済州島に寄るコースがほとんどになっています。
お値段に関しては、一般に小型の船の方が高いです。この中では一番高価なのが飛鳥Ⅱで、先に書いたベリッシマの料金のおおむね2倍以上。にっぽん丸は飛鳥Ⅱよりさらに小型ですが、ベリッシマの1・5倍くらいします。小型の船は乗客数が少なく、1人当たりの利益率が高くないと採算が合わないためですが、その分サービスが行き届くのが大きな利点です。あと、日本人だからそのように思うのかもしれませんが、食事は日本船の方がおいしいです。これはまあ、一般の海外旅行に行っても感じることですが、海外の船はどうしても味が大雑把になりがちですからね。
外国船について。まずはダイヤモンド・プリンセスから。コロナ禍の初期のころに感染が広まったことで有名になってしまった船ですが、これはアメリカのプリンセスクルーズという会社の船で、日本発着コースを長く運航しており、根強い人気があります。
わたしはまだダイヤモンド・プリンセス自体は乗ったことがないのですが、海外発着のプリンセスクルーズの船には乗ったことがあります。食事もまあまあおいしく、船内イベントも充実していて楽しかったです。ダイヤモンド・プリンセスも、いろいろな面で評価が高くリピーターが多いようですね。お値段はベリッシマとほぼ同じか少し安いくらい。しかし、この船は直前割、リピーター割など各種割引が多いことでも知られるので、よくよくチェックしてから申し込むとよいかも。
次にクィーン・エリザベス。日本人にとってはもっとも有名な憧れの船です。2017年以来日本発着ツアーを行い、コロナ禍で中断したものの今年から再開。わたしも2019年に乗船し、こちらに記事を書いたので、併せてごらんください。
豪華客船で優雅に日本一周の旅 その1、クィーンエリザベスってどんな船? | OurAge – 集英社の雑誌MyAgeのオンラインメディア | 3
さすが歴史と伝統ある船なので、船内施設もゴージャス、毎日アフタヌーンティのサービスや社交ダンスのレッスンがあったりと、日本発着でありながら英国の雰囲気を味わえます。
しかし料金は案外リーズナブルで、ベリッシマよりやや高いが日本船よりはお安いです。日本発着のこれらの船は航路も似ているので、パンフレットを取り寄せ、予算と相談の上、お選びください。
さて、最後にわたしが今回乗ったMSCベリッシマの船内の様子などをお見せしましょう。
前にも述べたように、サイズが大き過ぎてベイブリッジをくぐれず、大桟橋に着岸できないので、少し離れたところにある大黒ふ頭から乗ります。そこまでは、山下公園から専用連絡バスに乗っていきます。事前に乗船券と乗船時間など詳細が書かれた書類が郵送されてきますので、よくよくチェックしてください。乗船時間より早く行き過ぎると待たされることになりますから。
こちらの建物内で乗船手続きをします。
この時点ではまだコロナが5類に移行していなかったので、ワクチン証明書や陰性証明書などを提出しましたが、もうそれは必要なくなりました。ここでもっとも重要なのはパスポートを預けることです。この先はもう外国なのでパスポートを忘れると船には乗れません。
ここで顔写真も撮り、カード式のルームキーも渡されます。顔写真はコンピューターに登録され、寄港地で乗下船する際にカードキーをスキャンすると表示されます。別人が乗ってしまうのを防ぐためです。カードキーは船内で使うIDカードでもあり、支払いをするときもこれを使いますので、首にかけるなどして、常に携帯せねばなりません。
これで乗船手続きが完了。荷物は事前に指定の配送業者に家まで引き取りに来てもらうと、そのまま船室の前に運んでもらえるシステムになっています。
MSCベリッシマは17万トンという世界的にも最大級の客船で、日本にやってきた客船の中でももちろん最大。よほど遠くからでないと船全体の写真は撮れません。全長は315mと、ちょうど東京タワーを横にしたほどのサイズです。
19回階建てで客室数2217、乗客定員は5686人。船というよりも巨大マンションが何棟も並んでいるように見えます。
まずはお部屋のチェック。
わたしは今回、バルコニーつきのツインルームを選びました。新しい船なので、設備が最新式で、隅々まできれい!シャワールームも使いやすそうで水勢も十分(船は往々にして水が流れにくいことがある)、部屋は全体的に広めで荷物も広げられる。一瞬、「わあ素晴らしい。これからはもうベリッシマしか乗らないわ」と思ったほどですが、実はこの先、この船の良くない点もいろいろ経験することになります。
しかし、設備がよいというのはこの船の大きなアドバンテージではあります。
これは、事前にダウンロードしておいた船専用のアプリです。
これを見れば、一日のスケジュール、自分が船内で使ったお金、ショーの予約などができるようになっています。沖に出てしまうと地上の電波はつながりません。船内専用のWi-Fiもありますが、なかなか料金がお高めで、案外つながりにくいとのうわさも聞いたので、わたしは使いませんでした。
しかし、このアプリだけは別の回線があるようで、無料でいつでもつながるようになっています。
乗船日からレストランがオープンしていますので、まずはランチをいただきます。
初日なので正式なダイニングルームでいただきました。こちらはメイン料理のラムのローストです。お味はまあ、普通かな。これはどの船でもそうですが、レストランは3つのパターンに分かれます。コース料理が出るダイニングルーム、ビュッフェ式のレストラン、予約が必要な有料レストランです。
ダイニングルームでは、メニューに書かれた料理を何皿でも注文してよく、つまりは食べ放題です。ただし、何千人ものお客さんにサーブするのはなかなか大変なので、時間がかかるという難点があります。
さっさと済ませたいときはビュッフェ式のレストランに行きます。
いろいろな国のさまざまな料理があり、好きなものを選べるという利点があります。
しかしこちらも混む時間帯に行くと、席の確保がかなり大変という難点もあります。
有料レストランは船によっていろいろですが、おいしい場合とそうでもない場合があるので、今回は行きませんでした。あとで聞くと、まあまあよかったという評価のようでした。
どの船においても、乗船日には必ず避難訓練が行われます。
通常はシアターなど広い場所に行って救命胴衣の着け方などを指導されますが、この船はあまりにも大きく、乗客が4500人以上もいるので、部屋のテレビで放送される避難指導の動画を見てから指定の番号に電話すると訓練に参加したとみなされるシステムでした。これで実際に事故が起きた時大丈夫なのかと、やや不安に。
船室内のテレビモニター。避難訓練の動画だけでなく、さまざまな国の衛星放送、その日のスケジュール、船内情報、有料の映画なども見られます。が、故障気味で衛星放送はほとんど見られませんでした。
そしていよいよ出航。これまで乗った船では甲板でちょっとした出航パーティが行われることもあったし、出航の瞬間は見送りの人々に手を振られたりして、なかなか感動的なものなのです。それが見たくて早めに外に出て待っていたのですが、この船では何事もなく、気づいたら「あれ、もう動いている?」という肩透かしでした。これが大桟橋だったらもっと見物人もいたのでしょうが、大黒ふ頭まで見物に来るのはよほどの船マニアだけのようで、華やかなお見送りもなく、ちょっとさびしい感じ。
ともかく、さようなら、横浜。行ってきまーす。
旅の様子など、この続きは「第2回 沖縄~台湾クルーズ編」で。
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