こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回は恐竜をテーマにした興味深い展覧会、特別展「恐竜図鑑━失われた世界の想像/創造」(上野の森美術館で2023年7月22日〈土〉まで開催)のご紹介です。
恐竜の展覧会と言うと、化石化した骨格などが展示される科学的なものを想像しますが、今回の展覧会は、それとは視点が違います。
わたしたち人間が、かつて地球上に恐竜という未知の生き物が生息していたことを知ったのは19世紀初頭。それから現在に至るまで研究と新発見が繰り返されてきましたが、結局のところ実際に恐竜の姿を見た人はおらず、図鑑などでよく見る恐竜の絵は、あくまで想像で描かれたものです。
むろん科学的な根拠に基づいて描かれているのですが、それでもやはり、現存の動物を描くのとは違う想像力と創造力が必要な作業だと思います。
この展覧会では、そんな恐竜の絵をアートとして捉え、それが科学の発展とともに進化してきた過程を知ることができます。
子供のころ図鑑で見たあの恐竜の絵を思い出しながら見て行きましょう。
イングランド南部のドーセット州に生まれたメアリー・アニングという女性は、幼いころから化石発掘に携わり、恐竜に先立つ海棲爬虫類を発見しました。この女性が発見した古生物の復元画は、貧しかった彼女を経済的に助けるため、友人の地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチによってまず水彩で描かれ、それをもとにした版画が売られるようになりました。
この絵はその版画を拡大して描いた油絵です。ワニのようなトカゲのような亀のような不思議な生き物がうごめく謎めいた世界。あまりに面白くて見入ってしまいます。
王者のような生き物が倒した別種の生き物の上に立ってあたりを睥睨し、周囲のさまざまな生き物たちは、まるで臣下のように王者を見上げています。三日月が浮かぶ美しい背景の中、謎の生き物たちの物語が展開しているようです。
これぞまさにロストワールドの想像と創造。
1878年から80年にかけて、ベルギーのベルニサール炭鉱でほぼ完全に近いイグアノドンの化石が発見されました。それにより、それまで想像と創造によって独自の形に描かれてきたイグアノドンの姿が、今わたしたちがよく見る「恐竜」に近くなりました。
チャールズ・R・ナイトは、古生物アート史上最初の専門画家のひとりです。
恐竜たちの闘いがリアルに描かれ、まるで目の前で実際に見るような臨場感です。
チョコレートのおまけについていた古生物のリトグラフ。美しい背景の中でさまざまな活動をするロストワールドの生き物たち。
こんな魅力的なおまけがついていたら、たくさんチョコレートを買って集めたくなります。
ブリアンはオーストリア=ハンガリー帝国(現チェコ共和国)に生まれた20世紀を代表する恐竜アーティストのひとり。その影響力は日本にも及び、60年代から70年代の児童書には、このブリアンの作品の模写や転載がたくさん使われていたそうです。
そう言えば、どこかで見たような気がします。
日本の現代美術にも影響を与える恐竜。こちらはタイガー立石こと立石紘一の作品。
砂漠からいきなり恐竜が湧き出すシュールな構図。頭には自由の女神の冠のようなものをかぶっています。
これはアラモ砦の戦いを描いているのか、それとも、アラモで世界初の核実験が行われたことを象徴しているのか。
どろどろに腐り、崩れ落ちそうな恐竜と少女たち。
この対比が、「ゆりかごから墓場まで」、つまり生と死を表しているのでしょうか。
恐竜の群れがこちらに向かってくる大迫力の構図。種類が違う恐竜もいますが、彼らはお互いにコミュニケーションが取れたのでしょうか。動物や鳥にもそれぞれの言葉があって意思疎通ができるのですから、恐竜もきっとできたでしょう。
この絵では、何かを語り合いながら歩いているように見えます。
ミュージアムショップで発見した各種恐竜のビニール模型。
恐竜はグッズのキャラクターとしても魅力的なので、いろいろな商品があります。
特別展「恐竜図鑑━失われた世界の想像/創造」
上野の森美術館
2023年5月31日(水)~7月22日(土)
詳細は公式ホームぺージをごらんください。
𠮷田さらさ 公式サイト
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