こんにちは。かりぃです。
琉球漆器をご存知ですか?琉球王朝時代に中国から伝わり、独自の技法を加えながら現代まで大切に継承されてきた歴史ある漆器。その中でも120年以上にわたり漆器づくりを続けている琉球最古の老舗「角萬漆器」さんを訪ねました。
首里城から徒歩5分ほどの立地にある「角萬漆器」。店内には匠の技が施された美しい琉球漆器が並び、ひとつひとつうっとり眺めてしまいます。
沖縄では月桃の花が見頃。入り口では月桃をモチーフにした漆器が出迎えてくれました。角萬漆器には、沖縄ならではの植物をモチーフにした作品がたくさんあります。
(上段)ハイビスカス、(中段)パパイア、芭蕉、(下段)ゴーヤ
どれも見ていて楽しくなるものばかり。小鉢や銘々皿などは数千円からありますし、使用後は柔らかいスポンジに中性洗剤をつけて洗い、乾いた布で拭き上げればOKなので日常使いの食器として気軽に楽しめます。
楽しさの極めつけ、芭蕉=バナナのお重。琉球漆器の特徴である鮮やかな赤色に、黄色と緑の模様。この南国モチーフがたまらなくチャーミング。ポップなのに、伝統の技に裏打ちされているだけあって決して安っぽくはならず、しっかりとした存在感。(私の写真ではその質感が上手く表現できないのがもどかしいのですが…。)即決はできない贅沢なお値段ですが、一生ものと思えば充分にその価値あり。そして残りの人生で日々楽しむならば早く使い始めたほうが…と思わず買っても良い理由が頭の中を駆け巡ります笑。 こちらのお重、県外の方々からの注文も多いそう。
看板商品の“姫重”。 12センチ角のコロンとした可愛い梅のお重です。
右の写真で、梅の花と枝がエンボスのように立体的に浮き上がっているのがお分かりいただけますか?これは琉球漆器にしかない「堆錦(ついきん)」という加飾技法。模様部分は漆と顔料を練り合わせた堆錦餅と呼ばれる漆粘土のようなものを作り、それを薄く伸ばして模様の形に切り取り本体と合わせることで立体感を出しています。先にご紹介したハイビスカスもゴーヤもバナナも、すべて少し浮き出ていて、このエンボス感がなんとも可愛く、琉球漆器独特の雰囲気をつくり出しています。琉球漆器でも螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)など他地域の漆器と同じ技法を使ったものもありますが、やはりこの琉球漆器オリジナルの堆錦(ついきん)技法は魅力的。
(左)ゆうなの花をモチーフにした丸重 (右)松竹梅があしらわれた吸い物碗
東道盆(トゥンダーブン)と呼ばれる、琉球漆器の代表的な器。琉球王国時代には中国に献上したり、中国からの冊封使をもてなす公の宴や、個人宅の祝宴など大切なお客様の接待に使われたりしていたそう。現代なら、おせち料理、宴会のオードブル皿、お茶会の菓子入れ、フルーツ皿など様々に工夫して使えそう。こんな贅沢な器がテーブルにあれば、宴も華やぎますね。
カラフルな琉球漆器たちの中で、小さくて渋めなのに目を惹きつける存在感を放っていたのがこちらの菊のお棗(なつめ)堆錦餅で菊の花をたくさん作って重ね、重なったところは切り取って、お棗全体を菊で包むという贅沢さ。こちらもやはり即決価格ではないのですが、再び頭の中で買っても良い理由がぐるぐると…笑
今回、お店の2階にある工房も少し見学させていただきました。
(左)堆錦技法で絵付けをしている匠。
(右)工房の棚に積まれた、器を作るための木材。沖縄県産の「デイゴ」や「シタマキ」などの木が使われます。
漆は空気中の水分をとりこみ、その中の酸素と反応して固まる性質があるので漆器づくりにはある程度の温度と湿度が必要。平均気温22.4度、湿度77%の沖縄は漆器づくりにとても適した環境だそうです。
(左)社長夫人の嘉手納ゆかりさん。
(右)ギャラリーの一角にある「角萬カフェ」にてスタッフの早崎さんと。カフェではこだわりの美味しいコーヒーやお菓子がいただけます。器はもちろん琉球漆器。漆器と聞くと“お祝いの品”というイメージが強いけれど、もっと日々の暮らしの中で楽しみながら使ってくれる人が増えてくれたらと願い、自由な発想でお菓子やお料理と漆器の組み合わせ方を提案しています。
驚いたのは、漆には強力な抗菌作用があることが科学的にも実証されているということ。京都漆器工芸組合の調査によると、大腸菌やサルモネラ菌を漆にたらした実験では4時間後に菌は半減、24時間後にはほぼ死滅していたというデータが出ているそう。そういえば、祖母が「漆塗りのお弁当箱は食材が傷まない」と言っていましたが、それにはちゃんと理由があったのですね。
角萬漆器では、堆錦技法を使って自分で漆に絵付けをするワークショップなども開催していて、私も今度娘と一緒に受講してみたいと思っています。その他にも楽しいイベントが度々開催されていますので、ご興味のある方はホームページやインスタをご覧くださいね。