道具も手間も時間もいらない、意識だけのリフトアップ。
筋肉と心の力学
文/齋藤 薫
齋藤 薫さん
Kaoru Saito
女性誌に多くの連載エッセイを持ち、美容記事も数々企画。化粧品の開発やアドバイザーも務め、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事としても活躍。著書も、『されど〝男〞は愛おしい』(講談社)、『〝一生美人〞力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)など多数
リフトアップは、化粧品や美容医療だけのものではない。むしろ日常的に"何をするか何をしないか"といったことが、同年代における"たるみの差"を生むのだと思う。
例えば、わずか三日間鏡を見ないで過ごすと、それだけで顔が少したるむという。裏を返せば、鏡をただ見ることで、こうありたいという想いがナチュラルなリフトアップ効果となって、顔を引き締めている証。見るだけの視覚美容って本当にあるのだ。それも心と筋肉の相乗作用。心が上向きの筋肉を作ってくれるということ。その積み重ねが、美容医療のいらない顔を作っても不思議ではない。
スキンケアではリフトケアがいちばん難しいとされるだけに、日々の小さな心がけだけで上がるなんて感動。天から吊り上げられているつもり、こめかみに力、口角を上げるだけ、そして鏡を見るだけ…。道具も時間も、努力もいらない、一瞬の意識だけでリフトアップ可能だなんて、これこそが幸せの美容といえるのではないだろうか。
1
頭の先から天に引っ張られているつもりになる
脚を痛めた人のリハビリに「頭のてっぺんから天に吊り上げられているつもりで歩く」というのがある。やってみると不思議、脚が痛くないばかりか、スイスイ美しく歩けてしまう。全身が上向きになるから体が信じられないほど軽くなる。背筋もピンとし、顔立ちまで上に引き上げられる。"つもり"は大事。錯覚ではなく、本当のリフトアップにつながるのだから。
2
"上向きの矢印"を、
顔の中に毎日最低8個描く
まずアイライナーで目尻の跳ね上げ。アイブロウで眉山を作る。頰骨からこめかみに向けてハイライトを入れる。肌色のペンシルで口角から1㎝、頰に向けて上向きのラインを描いてぼかす。これだけでも、顔の中に目に見えない"上向きの矢印"が4×2個、毎日のメイクで、たるみはみごとに補整できると知っておく。
3
写真を撮られるときのように、
こめかみに力を入れて
あなたもきっと写真を撮られるとき、顔の姿勢を正すように無意識のうちにこめかみに力を入れているはず。実はこれが、筋肉のナチュラルなリフトアップとなって、知らず知らず顔立ちのたるみを消している。普段から、いわゆる"自撮り顔"でいることは、人生レベルのリフトアップとなるはず。
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4
お風呂の中では顔を、
ベッドの上では体幹を
「パオ」のような顔のトレーニング機器も生まれて、顔の筋肉を鍛えるリフトアップがしだいに常識となりつつある。でも顔の体操ばかりは人に見せたくない。だから入浴中。お湯につかるいちばん暇な時間をコレに充てるときっと続く。そして体幹は寝る前か起きがけに、ベッドの上で、と決めると続くはず。腕立て伏せの要領で肘から下をベッドに固定して3分間。体幹を鍛えると、顔も含めた全身が上向きに引き締まるのも、体の不思議。
5
イライラするとき、落ち込んだときこそ、
口角を上げる
毎日不機嫌だと、上向きの筋肉が作られないからたるみやすくなり、真顔が笑顔の人は、不思議なくらいたるまない。体と同じ、動かさなければ衰えていき、笑わないともっと笑えなくなる。筋肉にそんな悪循環を作らないため、どんなときも口角を上げる心がけを。すると心の向きも変わり、イライラも収まり、落ち込みもやわらぐのだ。それどころか、口角を上げるだけで、ナチュラルキラー細胞が免疫力を高めてくれる。笑顔を生むより先に、口角を上げて気持ちを変えるリフトケアを。
6
"少しだけ太り、少しだけ痩せる"を
あえて繰り返そう
たるまないためには太らないこと。でも、皮膚をたるませないためには痩せすぎないこと。肌も肉もたるませないためには、そのバランスが大切。だから、1.5㎏までの増減で少し太る、少し痩せる、を繰り返す。幸い、人は少し痩せれば引き締まって見え、少しだけふっくらしたときもピンとして見え、どちらも若返って見えるのだ。それを繰り返すことが、ひとつのアンチエイジングと覚えていて。
7
毎日、誰かに何かを褒められる
自分を作って出かける
何かを褒められると、それだけで気持ちが上がり、すると知らないうちに表情まで、肌まで上向きになっている。これは疑いようのない事実。少々他力本願ながら、意外なほど効果的なリフトアップ。毎日、どこかを褒められそうな自分を作って出かける心がけを。そうした気持ちのハリもまた効果的。褒められればもっと褒められようとするのが女心。褒められリフトアップは、まさにいいことずくめなのである。
撮影/三木麻奈