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ヨルダンのアリア王女 スペシャルインタビュー「アラブの馬をはじめ動物保護に情熱を注いでいます」

井原美紀

井原美紀

旅するコピーライター・エディター。

世界107ヶ国1300都市以上を旅してきた。 以前は海とヨットが大好きだったが 今は空を飛ぶことがなによりも好き。 趣味は仕事。

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ヨルダン滞在中、現国王のアブドゥッラー2世のお姉さまにあたる、アリア王女のご自宅にお招きいただき、王女が力を入れている動物保護などのチャリティ活動についてお話を伺う機会をいただいた。
アリア王女は、とくに馬が好きで、これまでに3冊馬にまつわる本を出版している。

 

<スペシャルインタビュー>

終始にこやかにお話をしてくださったアリア・ビント・フセイン王女

 

 

■2歳から慣れ親しんだアラブの馬を守る

 

動物愛好家として知られるヨルダンのアリア王女。小さい頃から動物と触れ合う環境で育ったことが、今の活動に大きな影響を与えたという。

 

「初めて飼った動物は鳥とネズミ(笑)だったの。子供の頃は犬や猫も飼っていました。乗馬をはじめたのは2歳のとき。その頃から自然が大好きで、決してよい競技騎手ではありませんでしたが、馬と一緒にいるのはとても大好きだったんです」

 

現在、アリア王女の厩舎には217頭もの馬が飼育されている。その祖先は、王女のお祖父さまの時代から所有していた馬たちである。世界的に競走馬のサラブレッドが人気となる中、アリア王女の父上(前国王)が伝統的なアラブの馬の品種保存に乗り出したのだ。

 

「父がアラブの馬を守ろうとしていることに私は非常に興味を持ちました。それを知った父が私を厩舎の管理者にしてくれたのです。18歳か19歳の頃の話です。最初は8頭の馬からスタートして、徐々に数を増やしていきました。
今では200頭以上の馬がいますが、そこにいるのは私の馬だけではありません。厩舎を持たない他の家族の馬、虐待や放置から救助した馬も含まれています」

 

隅々まで綺麗に清掃されている厩舎。このマンションのような厩舎がいくつも連なっている。

お散歩の時間に元気に走り回る馬たち。すべてアラブ馬。

厩舎内にあるアラブ馬博物館。昔の馬具や、賞状などが飾られている。

 

 

■王女の肩書を最大限生かした動物保護活動

 

アリア王女は多くのチャリティ団体の代表を務めている。12年前、食肉処理場の手順の改善に取り組んだのが最初の仕事だった。よりストレスの少ない穏やかな手段に変え、衛生状態も向上させた。

 

「財団を作ったのは、私の王女という肩書が動物たちを守るために役立つのではないか、と言われたのがきっかけでした。これらの活動は動物の権利を守るだけではなく、人々の幸せのためにもなっていると思っています。なぜなら、動物が苦しんでいるときは、それを取り囲む環境、つまり周りにいる人間たちも苦しんでいるからです。世界は実はすべてつながっているのですから。私たちのモットーは、“全ての創造物に情熱と敬意を持てば、環境に関係するものすべてを手助けできる”ということなのです」

 

「4バウズ・インターナショナル」という団体では、野良犬を捕獲し、去勢や予防接種をしてから解放するという活動をしている。

 

「以前は野良犬を射殺や毒殺して数を減らそうとしていました。しかし、それは残酷で非衛生的であるばかりか、肝心の野良犬数の減少には繋がりませんでした。ですから、去勢するという方法を推進しました。その結果、野良犬たちの攻撃性が抑えられ、犬同士がうまく共存し、人間とのトラブルも少なくなっています。繁殖もしないので、数が増えることもありません」

 

野良犬保護のプログラムは市町村と協力して進めており、獣医などのパートナーとの関係も確立。ルーマニアなどヨーロッパ各地から獣医が訪れ力を貸してくれることもある。

 

イギリスで教育を受けた王女は、アラビア語、フランス語、英語に堪能。

 

広々とした明るい邸宅には、高価なカーペットや美術品が数多く飾られているものの、いかにも居心地の良いくつろいだ雰囲気が漂う。

 

幼い頃のアリア王女と前国王フセイン1世。

 

 

■広大な自然保護区で動物たちを保護

 

アリア王女は、野良犬の保護以外にもさまざまな動物を守る活動に取り組んでいる。
希少動物の違法輸出、劣悪な環境の動物園の改善、虐待された動物の保護施設づくり。

 

「以前はライオンの子どもを南アフリカの保護施設に送っていたのですが、今はどこも一杯になってしまいました。ですから、今度はヨルダンに、ライオンの子供を保護する施設を作りたいと考えています。環境省が、森林全体の管理をすることを条件に資金を提供してくれたため、大規模な敷地を動物たちの保護のために使うことができるようになりました。そうしてできたのが、王立保全協会が運営する自然保護区です。ここでは、ライオンをはじめ、ハイエナ、オオカミ、キツネ、クマやトラなども保護しています」

 

この敷地は貧困エリアにあるため、一部を観光地として解放することで、住民に仕事と教育の機会を与えるのにも役立っている。
また、国際動物福祉基金( International Fund For Animal Welfare)のおかげでアラブ初の野生動物の獣医も誕生。湾岸地域にはたくさんの固有種がいるが、獣医が不足しているので、ヨーロッパの獣医を招聘して固有種対応のための訓練を行うことも計画している。

 

「ヨルダンだけでなく、中東各国から救助されてくる動物たちを自然保護区で保護するだけでなく、カナダや南アフリカなどほかの国に引き取ってもらい、幸せに暮らせる環境へ送り出すこともあります」

 

 

子どもたちのための活動にも力を注ぐアリア王女。

 

■子どもたちの笑顔のために

 

もうひとつ、王女が力を入れているのが、子どもたちを対象にした活動だ。

 

「電気代が払えない人たちのために、再生可能エネルギーを利用した公立学校の学習環境の改善にも取り組んでいます。ソーラーパネルを設置して、寒暖の差が激しい地域でも快適に学習できるようになりました。
また、自閉症の子ども向けのプログラムとして、馬と一緒に自然を楽しむというプログラムもあります。自分のペースで馬や自然と向き合うことが、子どもたちにとって大きな癒しとなり、なかには話すことができなかった子が会話ができるようになったといううれしいケースもありました」

 

多くの慈善活動を手がけるアリア王女ですが、「それらはすべてひとつに繋がっている」と言います。

 

「最初はささいなボランティアから始めたことでしたが、必要とされることを少しずつ実現していくことで、ほかの活動に広がっていったのだと思います。最初からこれをやろうと思っていたわけでなく、はじめてみたら次々と目的が達成できたために、次のステップに進んできたということ。座って何か起きるのを待っているのではなく、とにかく始めること。それが今の活動のすべての源です」

 

明るくて気さくな王女との約束の90分は、あっという間に過ぎてしまった。王族に生まれ、強い使命感を持って、さまざまな問題に積極的に取り組むアリア王女。ヨルダンという国が持つ、人々のやさしさとたくましさを象徴する存在である。

 

まるで旧知のようにおしゃべりをしてくださる王女。
ヨルダン王室と国民の距離が近いことがよくわかった。

アリア王女と戦闘機写真の第一人者であり取材を手配してくださった徳永克彦先生と。

 

 

取材協力
DACT Inc.,
Royal Jordanian Falcons
アカバ政府観光局

 

 

ブログ「世界1000都市ものがたり」
https://ameblo.jp/surprise-enterprise/entry-12346265421.html

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