前回は、食事や栄養面からの乾燥肌について、管理栄養士の方に話を伺いました。今回は、長年女性の美を研究してきた資生堂の研究員の方たちにお話を聞いていきます。
資生堂の研究員お二人に聞きました
「的確な保湿ケアで角層の良循環を育むことが重要です」
Eijiro Hara
原 英二郎さん
不十分なケアをしていると
乾燥や肌あれを引き起こします
「加齢によって肌が乾燥するという意識は皆さん、お持ちだと思います。特にボディは乾燥しますよね。50歳を越えると粉を吹くほど乾燥する場合も少なくない。ただ、40代、50代の顔の肌を調べたら、その水分量が若い世代の肌より多い、というデータもあるんです」と原英二郎さん。
意外な結果! でも顔が乾燥すると感じているアワエイジ世代が多いのも事実。そのデータと実感のズレをひもとく要因のひとつが、資生堂の調査結果の中にありました。
「化粧水、乳液、クリームを週4回以上しっかり使っている“お手入れしている群”と、化粧水だけなど、ケアが不十分な “お手入れしていない群”の肌状態を調べてみたのです。当たり前ですが、お手入れしている群は水分量が高く、きめも整ってシワも少ない。お手入れしていない群はターンオーバーが不調で肌あれを起こしている人が多いんです。つまり、肌の保湿状態の違いも大きいのではと考えられます。そして、その違いのカギを握るのが“角層の活動が良好かどうか”にあるのです」
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基本の保湿ケアを続けることで
肌の水分量もきめも改善
角層は、角層細胞やNMF(天然保湿因子)、細胞間脂質などで構成され、保湿機能とバリア機能を担う、皮膚の最表層にある層のこと。
「角層細胞は生物学的には死んだ細胞と言われていますが、実は角層の中では美肌づくりに欠かせない活動が積極的に行われており、水分保持に大切なNMFも、この活動の中で生み出されているんです」
なかでも、資生堂が注目するのは、CEという角層細胞を覆う外壁。
「角層のCEが成熟していないと、角層細胞の周囲を埋めている細胞間脂質の配列が乱れ、バリア機能も低く。反対に、角層のCEがよい状態になると、細胞間脂質がきれいに整列し、バリア機能が保たれます。すると、水分が満たされ、NMFがきちんと産生され、保湿機能が高まり、CEが成熟するといった“健やかな角層の良循環”が生まれるんです」
そこで重要になってくるのが、前述したような充実したスキンケア。
「紫外線や乾燥などによって肌の乾燥が引き起こされると、角層の循環が悪くなり、きめが乱れ、肌があれ、透明感が低下し、見た目も悪くなります。でも例えば保湿する、バリア機能を高めるなど、どこかを起点としたケアをすることで、角層を良循環に導くことができるんです」
実際に、基本のケアを継続的に続けたことで、角層水分量が上昇し、きめやターンオーバーが改善したというデータも。だから乾燥対策には、「的確な毎日の保湿ケアで、良好な角層を育むことが重要なのです」。
健やかな角層の良循環を示した図。このステップのどこかを起点にスキンケアすることで、悪循環に陥っていた角層の状態も好転。毎日の的確な保湿ケアこそ、美しく潤った肌をつくる決め手になります
資料協力/資生堂
次ページでは、頭皮の乾燥についてお話を伺いました。
「頭皮の皮脂量は加齢とともに減少。顔同様にケアを」
Ritsuko Ehama
江浜律子さん
不十分なケアをしていると
乾燥や肌あれを引き起こします
顔とともに、アワエイジ世代が気になるのが、頭皮と髪の乾燥。
「顔の肌と比べて、頭皮に関する知見は限られていますが、年齢とともに皮脂量が減ることがわかっています。“乾燥している”という実感は、角層水分量だけで決まるのではなく、皮脂の分泌量低下も影響している可能性があります」と江浜律子さん。
また、頭皮があれたり炎症を起こすことで、髪の毛のハリやコシが低下するなど、髪にも悪影響を及ぼすことが徐々に明らかになっているそう。
「ですから頭皮も、顔と同様にケアをすることが有効です。ただ、顔と同じものを使うと、頭皮にはよくても、髪の毛がべたつくなどデメリットになる場合があるので、頭皮用の美容液などを使うことをおすすめします」
次回は、花王の研究員の方に乾燥の原因と対策について、お話を伺います。
イラスト/平松昭子 きくちりえ(Softdesign) 取材・原文/山崎敦子