前回は、資生堂の研究員の方に健やかな肌を保つための角層の良循環について話を伺いました。今回は、花王の研究員の方に、血管力が乾燥に関係しているという意外なお話について聞いていきます。
花王の研究員に聞きました
「保湿と血管力を高めるケアを。頭皮の保湿も忘れずに」
Kazuhiro Kaizu
海津一宏さん
外気の湿度、皮脂量、血管力の低下が、
おもな乾燥要因です
「乾燥を感じる要因に外気の湿度変化があります。特に秋口は“絶対湿度”がぐんと下がり、20℃を下回ります。そうなると、年齢に限らず乾燥を感じやすくなりますね」と海津一宏さん。そして内的な要因のひとつが皮脂量の減少。「保湿の三大因子は細胞間脂質とNMF、皮脂といわれていますが、この皮脂の量が年齢とともに下がってしまうのです」
顔以上に体の乾燥を感じる人が多いアワエイジ世代ですが、それも皮脂量と深い関係があるよう。
「顔と比べると、体の皮脂腺数は圧倒的に少ないんです(下図参照)。特に膝下は、敏感肌意識がない人でも、8割以上が乾燥を感じているようです」
内的要因には、血管力の低下も。
「血管は栄養分を運んだり、老廃物を回収したり、非常に重要な役割を担っています。この血管の流れは、実は一定ではなく、必要に応じて流したり、ゆっくりさせたり、調整して私たちは生きているのです」
血管力とは、この血流を調整する力のこと。それが年齢とともに低下してしまうのだそうです。
「血管力が弱まると、冷えや血行不良、疲れなどの体調の悩み意識が高くなるとともに、肌あれも起こしやすくなります。すねなどが粉を吹くほど乾燥するのも、血管力が関係していることも考えられますね」
血流を促したり緩めたりする〝血管力〞の高い人と低い人の、〝肌あれ状態〞を比較。血管力の低い人は肌あれしやすいのがわかります。資料提供/花王
出典: Y. Yoshida, K. Amano et. al., Int. J. Dermatol., 2017, 56, 176-183
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放っておくと老化も加速。
ボディや頭皮の保湿も重要
さらに、紫外線や生活習慣なども大きく影響してくるのだそう。
「肌の乾燥度合いは個人差が大きいのですが、乾燥を放っておくと、肌(角層)の保湿機能やバリア機能が下がり、外部刺激の影響を受けやすくなります。そうすると微弱炎症が起こり、かゆみが出たりするので、我慢できずにかくと、ますますバリア機能が弱くなり、悪循環に陥ることが。また、炎症は諸悪の根源で、肌のコラーゲンやエラスチンも変性しやすくなり、肌の老化を進ませる要因にもなると言われています」
乾燥を感じたら即、対策を!
「化粧水、乳液、クリームでのケアが有効です。また血管力は、毎日、朝晩2回、血流を高めるケアをすることで、鍛えることができるんです。ボディは使って気持ちいいと感じるものを選んで、続けることがおすすめですね」
さらに、頭皮のケアも重要です。
「頭皮は、実はとてもデリケート。額や頰と比べると、バリア機能も低く、角層水分量も少ない。なのに、ほかの部位と比べて鈍感なので、少々傷んでも気づきにくいんです」
確かに頭皮は、汗も皮脂も多く、ゴシゴシ洗いやカラー、パーマと、過酷な環境に置かれることが多い。
「頭皮の保湿も大事です。頭皮専用ローションなどを使って、ぜひケアしていただきたいと思います」
次回は、セラピストに聞く乾燥肌対策についてご紹介します。
イラスト/平松昭子 きくちりえ(Softdesign) 取材・原文/山崎敦子