ファッションのポイントになる美しい手ぬぐい
東京にいたころは、馴染みが薄かった手ぬぐいですが、京都の暮らしでは、結構、出番が…。浴衣で出かけるときは、食事のとき膝に置いたり、手を拭いたり、室内に入るとき、素足の汚れを拭ったり…必ず1枚は、携帯します。手ぬぐいの素材の晒(さらし)は、薄目ながら丈夫で、水分の吸収性も高く、また乾きやすく、小さく折りたため、扱いやすいのが特徴。京都の人なら、必ず何枚か持っている生活必需品なのです。
そもそも江戸時代、綿織物が庶民に普及したとき、綿の着物の反物の端切れから生まれたといわれる手ぬぐい。時と共に、着物の端切れではなく、手ぬぐい自体で作られる、独特の文化を形成し、発展してゆきます。白い晒(さらし)に、藍色や朱色などで文字や図柄が染められた手ぬぐいは、昔から種類豊富で、そのデザインの高さには、驚くばかり。
祇園、四条通沿いにある「永楽屋細辻伊兵衛商店」は、1615年創業の手ぬぐいの老舗。現在の当主である十四代が、明治から昭和初期の模様を復活させたり、またオリジナルデザインの洒落た手ぬぐいを次々に発表。店内には、連日多くの国内外の観光客が訪れます。
ここ数年、手ぬぐい人気は、うなぎのぼり。嵩張らず、お土産にも便利という理由もさることながら、自分のために購入する人が多いそう。「手を拭くなどの機能性からではなく、今は、ファッションアイテムのひとつとして求められる方が…」と、店長の桑久保さん。そういえば、浮世絵には、襟元に粋に巻いた伊達男たち、端を口元に加える色っぽい女たちの姿などがあり、江戸時代もファッションアイテムだったことがうかがえます。
昔、和服の襟元に使ったように、今、首に巻くのが京都では流行中。特に、夏の汗ばむ首筋の汗避けには、重宝します。また、冬は手ぬぐい一本で、襟元はかなり暖かくなるそう。家の中でも、タオルを首に巻くのは、おしゃれの観点からみると、ちょっと…。でも、手ぬぐいをスカーフのように小粋に巻くと、なかなかおしゃれ。手ぬぐいは、昔から、幅35センチ前後、長さ90センチが一般的なサイズで、これが絶妙な使いやすい大きさ。首に巻くと、よくわかります。滑りにくく、ずれにくいので、動いても平気。しかも1日使ったら、すぐに洗えるのがいいんです。問題は、いかにおしゃれに使えるか…。「スカーフのように折り方ひとつで、表情に変化も付けられますし、全面のチラシ模様などは、自分にあった長さに切って使うこともできます」と、桑久保さん。
「ところで、手ぬぐいの端が、切りっぱなしなっている理由ごぞんじですか?」と。え~
ただ手間をかけてないだけかと…。「端を縫わないことで、水切れをよくし、早く乾くようにしているんです。また、切りっぱなしだと、手で割くことができるので、昔は、怪我をしたとき、包帯替わりに使ったり、下駄の鼻緒をすげたりしたんですよ」と。そんな使い方が、手ぬぐいにあったとは…。災害緊急用品にも、タオルだけでなく、手ぬぐいも準備しておくのがいいかも…。確か、ごみの浮いた水のろ過にも使えるはず…。
さまざまな使い方ができる手ぬぐい…。最近、おしゃれな京都の人たちは、手ぬぐいでワインやお酒を包んで贈り物にしたりするそう。シンプルな1枚の布だけに、その使い方は、工夫次第。また1枚、自分の好みの手ぬぐいが欲しくなってしまいます。
永楽屋細辻伊兵衛商店 祇園店
京都市東山区四条通大和大路東入ル 祇園町北側242
☎075-532-1125
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」 http://blog.goo.ne.jp/mimoron/
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