こんにちは。
雑誌などで拝見する齋藤薫さんは、お美しく、書かれる文章も端正。知的でエレガントな雰囲気にずっと憧れていたので、実は、お会いする前は、かなりドキドキ。お会いしてみたら、外見はイメージ通りの美しさでしたが、想像と違って、お人柄は、まったく気取りがなく、さまざまな体験談やそこから導き出された考えを、同世代や後輩女性のために正直に語ってくださいました。かなりいいお話が伺えています。4回連続でお伝えしますので、ぜひ読んでくださいね。
パートナー、子ども、親の介護、更年期……。
さまざまな問題を抱えるMyAge/OurAge世代。
更年期後の人生も素敵に迎えるために、MyAge/OurAge世代が目指すべき心のあり方、目指すべき美しさとは?
美容と女性のあり方を深く見つめ続けてきた、美容ジャーナリスト・齋藤薫さんに、
自らがMyAge/OurAge世代である美容エディター・松本千登世さんがインタビュー!
[右]齋藤薫さん、[左]聞き手の松本千登世さん
人生の中でいちばん不幸、それが49歳というとき
「世界的な調査で、一生のうちでいちばん不幸なのは『49歳』というデータがあるらしいんです。
それは男女問わず。言われてみれば、私自身もそうでした。
50歳はちょうど、人生の『おへそ』みたいなときでしょう?
受け入れられない、あきらめられない。先が見えるようでいて見えない…
いろんな感情が入ってきて、混乱するんじゃないかな?」
齋藤薫さんの口から飛び出した、49歳最強「不幸」説に、どきっとさせられた。
私もそう、まわりの友人たちもそう、そういえば、男性たちのそんなつぶやきも耳にしたことがある…。
齋藤さんご自身は、どうだったのか?
「50代になる直前に、同年代の友だちとつらいよねつらいよね、と盛り上がりました。
更年期の問題、心の問題、親の問題、家族の問題、
もっといえば大きく人生の問題…。
見た目もそう。40代はまだ若いけれど、
ちょうど50歳に差しかかるあたりでどーんと来るんですよね。
驚きあり、怖さあり。こんなはずじゃなかったとか、私に限ってとか。
いろんな感情が一緒くたになってごちゃごちゃになっていました」
抱え込んでいるつもりはないし、
気持ちのうえではシンプルになりたいと思っているのに、
まるで磁石のように自らいろいろなことを引き寄せ、
結果、ぺたぺたと体や心にまとわりついてくる、そんなイメージか?
「まわりには『元気な世代ですね』と言われるし、
実際、その世代の人を見ていると元気に見えるんだけど、
渦中の自分は『本当にそう?』って。
白鳥のように、たとえ見えている部分は優雅でも、
実際、脚はばたばたしてる、みたいな、そんな感じでした」
捨てないと心のいい60代はやって来ない
かつて女という舞台から降りるのは30代、
そんな時代があった。
ところがここ10年、いや5年で女性も取り巻く環境も、驚くほど変わった。
30代はまだまだ「大人の子ども」、
40代でも「女の主役」は可能で、
今では50代にもその意識が広がっている。
本当は、みんな「ばたばた」なのに。
「著名人の方がよく、50代を上手に過ごすと60代が楽よ、とおっしゃいますよね?
どういうこと? とずっと思っていたのですが、
ようやくその意味がわかりました。
不思議なもので、人生の中で最強に不幸な50歳の節目を越えると、
10年がわーっと過ぎちゃう。
乗り越えるときに、人は学ぶんでしょうね。
捨てるものは捨てる、あきらめるものはあきらめるって。
どんどんシンプルになって、また幸福感が戻ってくる。
そう、捨てないと心地いい60代はやって来ないんです」
そして今、齋藤さんは、60歳という次の節目を前に、
また焦りを感じはじめたという。
まわりの同世代の友だちも、同じように。
でもそれは、50歳のときとは明らかに違う。
漠然としていた50歳と、より具体的な60歳とでは、焦りの質が違うのだ、と。
「やるべきことをやりきった、それでもまだこれから何かできそう、
ただひと休みしたいよね…そんな感覚。
体力的にはもちろん、10年前よりも落ちているし、
先の不安もあるのだけれど、
定年など社会的に『もうやらなくていいよ』という大義があるからか、
どこか安心感もある。
50歳に比べて先が見える分、
これがやりたいというのがより明快なんです。
このままだと終わっちゃうよね、動かなくちゃ、っていう」
(つづく)
齋藤 薫 Kaoru Saito
profile
1955年生まれ。女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト&エッセイストに。
女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。
『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)など著書多数。
松本千登世 Chitose Matsumoto
profile
1964年生まれ。美容エディター。
出版社勤務を経て、現在はフリーランスとして活躍。
齋藤薫さんとの出会いは編集者となるより以前にさかのぼる。
広告代理店勤務を通して知り合い、その後多くの美容特集で企画をともにしている。
撮影/杉山雅史(C-LOVe) 原文/松本千登世