自然豊かな里山で育つ野生のゆず
大阪北西部に位置する箕面(みのお)市。大阪都市圏のベッドタウンとして賑わう一方、温泉街でもあり、滝や紅葉狩りスポットもなどの美しい自然にも恵まれ、観光スポットとしても注目を浴びています。
(絵画のような紅葉風景を楽しむことができる箕面公園には、「日本の滝百選」に選定されている箕面大滝、勝運の寺として名高い「勝尾寺」も)
そんな箕面の里山には全国に約5,000本しかないといわれる「実生(みしょう)ゆず」の木が生い茂り、これから収穫の時期を迎えます。
「実生」とは、挿し木や接ぎ木ではなく、種子から発芽して育った植物のこと。一般に出回っているゆずのほとんどは接ぎ木で育てられたもので、3年ほどで収穫できるようになりますが、実生ゆずは実がなるまでに18年もの歳月を要します。その分、ずっしりと大粒で香り高い実がなるのだとか。
(止々呂美(とどろみ)地区では、約40軒の農家がゆずを栽培している)
そんな箕面の「実生ゆず」を使ったコスメブランド「WILD YUZU」を展開する会社が、「YURAGI STYLE」。もともとリフレクソロジーサロンとしてスタートさせた会社が、どうしてゆずを使ったコスメを開発することになったのか、代表の岡山栄子さんにお話しを伺いました。
偶然のアクシデントから誕生したゆずのクレジング
「セラピストとして高齢者施設に訪問ケアで行くようになった際に、なじみのない西洋のアロマの香りに拒否反応を示すお年寄りが多いことから、地元に自生するゆずに着目。古来より日本に根付くゆずの香りなら、お年寄りでも受け入れやすいし、生産工程を確認することができれば、肌が弱いお年寄りにも安心して使える精油が抽出できると考えたのです。
(もともと廃棄されるはずだった皮、種子、袋をアップサイクルして使用)
実際に精油を抽出してみたところ、20kgの皮からとれる精油はわずか20mlほど。採算がとれず頭を悩ませていたときに、精油を抽出する際にとれる蒸留水が床にこぼしてしまったんです。あわてて拭いたら、そこだけ油膜がきれいに拭き取れるのを発見。
施術に使う精油はとれないけれど、このゆずの蒸留水を使った洗浄剤を使えば、入浴できないお年寄りの体をきれいにできるのではないかと。せっかくなら、洗浄成分も肌に優しい天然由来のものがいいと考え、松由来の洗浄成分を使った洗剤を販売しているメーカーに相談しました」
試行錯誤の末、完成したのが「ゆずクレンジングフォーム」。100%植物由来原料にこだわり、防腐剤などの合成化学物質の原料を一切配合せずに製品化したため、安定性や品質保持の観点から、最初の3年間は改良の連続だったそうです。
想像以上のパワーをもつ実生ゆずの底力
ほとんどの柑橘系の皮には、紫外線に当たると肌にダメージを与える「光毒性」をもっていることから、安全性を確認するために成分の検証を行うことに。そのなかで、実生ゆずのもつ、さまざまな力を見出しました。
(収穫は11月下旬から12月中旬にかけておこなわれる。箕面ではジュースやジャムなどの加工品も販売されている)
さらに、知人の伝手で知り合った大阪大学の医学博士が運営するバイオベンチャー企業とタッグを組み、野生のゆずの恵みと最新皮膚医学の融合させた新ブランド「Be MOISTURE」を設立。製品も増え、実生ゆずのパワーに魅了される人もじわじわと増えています。
【実生ゆずのパワフルな成分】
■1:「ヘスペリジン」「ピネン」をたっぷり含有
実生ゆずの果皮から抽出した精油や蒸留水には果樹栽培のゆずよりも多くの「ヘスペリジン」「ピネン」を含有。「ヘスペリジン」はポリフェノールの一種で「ビタミンP」とも呼ばれ、血圧上昇抑制、脳卒中や心筋梗塞の発作予防への働きが期待されている成分です。また「ピネン」は香りの成分のひとつで、奥深く優しいゆずの香りを生み出します。また、抗酸化作用や抗菌作用、鎮静作用があるといわれています。
■2:種子には「ペクチン」が豊富
種子から抽出したエキスには「ペクチン」が豊富。加齢や紫外線などによって発生する、シワの形成やハリの低下につながる分解酵素の働きを抑え、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を生み出すEGFを活性することが実験で検証されています。
■3:注目成分「ミルセン」も!
芳香成分のひとつでもある「ミルセン」。筋肉の弛緩や鎮静・鎮痛作用、抗炎症作用のほか催眠作用もあり、リラックス効果の高い成分として注目されています。
悩み多き大人の肌もゆずのパワーで美しく!
実生ゆずの偉大な効果を凝縮させたアイテムが揃う「WILD YUZU」と「Be MOISTURE」のなかから、OurAge世代におすすめの3アイテムを岡山さんがリコメンド。
■アイテム1:メイクと汚れを優しくオフする洗顔フォーム
(WILD YUZU ゆずクレンジングフォーム 100ml ¥2,970)
「ユズ果皮水と天然の松の樹液から抽出した植物由来の洗浄成分が主原料。乾燥しやすくなる40代∼50代の肌には、刺激を与えずしっかりメイクオフと洗顔、毛穴ケアまで行える洗顔を。洗顔後の不快な乾燥によるツッパリ感が緩和して柔らかい肌へ導きます」
■アイテム2:エイジング肌とたたかうオールインワン
(Beモイスチャー オールインワン 55g ¥11,000)
「実生ゆずの皮・種・ワタの部分から抽出したセラムを80%以上で配合したオールインワンタイプのジェルクリーム。高い保湿力を誇り、細胞の再生効果や紫外線ダメージを修復作用をエビデンスで実証しました。奥深いゆずの香りに癒されるのも魅力」
■アイテム3:マルチに使えるミストローション
(WILD YUZU ゆずレスキューローション 80ml ¥2,420)
「ユズ果実水、ラベンダー油、セイヨウハッカ油などの天然植物成分を配合。メントールのすっきりとした香りはリフレッシュ効果が高く、ストレスフルな現代人のお守り的アイテムに。ボディに使えば保湿しながらこわばった筋肉をほぐします。頭皮に使えば、頭皮環境を整えて抜け毛予防、髪のハリコシアップに繋がります」
余談ですが、岡山さんの透明感とハリのある肌を拝見して、これが実生ゆずのパワーなのか…と取材中ずっと釘づけでした。「YURAGI STYLE」では、ゆずの皮や種子、袋を分別する作業を福祉作業所に委託しています。福祉作業所とは、身に障害をもち、雇用されることが難しい人たちが、働くことの喜びを体験しながら、社会参加ができるように支援する施設のこと。
「ゆずを通して、SDGsが掲げる“誰も置き去りにしない”社会づくりに貢献できるのならうれしいかぎり」と岡山さんは言います。
そしてゆずを通して地域コミュニティを活性化させることで、お互いが見守り支え合っていける街づくりの礎を築いているのです。
取材・文/新田晃代