田路(たじ)めぐみ(48歳)
松倉クリニック 医師
東京大学医学部医学科卒業。日本形成外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。2014年より松倉クリニックに勤務。美容のみならず形成外科、再建外科としても活躍。自らの薄毛経験も活かし、体全体とストレスまで考慮した総合育毛治療が人気を呼んでいる
前回お伝えしたように、鉄欠乏を治すことで元気を取り戻してきた私の髪。
鉄喪失を抑えるため、生理出血量を抑える目的でピルの内服も始めました。
よーしよし、これでひと安心……。
と思っていたら、すぐさま次の試練がやってきたのです!
ピルで薄毛!?
なぜか最近、元気がない。そして頭皮が薄く平たくなり、頭皮の透けが進行している気がする……。その間に変えたことといえば、ピルの内服しかありません。
ただし、ピルは“中止した際に薄毛になることがある”と言われているお薬です。
これは一体、どういうこと?
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類あります。2つが協力して、頭皮と髪を育て、血流を促し、ツヤ・ハリ・コシを保つんですね。
ホルモン値は血液検査で測定できる
一方ピルは、“人工の女性ホルモンを投与することで、自分の卵巣で作られる女性ホルモンの放出を抑え、排卵を抑制したり生理出血量を抑える”もの。
つまり、本来の女性ホルモンとは化学構造の異なる人工成分なので、体に対する作用も本来の女性ホルモンと似てはいても、けして同じではないんですね。
私の場合は、体質とその成分との相性の問題で、“疲れ”や“薄毛”になってしまったみたい!!
ホルモンは、ホルモンの受容体を通じて体に作用するのですが、この受容体の“型”や、どの組織にどれくらいその受容体が分布しているかは、実はかなり個人差があるものなんです。
ピルを中止した時に薄毛になる方は、人工の女性ホルモンでも本来の女性ホルモンに近いかたちで、頭皮と髪にプラスにはたらく体質なのだと思われます。
私はそうはいかなかった!
5カ月飲んだ時点でこれに気付き、慌ててピルを中止。
ふっと体が楽になり、鉄分の補充のみを続け、半年くらい経つとだいぶ頭皮と髪が復活してきたのが分かりました。
体に必要な栄養素はサプリメントで摂る工夫も大切
あのまま飲んでいたらと思うと……怖いです!
ところが一難去ってまた一難、今度は“お年頃の薄毛”です。
お年頃で薄毛!?
30代後半からプロゲステロンは低下を始め、40代ではエストロゲンもそれに続きます。
薄毛のほか、お肌の老化サインや体調の崩れなどのお悩みが、はっきり出始めるのもちょうどこの頃。
私もそうでした。
そんな時、食事・睡眠・運動はホルモンバランス改善のキー!タンパク質とお野菜を中心に食事を整えるだけでなく、一念発起して10年ほどサボっていたジムトレーニングをスタート。しばらくはきつかったですが、3カ月以上継続していると、一段階体調や肌つやが良くなったのを感じました。
健康には欠かせない運動。いい効果がいろいろと報告されているのでぜひ続けたいもの
髪は、肌状態と同じように変化しますので、徐々によくなってゆくと確信!
1カ月に1㎝ずつ伸びますので、半年以上の経過でハリ・コシ・ツヤの改善が実感できるはず。習慣の改善は、継続することがとっても大切なんです。
また、わたしは夜型でショートスリーパー(5.5時間)なので、その分深くよい睡眠がとれるよう照明を調整したり、香りのよいクリームを塗ったり、本を読んだりとリラックスタイムをもうけています。
そのかいあってか、朝までぐっすり、地震が起きても起きないレベル(笑)
育毛外来担当という立場もあるので、わたしはクリニックで行っているナチュラルホルモン補充療法も、育毛とアンチエイジングの目的で取り入れています。
ナチュラルホルモンは、本来の女性ホルモンと同じ成分なので、ピルで経験したような思いをすることもありませんし、わたしにとってはベストかなと思っています。
女性の一生はホルモン変動とともにあり
はじめて聞いてびっくりされた話もあるかと思いますが、こんな風に女性の一生はホルモンと切っても切れない密接な関係にあります。そして、髪もまたしかり!
ひとりひとりの体は、本当に千差万別。
ふだんから自分の肌や髪、体調の変化をよく観察して早め早めに対処することが、美と健康を守る第一歩になりますよ。
女性特有のからだとうまく付き合い、元気な髪を育て、毎日気持ちよく笑顔で過ごしたいものですね。
“女性は鉄欠乏のケアもお忘れなく!”
著 田路めぐみ 集英社