【この回の質問に答えてくださった方】
2003年入社以来、美容室専売品のパーマ、ヘアカラー、ヘアケア、スタイリングの製品開発に従事し、ヘアケアブランド「コアミー」の開発も担当。現在は頭皮や毛髪の基礎研究のマネジメントを行っている。
お客さまのイメージ通りの髪色を実現するのが、サロンにおけるプロの技
セトッチ:ホームカラーをするようになってから、その手軽さがうれしいなとは思っているのですが、やはり「この日はばっちりおしゃれしたい!」という予定があるときや、髪型を変えてイメチェンしたいときなどは、サロンでヘアカラーをお願いしたくなります。
サロン専売のヘアカラー製品、ヘアケア製品などを手がけるアリミノさんは、サロンで髪を染めるメリットをよくご存じですよね。
アリミノ 田中:はい。弊社はサロン専売のヘアケア製品だけではなく、サロンの施術で使われるヘアカラーやパーマ液、シャンプーやトリートメントなどの製品を開発、製造、販売しています。
創業の1946年から、美容師さんを通して、皆さんの美をかなえるお手伝いをしています。
セトッチ:1946年? 「戦後すぐ」ということですか?
アリミノ 田中:そうです。創業者が戦後の焼け野原になった東京で、もんぺ姿の女性を見て、「女性たちを元気にしていきたい」「女性たちが輝けるようになったときに、日本は復興したといえるのではないか」という思いで、美容事業に取り組んだと聞いています。
実際、日本で初めて、戦後にパーマ剤を製造し、発売したのが弊社です。
日本にパーマを広めた会社と言ってよいと思います。現在も美容室向けのパーマ液の販売シェア率は日本でトップです。
セトッチ:アリミノさんの歴史=「日本女性を美しく、元気にしてきた歴史」なのですね。
アリミノ 田中:はい。でも、それは「美容師さんの力を通して」です。
美容師さんたちは、本当に勉強熱心な方たちが多いです。
お客さまのニーズやライフスタイルは時代とともにどんどん変化しますし、使用する薬剤もどんどん進化しているので、つねに勉強して情報をアップデートしていかないと、お客さまの要望に応えられません。
ヘアカラーに関して言えば、いかに個々のお客さまの要望に合った色、髪質や状態に合った染め方にするかが美容師さんの腕の見せ所ですね。
セトッチ:確かに。どんな色にしたいか、色見本を見せてくれたりして、かなり時間をかけてカウンセリングしてくれますよね。
アリミノ 田中:そうですね。それに色を決める際、美容師さんは単にお客さまの要望の色を聞いて選んでいるだけではないんです。
セトッチ:と言うと?
アリミノ 田中:その人の髪の質、髪の状態(傷み具合)によって、どう染めるかを考えるのも美容師さんの技術のひとつです。
いちばんわかりやすい例で言えば、毛先と根本では同じ方の髪でも傷み具合が違いますよね。
その場合は、毛先と根本でヘアカラーの種類や濃度を替えることがあります。
セトッチ:そういえば、ヘアカラーの薬剤って店の奥でブレンドして持ってきますが、いくつもカップが用意されていることがありますね。
アリミノ 田中:弊社の場合、ヘアカラーの色数や明るさの違いで200種類くらいあります。
それをお客さまの髪色に合わせて組み合わせるのはもちろんですが、一人のお客さまの髪でも、頭頂部と側頭部、後頭部など、頭の場所によって髪の太さや質感、色みが異なります。
頭のどの部分に塗るかによって、組み合わせを替える場合もあるんですよ。
そこに、さらにその人の髪質によって、どう発色するかも変わってきます。
同じ割合で組み合わせたヘアカラーであっても、人それぞれの髪質で仕上がりの色は異なります。
あえて単品で染めるという場合ももちろんありますし、メーカーが作った色をお客さまの要望に合うようにするにはどう使うのか、美容師さんのセンスでさまざまな微調整をします。料理人の「レシピ」みたいなものでしょうね。
セトッチ:そこまで考えて染めてくれているなんて、ちょっと感動です。
色選びだけでなく、染めている間もたびたびチェックして、放置時間を調整したりしていますよね。
アリミノ 田中:美容師さんは、使用したヘアカラーの種類、組み合わせの割合、放置時間、そのときの髪の状態など、細かいデータをしっかり「カルテ」に記録しています。
そして、次回そのお客さまがいらしたときは、カルテを見て前回の施術から何カ月かを経たお客様の髪色や状態から、次の施術方法や色を考えます。
セトッチ:まるで、かかりつけのクリニックのようですね。
そういえば、以前取材した女優さんで、カラーだけを頼む行きつけのサロンがあるとおっしゃった方がいました。
その担当の美容師さんの色のセンスと仕上がりが自分の要望にぴったりで、他の方ではだめだと言っていました。
それで、ヘアカットをしてもらうサロンとは別に、ヘアカラーは絶対にこのサロン、と決めているそうです。
アリミノ 田中:ご自身のイメージを大切にする女優さんでしたら、そうでしょうね。髪色でかなり印象が変わりますから。
サロンならではの、フルコースケアをしながらヘアカラー
セトッチ:それからサロンだと、トリートメントのオプションがいろいろありますよね。
アリミノ 田中:フルコースでケアするとなると、だいたい、「ヘアカラー前」「ヘアカラー中」「ヘアカラー後」、すべての段階でケア成分を補給しながら染めています。
ヘアカラー前は、毛先などダメージの強い部分を守るケアをします。
カラー中は、ヘアカラー剤にケア成分を配合したり、シャンプー時に集中トリートメントをしたりします。
ヘアカラー後は、ヘアカラー剤の作用でキューティクルが開いていて、髪の成分がいちばん抜け出ていきやすいので、ここはしっかりとしたケアが必要になります。流失した髪の成分を補うよう、栄養を補給していきます。
あとは最後に、オイル、クリームなど保護成分を塗布したら、髪を手で優しく押さえてキューティクルを落ち着かせます。
セトッチ:傷まないようにするケアだけでもそんなに工程があるのですか? 気づかなかったです。
アリミノ 田中:そうですか? 通常美容師さんは、「これから、トリートメントしていきまーす」とか、声かけしてくれると思いますが…。
セトッチ:あ。そういえば、そうかも? カラー中は雑誌に熱中しているか、寝ているかのどちらかなので、ちょっと記憶が…。
アリミノ 田中:そうやってリラックスして過ごせるのも、サロンで染めてもらう魅力のひとつですよね。
雑誌を読んだりのんびりくつろいだりしている間に、美容師さんがプロの技できれいにしてくれる。
気づいたときにはきれいになっているって、最高ですよね。
セトッチ:あ、でも時々、元気があるときは美容師さんの手元をじっくり見ていますよ。
自分で染めるときに生かせるテクニックがあれば、真似したいと思って。
もちろん、簡単に真似できるようなものではないですけどね。
アリミノ 田中:プロのテクニックですからね。
例えば、弊社でセミナーを行っている「ゼロテク®」※というのがあります。
セトッチ:ゼロテク?
アリミノ 田中:リタッチの際、根元ギリギリ(0mm)から塗布し、頭皮に薬剤をつけずカラーを施術するという技術です。
カラー時に頭皮への影響や乾燥による刺激を不安に感じているお客さまが多いということで、弊社が1981年頃から伝え続けています。
具体的には、髪をスライスする(一直線に薄く取り分ける)角度やコームの使い方などです。
見ればわかる、「ゼロテク®」のすごさ!その紹介動画はこちら↓
https://www.arimino.co.jp/forsalon/technic/zerotech-pro/
セトッチ:確かにこれはプロの技!
真似できませんが、こうやって根元ギリギリから染めてもらえたら頭皮への影響が心配な人にとっては本当にうれしいですね。
プロから美容情報をゲットして、美容室を120%活用!
セトッチ:あと私が美容室に行く楽しみとしては、美容師さんからいろいろなヘアケア情報を教えてもらえることですね。白髪がすぐ伸びてきちゃうとか、傷んでいるとか、雨の日は広がってまとまらないとか、スタイリングの仕方がわからないとか、なんでも話してしまいます。
アリミノ 田中:それは美容室の正しい利用法です(笑)。
せっかく、髪のプロである美容師さんと1対1で過ごす時間なので、悩み事があったら、「ここぞ」とばかりになんでも聞いてみてください。喜んで教えてくれると思います。
美容師さんもお客さまの好みなどがよりわかって、コミュニケーションを高めることにもつながります。
セトッチ:とはいえ…「それならこの製品を使ってみたら?」と、美容室で売っているシャンプーやリンスをおすすめされると、お財布がちょっと厳しいときもあります。
ドラッグストアなどで売っている一般のヘアケア商品より値段が高いですものねぇ。
なかなか毎回「では、買います」とはならない!
アリミノ 田中:そういうこともあるかもしれません。でも、美容師さんが髪の悩みを聞いてくれたうえで、おすすめのものを紹介してくれているので、ご自身の悩み、要望に合っているものだと思います。
毎回でなくても、もし機会があったらぜひ使ってみてくださいね。
セトッチ:確かに、「髪が広がってまとまらない」という悩みをお伝えしたところ、美容師さんがおすすめしてくれたシャンプーやリンスを使ったら、すごくしっとりして、広がりにくくなりました。
アリミノ 田中:それはよかったです。せっかく忙しい中、時間を割いて美容室に行くのですから、その時間を何倍も楽しんでくださいね。そして、役立つ情報もゲットしていただければと思います。
セトッチ:雑誌読んだり、昼寝したりしている場合ではないですね! 次回からは、料金以上のお得感を満喫します!
取材・文/瀬戸由美子
※「ゼロテク®」は株式会社アリミノの登録商標です