「ゆりかごから揺り椅子の年代まで、心地よく着用できるもの」を追求し、のべ4万5千人を超える女性の人体計測を続けてきたというワコール人間科学研究所。それらのデータを統計的に分析することで、加齢による体型変化には一定の法則があると解明したのだそう。
「バストのエイジングは〈そげる〉→〈たわむ〉→〈外に流れる〉という順で起こり、ステップが進むにつれてバストは柔らかくなってきます」とは、主任研究員の坂本晶子さん。ああ、50代の私は既に外に流れてます(涙)。
エイジングの順序は同じだけれど、この変化のスピードは人によって異なり、20代で既にステップ2の「バストの下部がたわんで乳房が下向き」になっている人がいる一方、50代でもステップ1の「上胸のボリュームが落ちる」止まりという人もいるのだとか。
「この違いはどうして起こるのか、加齢以外の原因を探るために着目したのはバストの動きです。研究を進めたところ、バストの動きに合わせて皮膚が伸び縮みを繰り返し、ダメージが蓄積されているとわかりました。そのために皮膚のハリが低下し、キメは重力方向に流れてしまうのです」
私たちのバストは睡眠時には横に流れ、スポーツ時には体の動きに合わせて左右や上下に揺れ…と、外部刺激を受け続けています。バストのエイジングが進んで柔らかくなってくればなおさら、重力に抗えなくなってきますよね。
何故バストは柔らかくなってくるの!?
「乳房はとてもシンプルな構造で、その中身は乳腺組織と脂肪です。加齢により乳腺組織が萎縮し、それに伴って脂肪が増えてくるために柔らかくなってくるのです」とは、主に乳腺画像、胸部画像による病気の診断を専門とする国際医療福祉大学三田病院の奥田逸子先生。
そしてそんなバストを支えているクーパー靱帯も加齢によって細く弱くなってくるので、ますます重力に負けてしまう、と奥田先生。
「ではどうしたらいいのか? クーパー靱帯を労り、皮膚を過伸張させないことです。私たちが出来るのは、重力荷重を軽減という努力。正しくブラを着け、バストを包んで引き上げることが大切です」
ワコールが提案するのは、「自分に合ったブラジャーを着ける」のはもちろん、「生活シーンによるダメージに対応できるブラジャーを着ける」こと。上の写真は、ナイトブラ。名前の通り、就寝時に着ける夜用のブラジャーです。
個人的に、ナイトブラは宅配便が来た時や旅行時など、ルームウエアで人前に出ても大丈夫なように着けるもの、と勘違いしていたので、「寝ている時もブラを着けるなんてリラックス出来なそう」と思い込んでいました。でも実は、昼用のブラが立っている時にバストを支える構造になっているのに対し、ナイトブラは寝姿勢の時にバストを支える構造と作りが違うものでした。そのため、着けることで胸をつぶしたり、窮屈に感じることもないわけです。
1日のうちで長い時間を費やす就寝時を有効活用するのは、理にかなっているのかもしれません。少しでも長く、バストの美しいかたちを維持するために、ナイトブラの習慣を始めるのも良さそうですよ。
取材・文/佐藤素美