50代はゴールを見据え、自分の人生を「やりくり」すべき時期。
「お金」はどう遣い、どう遺す?
どれだけ貯める?
私が親として二人の娘に遺そうと決めたものは、少々の結婚資金とカレーのレシピとパールのネックレスをひとつずつ。
そしてお金では買えない、目にみえぬもの。
それは生き方であり人格であり、人生の滋養や力になるもの。
一番は「強靭な精神」を。
そして清廉さ、品格、愛、情、教養など、人としての豊かさにつながる全てのことをできるだけ。
~書籍「十和子道」P96、97、98より~
<担当編集者からみたこの言葉の背景>
いよいよ最終回です。
最終回でご紹介する格言はどれがいいかと悩みましたが、十和子さんも私も50代という人生の折り返し地点に入り、互いにいよいよ〝人生のゴール〟をイメージするようになりました。
そんな今だからこそ言えるものがいいのでは、と思いこれにしました。
何度も書いてきましたが、十和子さんに初めて会った日から20年近い時間が流れようとしています。
この人の欠点は何だろう?
今回この連載を書いている間何度も考えてみました。
なぜかというと欠点についてもこの連載では正直に書きたかったからです。
その方が十和子さんの人間味がより一層増すだろうし、ファンだけではなくメディアで紹介されている『君島十和子』という存在を日頃冷ややかな眼で見ている人たちにも読んでもらえるかもしれないと思ったのです。
でも、
気が利き、努力家。
そして思いやりの持ち主。
そういう十和子さんのことばかりが思い出され、欠点らしき欠点を思いつくこともなく最終回を迎えることになりました。
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知り合ってまだ間もない頃、早朝のスタジオに現れた十和子さんがバッグの中に手を入れ取り出したもの。
それは数個のみかんでした。
「風邪が流行っているから、これでビタミン補給して。
一人暮らしだとなかなかみかんて買わないでしょう?
出がけに玄関で思いついて急いで持ってきたから、袋にも入れずむきだしのままでごめんなさい」
そう言うとメイクルームに駆け込んで、撮影の支度にとりかかった十和子さん。
本当にあたたかい人なのです。
その十和子さんがありったけの愛情を注いできた二人の娘さんに遺したいものは何だろうと思いきいてみた、その答えが冒頭の言葉です。
この言葉ほどひとりの人間としての君島十和子さんを物語るものはないと思っています。
長い間ご愛読いただきましてありがとうございました。
(「最近は娘たちと服を共有することが多くなりました、例えばこのスカート」と十和子さん。そばで取材の様子を見ていた下の娘さんに持ってもらい撮影した。当時はまだ中学生だった彼女ももう大学生)
(「昨日の晩ご飯のメニュー」など日常の本当に細かいことまできいた「十和子道」。「娘と一緒に餃子をつくりました」ときけば、「残っていませんか」と冷蔵庫にあったものを撮影。いつしかスタッフは取材のことを〝現場検証〟と呼ぶようになった。ちなみに「十和子さんの手料理で一番好きなものは何ですか」とご主人にきいたら……「カレーです!すりおろした玉ねぎを入れるんですが、家内のカレーは絶品ですよ」/「十和子道」P94より)
撮影/本多佳子、冨樫実和
*オールカラー、自宅で撮影、オール私服、収録写真400点
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