【お話を伺った方】
美容業界で活躍して50年以上という、業界の重鎮。大手化粧品メーカーで商品開発、マーケティングなどを担当し、多くのヒット作を手がけたのち、独立。現在は美容コンサルタントとして講演やセミナー、商品開発・美容教育アドバイスなど多方面で活躍。化粧品の基礎から製品化までを研究してきた多くの経験をもとに、スキンケアを中心とした美容全般をわかりやすく解説し、正しい美容情報を発信している。
この連載もいよいよ後半戦に。これまで殿堂入り美容液をはじめ、シワ、たるみ、美白系の美容液をご紹介してきましたが、お気に入りは見つかりましたか?
初心者シマコは55歳の肌に「今まで手抜きスキンケアでごめんね」と詫びながら、美容液をなじませる日々。その甲斐あって、先日友人との温泉旅行ではさっそく「肌が若い!」と言われて大喜び。同時にこれまで美容液の力を借りずにいたことの後悔と、使ってこなかった分を今からでも取り戻したいと焦る気持ちも。
そこで最近気になるのが、再生医療系美容液。
これで逆転ホームランをってねらってみる⁉
最先端テクノロジーで細胞を目覚めさせる
シマコ:男爵、こんにちは。毎日暑いですね。肌も疲弊している気がします。
今日は「再生医療系」の美容液について教えてください。
この連載で美容液の歴史や次々に登場する新技術の解説を聞いていたら、再生医療系美容液にも興味が湧いてきました。
「医療」なんて言葉がついていると、初心者にはハードルが高い気もしますが、気軽に使ってもよいのでしょうか?
男爵:もちろんです。化粧品は医薬品とは違い、効能・効果が緩和なもの。治療ではなく「魅力を増す、健やかに保つ」といったことを目的として作られているものですから、気になる美容液はぜひ試してみてください。
再生医療系の化粧品とは「幹細胞化粧品」といわれ、ヒト幹細胞の培養液が配合されているものや動物由来、植物由来などがあります。
最先端の再生医療研究の知見が美容分野に応用され始めていて、新しいジャンルとして注目です。
また、最先端の知見が生かされている成分といえば、ここでぜひ触れておきたいのがペプチド(コラーゲンやエラスチンなど肌に不可欠なタンパク質も仲間)です。
今、ペプチドも研究が進んでいて、ペプチド配合の美容液は増えているんですよ。
一概にペプチドと言っても大きく分けると大、中、小とあって、この小ペプチドが体内で細胞同士のメッセンジャーなのです。
シマコ:ペプチド、気になります。ところで私、気がついたんですけどこのジャンルの美容液って、医薬部外品ではないのですね。もちろん医薬品でもないし。
医療系出身の化粧品なのに、なぜですか?
男爵:シマコさん、よく気づきましたね。
ペプチドや幹細胞培養液は医薬部外品の配合成分として承認が下りていないのです。それでもこうしてさまざまな製品が出るのは、最先端の技術を取り入れた化粧品への関心が高いからです。
再生医療の現場でもっと幹細胞などの活用が定着してくれば美容への応用もますます進んでいきますので、この分野は、医薬部外品でなくても期待していいと思いますよ。
すでに研究が進み、商品化されたおすすめ3点をご紹介します。
〔上の写真左から:ナリス化粧品 セルグレース フォーミュラ、XLUXES(エックスリュークス)プロケア リバーサーセラム、ロート製薬 エピステーム ステムサイエンスオイル〕
◆4種のペプチドで異次元の肌を体験
ナリス化粧品
セルグレース フォーミュラ
50代以上の女性の肌の変化に着目したスキンケアブランド「セルグレース」。硬くなった肌を耕す「I フォーミュラ」を塗布後、「Ⅱ フォーミュラ」で吸い込まれるような潤い肌に。4種のGF(成長促進因子:グロースファクター)様ペプチドで美しさを徹底サポート。
各30ml Ⅰフォーミュラ Ⅱフォーミュラ¥23,100(税込)
¥21,000(税抜)¥23,100(税込)※2本セットで販売
男爵:ナリス化粧品も細胞研究を続けてきた歴史あるメーカーです。
ナリスの美容理論はふきとり化粧水からスタートしており、今でもふきとり化粧水において国内シェアNo.1。
〝老化角質をきっちり取り除いてから、必要な美容成分をしっかり浸透させる〟というナリスの美容理論DNAを受け継いだのが、高機能美容液の「セルグレース フォーミュラ」です。
高価格帯商品ながら、2023年の時点で累計販売本数132万本を超えている実力派。
セルグレース フォーミュラは4種のGFペプチドが配合されていますが、先ほどお話ししたようにペプチドも今、注目の成分です。
ペプチドとはアミノ酸が結合したもの。結合の数、つまり分子の大きさや、アミノ酸の組み合わせによって働きの異なるペプチドになります。
食品分野でも「消化吸収がよくなる」ということでペプチドは注目されていますが、美容分野では「機能性ペプチド」と呼ばれ、素早い浸透効果や水分を引き込む効果、組織再生効果、細胞増殖などさまざまな効果が認められています。
医療分野でも活用されているペプチドは、美容分野でも実績を重ねて今や「ペプチドコスメ」と称され、人気が高まってきているのです。
◆次世代型美容成分で新たなスキンケアの領域へ
XLUXES(エックスリュークス)
プロケア リバーサーセラム
3種のヒト幹細胞培養液※1を配合し、浸透のスピード感と幸福感をプラス。エイジングケア※2のあらゆる可能性をこめたハイブリッド美容液。
10ml ¥17,270(税込)
※1 ヒト脂肪細胞順化培養液エキス、ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム、ヒト幹細胞順化培養液、ヒトサイタイ血幹細胞順化培養液(全て保湿成分)※2 年齢に応じたスキンケア
男爵:「ヒト幹細胞培養液エキス配合」を前面に打ち出した美容液です。
幹細胞の培養液には分泌された多くのGF(成長促進因子:グロースファクター)が含まれており、このGFこそがこれからのスキンケアに大きな期待を寄せられている成分です。
さらにエイジングケアに重要な“サイトカイン”を豊富に含む「ヒト臍帯血幹細胞培養液」や、細胞間の情報伝達物質「ステムセル・エクソソーム」など、次世代型美容成分が配合され、最先端のスキンケアを体験できる美容液です。
再生医療技術の化粧品への応用は韓国が先進国とされていますが、韓国の幹細胞美容に精通しているのが当時XLUXES(エックスリュークス)の商品開発も手がけていたビューティープロデューサー及川尚輔さん。
彼がプロデュースしたという点でも、期待できる製品です。
◆製薬会社の医療技術を詰め込んだ名品
ロート製薬
エピステーム ステムサイエンスオイル
洗顔後、化粧水の前に使う導入美容液オイル。カプセル化技術によってPQQ(整肌保湿成分)を100%オイルベースに配合成功。ごわつきがちな肌を柔らかく整える。数々のベストコスメを受賞した名品美容液。
26ml ¥12,100(税込)
男爵:医療系の化粧品分野で、120年を超える研究を行っているロート製薬は僕が信頼しているメーカーのひとつ。
2006年に「再生美容研究グループ」が設立され、皮膚の幹細胞研究が続けられているのは、さすが製薬会社です。
ロート製薬は老化による皮下組織の減少を防ぐ、「脂肪幹細胞」に着目しており、私も細胞の活性化を促すペプチドを豊富に産生する脂肪幹細胞の可能性に注目しています。
今回選んだ「エピステーム」は最先端の研究理論や知見を注ぎ込まれたロート製薬の最高峰スキンケアブランド。
「ステムサイエンスオイル」は脂肪幹細胞の老化ダメージを一掃するような幹細胞テクノロジーで、発売前から話題になったほどの名品です。
シマコ:なんだか、これまでと違う期待感がありますね!
以前は理解が難しそうだったり、使うのにちょっと勇気がいるような印象を持っていましたが、要するに再生医療の技術を美容液で試すチャンス、ということですね!
これは試さない手はありませんね。男爵、ありがとうございました。
次回は「新顔ブランド」の美容液をたっぷりとご紹介します。
新しいメーカーや開発者ならではのユニーク視点に、興味深い美容液が続々と登場しているようです。
お楽しみに。
取材・文/島田ゆかり イラスト/カケハタリョウ
★コスメ男爵OKABEこと岡部美代治さんの著書『正しく知る・賢く選ぶ 美容成分大全』(ナツメ社)はこちら!