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ツムラの工場見学へ。今、一番処方されている意外な漢方は?

新連載「大人の社会科見学」が始まりました! 記念すべき第一回目は、皆さんを「漢方」の世界へとご案内します。

 

漢方はOurAgeのコラムでも大人気ですし、編集スタッフ達も、クリニック等でよく処方される身近なもの。そんなOurAge世代の健康に欠かせない漢方について、もっと深く学べるツアーに参加してきましたよ。

 

訪れたのは、茨城県にある「ツムラ」の工場。約178,000㎡と東京ドーム4個分ほどの広大な敷地内に、製造棟をはじめ、原料生薬保管庫、品質管理棟、「ツムラ漢方記念館」薬草見本園などがあります。

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「ツムラ漢方記念館」は、漢方・生薬に特化した世界で唯一の記念館。通常は医療関係者に限定公開されている施設とのことですが、今回特別に見学させていただきました。

 

◆まずは漢方の基本の質問をひとつ

「漢方薬」と「生薬」の違いはご存知ですか?

生薬は、主に植物の根や皮、種、ほかに動物や鉱物等を加工したもので、単一の素材で作られたものを指します。それに対し、漢方薬は原則として生薬2種類以上を組み合わせて作られているのです。

 

 

◆日本の漢方には紆余曲折の歴史が…!

さらに、漢方薬には、必ず出典があるのだそう。おなじみの「葛根湯」は、なんと1800年も前の中国の書物「傷寒論(しょうかんろん)」に生薬の配合比、服用の目安などまで書かれています。その写しも、「ツムラ漢方記念館」で見られますよ。

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館内1階には、そんな現代の漢方の基礎とされる古医書がズラリ。写真の「医心方」(写し)は現存する日本最古の医書で、984年にまとめられたものだとか。この当時の日本は、まだ中国の医学をそのまま学んでいたのだそうです。

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さて、5〜6世紀頃に日本に伝わった中国起源の医学は、その後1,400年以上かけて日本で独自の発展をとげます。江戸時代に西洋医学がオランダから入り、これを「蘭方」と呼び、それまで日本で行われてきた中国起源の医学を「漢方」と名付けて区別をするようになったのが名称の由来です。

 

江戸後期には華岡青州(はなおかせいしゅう)が、世界で初めて、麻酔を施し乳がん手術に成功。その麻酔薬は、漢方の知識を利用し開発したものだったそう。

 

 

ところが残念なことに、明治時代に入ると、医師免許は西洋医学のみという制度が定められ、漢方医学は一時衰退してしまいます。

その後、医師や薬剤師の働きかけにより昭和の後半に漢方が再び見直され、保険適用されるように(1967年)。2001年以降、医学部のカリキュラムで、漢方医学教育の必修化が進んだので、漢方に対する医師の見方も変わってきたそうですよ。パチパチ。

 

 

では次は、ツムラで一番処方されている漢方薬について。

◆漢方のエビデンスが確立し、日本の医療になくてはならない存在に

見学しながら、近年、医療現場で多くの漢方薬が活用されているというお話も伺いました。風邪や腰痛、抗がん剤の副作用軽減など、日本では現在、148種類の漢方製剤が保険適用となっています。

 

漢方薬というと、漢方薬局やドラッグストアで買うものと思っている方も多いかもしれませんが、ツムラが生産する漢方製剤は医療機関で処方される医療用がほとんどで、国内シェアは84%もあるのだとか。

 

そして、驚いたことに、ツムラの漢方製剤の中で一番多く処方されているのは…「大建中湯(だいけんちゅうとう)」という薬だということ! 漢方歴20年超の私が、1度も接したことのない薬名…! 「大建中湯」は、外科の開腹手術後の膨満感などを改善し、早期回復に役立つとして、エビデンスも確立されている薬なのだそうです。

 

更年期症状など、漢方は婦人科・内科的な治療に多く使われているものだと思いがちですが、現代では、西洋医学の中でも、もっとも遠いと思われた外科の世界で重宝されているとは…。西洋医学と漢方医学が同時に受けられる今の時代の日本に生きていて、本当によかったとしみじみ思いました。

 

ツムラはほかにも、「抑肝散(よくかんさん)」「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」「六君子湯(りっくんしとう)」など5種類の漢方薬のエビデンスを集約させています。

 

「なんとなく効く」と思われていたものが、はっきりした効果が認められ、どんどん医師に使われるようになっているということなのですね。

 

◆原料となる生薬はどんなもの?

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写真は、ツムラが扱っている医療用漢方製剤と原料生薬の見本116種類がズラリと並んでいるコーナーです。山椒に桂皮、人参など「知ってる知ってる〜」なものも多くあります。

 

ちなみに原料は、80%の生薬が中国で生産されています。現地の子会社で日本と同等の品質チェックを受け、基準をクリアしたものだけが、茨城県にある石岡センターに一旦送られた後、この茨城工場と静岡工場に届けられるそうです。

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それにしても、何と美しいディスプレイなんでしょう! 「グッドデザイン賞」や「インテリアプランニングアワード」なども受賞している施設だというのもうなずけます。

 

 

次のページで、実際の原料の生薬などに触れます。

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「ツムラ漢方記念館」の2階には、広々とした空間に漢方製剤の製造工程、品質管理などを紹介したパネルが並び、そして中央のカウンターには…

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一番ワクワクした、約50種類の原料生薬見本が並べられた体験コーナーです!

 

実際に触ったり、ニオイを嗅いでみたり…。「漢方薬のニオイ」というと、ちょっと苦みがあるような独特な香りというイメージがありますが、嗅ぎ比べてみると、その苦みもそれぞれまったく違うことがわかります。また、ツムラの漢方薬の約90種類には、甘みのある甘草が使われているそう!

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こちらはツムラの医療用漢方製剤。処方されたり、調剤薬局などに並んでいるのを見たことがある人も多いのでは?

 

ここで、豆知識です。パッケージに使われている黄色や青などの色は、下一桁ごとに分けられているのだそう。たとえば、上写真のように下一桁が4番だと黄色、3番だと黄緑に。そして製品番号横のラインは、桁数に合わせて1〜3本などと変えられています。何種類かを処方されている人は、コレを覚えておくと飲み間違え防止に役立ちますね。

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ツムラの創業は1893年。最初の製品は上の写真の看板にある「中将湯」という婦人薬で、これは今でもリニューアル販売されているロングセラー。ほかにも、現在は種類豊富に市販薬がそろっていますね。

 

 

次のページでは、いよいよ薬草見本園に。

◆薬草見本園で生薬の元の姿を確認

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製造棟や保管庫の奥に位置する薬草見本園は、ガーデニング好きには興味津々の植物園です。生薬の原植物や関連植物が少数多種、栽培されているのです。

シャクヤク

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お馴染みの芍薬です。植物名の下には、生薬の原料として根が使われていること、葛根湯や芍薬甘草湯などに使われていることなどの説明も。

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ちなみに、「ツムラ漢方記念館」2階の体験コーナーには、この見本園から採ってきた植物も並べられていました。

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漢方製剤ごとにまとめて植えられているコーナーも。写真は、ツムラの医療用漢方製剤で最も活用されている「大建中湯(だいけんちゅうとう)」に使われる植物群。乾姜(カンキョウ)、山椒(サンショウ)、人参(ニンジン)が植えられていましたよ。

 

 

◆ハイテクでクリーンな製造棟と保管庫

そのほか、製造棟内や原料生薬保管庫なども見学させていただきましたが、安全管理上、撮影はNGでしたので、残念ながら、そのすごさはお見せできないのですが…。

 

漢方というと、何となく伝統を守っている古い世界という印象がありますよね。実際は、生産にロボットが使われていたり、品質管理や製造工程はコンピュータで制御されていたりと、かなりハイテクでクリーン。製造工程によっては3部交代制の24時間フル稼働で、食品会社レベルのスケールで、医薬品レベルのチェックを徹底し、安定した漢方製剤の製造に取り組んでいるのだそうです。

ツムラのロゴマーク変遷

1893年に「津村順天堂」として創業した当初から、漢方の復興を目指し事業を続けてきたというツムラ。日本の漢方の発展に貢献してきてくれたおかげで、今の私たちが多くの恩恵を受けているんだなあ、と実感しました。

 

ツムラが運営するサイト「漢方ビュー」には、漢方に詳しい病院や医師の検索サイトの紹介が掲載されているほか、漢方の基礎知識や生薬辞典など、役立つ情報がたくさん詰まっています。興味を持った人は、そちらもチェックしてみてくださいね!

 

漢方ビュー

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