先週のバレンタインまで、街にはスペシャルなチョコレートが溢れていましたね! イベント仕様じゃなくても、年中食べたいのがチョコレート。原料であるカカオに、ますます注目が集まっています。
チョコレートは糖分たっぷりで太る…。そんなイメージを覆したのが高カカオチョコレートです。チョコレートの原料にはカカオ豆を加工したカカオが配合されていますが、この配合比が70%以上のものが高カカオチョコレート。砂糖の配合量が少なくなっているのも特徴で、カカオ70%台のチョコレートなら砂糖配合比は通常の約1/2、カカオ80%台なら1/3、カカオ90%台なら1/10しか配合されていないとされています。確かに、カカオの割合が高いほど本当に甘くない! 90%台を食べたことがある人はご存知かと思いますが、驚くほど苦いんですよね。
また、カカオは赤ワインよりもポリフェノールを豊富に含んでいたりと、栄養価が高いことからスーパーフードとして認定されているのも大きなポイント。
今回は、そんなカカオをテーマに開催された明治主催の「チョコレートフォーラム」についてのお話です。現在カカオは専門家による研究があらゆる角度から進められ、新しいエビデンスが次々と発表されているのだとか。ポリフェノールだけではないカカオの魅力について、3人の教授が説明してくださいましたよ。
高カカオチョコレートは腸内フローラを改善する効果も!
高カカオチョコレートと腸の関係について説明してくださったのは、帝京大学 理工学部 バイオサイエンス学科の古賀仁一郎先生です。
「生活習慣病やがん、腸疾患、病原菌感染症、便秘などと大きく関わっていると考えられているのが腸内フローラ。最近の研究では、体調不良などとも密接に関わっていることがわかっています」
そんな腸内フローラに良いと言われているのは、食物繊維を多く含む食材をはじめ、ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖や乳酸菌を含むヨーグルトなどの発酵食品。さらに、高カカオチョコレートにも腸内フローラを改善する効果があるのだそうです。
「カカオが腸でどのような菌を増やすのかは最近まで不明のままでした。それが研究の結果、フィーカリバクテリウムという菌が増えていることがあきらかになりました」
フィーカリバクテリウムはビフィズス菌、乳酸菌に続く注目の善玉菌なのだそう。
「酪酸という短鎖脂肪酸を大量に産生するので、健康効果への影響も大きくなります。長寿の人の腸内に多く存在することから、長寿菌とも言われています」
腸内フローラが動くのは朝なので、便秘対策として高カカオチョコレートを朝食前に食べるのもおすすめ、と古賀先生。個人差はあるものの、食べ続けることで効果も持続するそうですよ。
次のページでは、チョコレートと食べ合わせについてのお話です。
アーモンドと一緒に食べることで肌のうるおいもUP!
「今どきは、単体よりも組み合わせによる相乗効果が注目されています」とは、慶應義塾大学 医学部 化学教室の井上浩義先生。8,000種以上の食材を対象に、いかに老化を防ぐかなど食材の持つ効能について日々研究を続けているんですって。
「僕はアーモンドを1日25粒食べることを7年前から推奨しています。これは、現代人の食物繊維不足を解消するための提案なんです。女性の場合1日19gの摂取が理想とされていますが、実際は16g。この不足分の食物繊維3gを補うのがアーモンド25粒です」
とはいえ、毎日アーモンドを25粒とはかなりの量ですよね。そこで、チョコレートと組み合わせるのがイイ、と井上先生。食物繊維の量から考えれば、チョコレートと組み合わせるとアーモンド8粒でOKになるんだとか。
井上先生が実施した「アーモンド入りチョコレート1日8粒」を8週間食べ続けるという臨床試験※では、おなかの調子が良くなって便秘が改善しただだけでなく、肌の調子が良くなった人も多いという結果に。被験者たちの肌の水分量も計測し、角層水分量が増加していることも確認したそうです。※「直近2週間の排便回数が週2回〜4回」「皮膚の乾燥の自覚がある」の条件を満たす20歳〜50歳の女性71名を対象に調査
「さらに、チョコレートもアーモンドも、食物繊維以外にも多くの体に良い成分を有しています。アメリカでも同じような研究が進められ、太り気味、あるいは肥満の人の心疾患リスクが低減するという報告もされています」
アーモンドもチョコレートも糖質を含む食材ですが、肥満の人にも良い効果があるとはちょっと驚きだと思いませんか? 悪玉コレステロール値も下がったと言う報告もあるのだそうです。
「チョコレートとの組み合わせは、アーモンド以外にもまだまだおすすめがあります。例えば酸化ストレス下に置かれているスポーツ後は、カリウムやミネラルが豊富な果実と組み合わせて。エネルギーやタンパク質、ビタミンなどが不足しがちな高齢者には、豆腐との組み合わせもいいですよ」
え? チョコレートと豆腐? 井上先生は「これが意外と美味しいんです」と力説していましたけど、ちょっと味が想像できないですよね。
「私たちは20〜60兆個もの細胞で出来ていて、腸の細胞も2日で1回入れ替わっています。高齢になっても入れ替わり、その原料が必要となります。高カカオチョコレートは、少量でバランスよく栄養が摂れますよ」
次のページでは、高カカオチョコレートのさらなる健康効果についてのお話です。
脳へのよい影響も研究されています
最後に登壇したのは、愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科 客員教授の大澤俊彦先生です。
「世界の長寿者の中には、チョコレートを好んで食べている人が多いことも知られています。こんな背景も、研究が盛んに行われるようになったきっかけになったのかもしれません」
毎年発表されるカカオポリフェノール研究論文の数は増加している、と大澤先生。それだけ、世界中がカカオの健康効果に注目しているんですね。研究の対象領域は多岐に渡り、血管や筋肉、心臓、歯などとの関係も報告されているそうです。
現在は欧米諸国を中心に数多くの研究が進められているものの、その消費量は日本と比べるとかなり多く、また臨床試験で摂取するチョコレートの量も多いのだそう。そこで、大澤先生は日本人での健康効果を実証するために大規模研究を実施※。2014年に生活習慣病罹患率県内ワースト1の愛知県蒲群市民を中心にに高カカオチョコレートを4週間毎日25g摂取してもらい、血圧や血液成分など身体の状態の変化を検証したんですって。※45〜69歳の男女347人が対象。1日に摂取したポリフェノールは約650mg
「この調査により、活性酸素による体内での酸化反応(老化)や炎症が抑制できることが確認※1できました。さらに、脳細胞の増加に必要とされるBDNFの濃度が有意に上昇していることも確認出来たのです」※1 酸化の程度が高い1/4の被験者
BDNFとは脳由来神経栄養因子と呼ばれるタンパク質の一種で、記憶を司る海馬に高濃度で存在しているそう。うつ病やアルツハイマー型認知症、また65歳以上の高齢者は加齢とともに減少してしまうことがわかっているんですって。何だか難しい名前ですが、カカオはスーパーフードかもしれませんね。
さらに、2017年には国立がんセンターから「チョコレートを週平均37.5g摂取している女性は脳卒中リスクが低下する」という調査結果※も発表されているのだとか。※44〜76歳の男性38,182名、女性46,415名を対象に調査
おすすめは、高カカオチョコレートを毎日1日25g食べること。ちょっとの美味しいご褒美を、健康や美容に役立てたいものですね。