セクハラ告発で大揺れに揺れるハリウッド。今年のゴールデン・グローブ賞の会場は黒いドレスで埋まっていました。プロテスト(抗議)のために黒を着ましょう、と呼びかけた#TIME’S UP (#タイムズアップ。セクハラ、パワハラ、女性差別に立ち向かう女性グループ)はエンターテインメント業界で活躍する女性たち300人が発起人となってスタートしたものです。
この動きに連名している女優はナタリー・ポートマン、エマ・ストーン、エマ・ワトソン、ニコール・キッドマン、リース・ウィザスプーンなど。業界でパワフルなポジションにいる人たちが目立ちます。
サポートを表明する男性たちは、黒いタキシードに黒いワイシャツ、黒いネクタイと、黒装束でソリダリティ(結束)を見せてました。どこを見ても黒。何か暗い雰囲気を想像しますが、実はほとんどが黒いドレスだということを忘れるほどきらびやかで華やかでした。シャネル、ディオール、サンローラン、プラダ、ドルチェ&ガバー ナ、ベルサーチ、ジバンシーと、“黒いドレス”というものの、幅の広さ にびっくりしたくらいです。
ニコール・キッドマンはジバンシーの、黒いレースがとてもエレガントなドレスでレッド・カーペットを飾りました。リース・ウィザースプーンと共同プロデュースしたテレビシリーズ“Big Little Lies”でTVドラマシリーズ部門の作品賞、主演女優賞ももらい、何をやっても上手くいった2017年。彼女のビッグ・ファイブ(50歳)を祝った年でもありました。
彼女に最初のインタビューをしたのは、トム・クルーズと共演し、恋に落ちた『デイズ・オブ・サンダー』 (1990年)です。オーストラリアで作った『デッド・カーム』(1988年) で注目され、その頃すでにスーパースターだったトム・クルーズの相手役に選ばれました。
幸運だけではなく、実力と非の打ち所がないルックスという、完全なスターパッケージを備えていたからでしょう。実にセンセーショナルなハリウッドデビューでした。
何回もインタビューしましたが、過去20年以上、私が持つ“正直な人”の印象は裏切られたことがありません。彼女の正直さに“大感動”した事が2回ありました。
ひとつは、トム・クルーズが一方的に離婚訴訟をスタートさせた時です。『ムーラン・ルージュ』(2001年)の公開時でした。渦中の人だったニコールが部屋に入って来た時に、彼女への気遣いと、離婚状況を語る本人の言葉がほしいと思う記者たちの、2つの空気が交錯して、緊張感を生み出してました。
彼女は部屋に入って来るなりこう言いました。
「インタビューに来てくれてありがとう。みなさんがジャーナリストとして、私とトムの『離婚の真実』を知りたいと思うのは当然の事です。私もできれば答えたいのですが、訴訟中ということで、詳細を話すことはできません。
ただ、ひとつだけはっきり言えるのは、いろいろ書かれているトムとの10年間の結婚は、本物の結婚で(見せかけの結婚で仮面夫婦と言う噂が絶えなかった)幸せな結婚でした。こんな事になって一番ショックを受けているのは実は私自身なんです」
そう、涙を流しながら話してくれた時です。
もうひとつの“感動シーン“は、彼女の顔があからさまに整形、あるいはボトックス注入で不思議に変わってしまった時です。
噂の真相は?と聞かれたとき「失礼な」とムカついた表情をして答えないか、怒ってしまう可能性もあったのですが、彼女は
「マズいことをしてしまったって思ってるの。まわりの人に自然な表情がなくなってしまうようなことをするべきじゃないって言われたわ。自分の顔を画面で見ると確かに顔が突っ張った感じで、自然な表情がなくなってるの。人生の多くのミステークのひとつだったわ」
と、にこやかに平静に答えてくれました。
スタイル抜群で可愛らしさのある美人。抜けるような白い肌が50歳の今も変わってません。しっかり自分の意見を持ちながら柔軟さを失わないニコール・キッドマンは、人生は一つの方向にこだわったり、過去にしがみついていては進展がない、ということを私たちに見せながら、素敵に変わり続けてます。