こんにちは!
「元気が出るお金の相談所」所長の安田まゆみです。
今日は相続トラブルについてお話ししたいと思います。
「うちの親は大した財産はないから大丈夫」
と思っている方にこそ読んでいただきたい回なんですよ。
(なぜかというと1億円以上の資産があるお宅は相続税のことを考慮し、事前に相続について話し合いが済んでいることが多いからです)
*********************
ある日、82歳になるお姑さんを連れたJ子さんが相談に来られました。
J子さんは54歳の主婦。
ご相談内容を伺うと、言いにくそうに
「夫と義弟が遺産でもめてしまって……
お義母さんも私もホトホト困っているんです」
きいてみると2年前J子さんの夫の父親が大腸ガンに罹っていることが判明。
病院で手術を受けた後、義父自身が自宅に戻りたいと強く希望したため家族は在宅医療を選択しました。
比較的近所に暮らしていたJ子さん夫婦が通いで義父の看護にあたったそうです。
その義父を8か月前に看取り、今も一人暮らしをする義母の世話をしに相変わらず夫の実家へ通っているというJ子さん。
「夫は長男で弟がいますが、義父がガンになってから義父母の世話はずっと私たち夫婦が担ってきました。
義弟は転勤が多く、たいがいは遠方に暮らしているため、比較的近所に住んでいる私たち夫婦が面倒をみるのは当然の流れだったんです」
とくに義父が亡くなる直前の2か月間はJ子さんがパートを辞めて夫の実家に泊まりこんで看病にあたりました。
母親が不在の間、留守を預かるJ子さんの娘たちは率先して家事を分担してくれ、まさに一家をあげて乗り切ったそうです。
義父を看取った後遺された資産は、預貯金300万円と郊外にある築50年の自宅。
兄弟の間で家をどうするか、300万円をどうするかという話し合いが始まりました。
長男である夫は
「家も現金も母さんが相続したほうがいい。
だけど妻のJ子は看護のためにパートを辞め、その間我が家の収入は減ったから、その分だけは遺産を分けて欲しい」
と言いました。
長男夫婦に感謝していた姑はそれに賛成したのですが、義弟はその提案を拒否。
さぁ、相続、いえ今や争族といわれる事態の発生です。
義弟の言い分は
「ずっと黙っていたけれど、兄貴が家を買うときにおやじが援助したのを知ってるんだ。
あのとき援助してもらったのに面倒見た分も欲しいなんて虫がよすぎるよ。
俺は今でも賃貸暮らしなんだ、
あのとき兄貴が援助してもらった金額程度は遺産を分けて欲しい。
それが平等ってものだろ」
……それが平等ってものだろ
それが平等ってもの
それが平等ッ!!
平等……この言葉こそがまさに問題を招くのです。
財産の分け方について親がノープランで他界した場合、子どもたちは「平等」に分けるのが当たり前だと考えます。
ところがもめる兄弟姉妹の場合、この「平等」が曲者。
相続においては
「平等に分ける」=遺された財産を等しく分ける
ということばかりではないからです。
J子さんに連れられてきた82歳のお姑さんは、いかに二人の息子が遺産相続でもめているのかを話しながら
「うちの子たちに限って、相続でもめるとは思わなかったのに……」
と涙を流していました。
お姑さんはこうも言っていました。
「お父さんも子供たちがもめるとは思っていなかったのよ。
そもそもお父さんは私に全部遺すつもりだったの。
あらためて言わなくても遺言を書かなくても、子どもたちはきっとそうしてくれると思っていたからね」
と。
でもこれから学費がかかる娘たちを持つ長男と、そろそろ賃貸暮らしから抜け出して家を購入したいと思っていた次男は、現金が欲しかったのです。
そばでお姑さんの嘆きや義弟との諍いで始終不機嫌な夫の様子を見続けていたJ子さん。
「夫のいうように確かにパートを辞めて減った収入分だけでももらえればもちろん私だって助かりますが、内心義弟の言い分にも一理あるなぁって思っているんです。
もちろん夫にそんなこと言ったらとても怒るでしょうから、言ってません。
ただもうすぐ義父さんの一周忌だってあるんだし、このままもめ続けているのもどうかと思って……
それに実は……私自身、だんだんこのことで疲れてきてしまったんです」
解決策が見えない中、これ以上この状態が続くのは辛いと意を決してJ子さんは私のところに相談にみえたのです。
ここでクイズです。
みなさん、相続でもめる家ってどのくらいの資産をお持ちの家庭だと思われますか?
★驚きの結果は次ページに!
実は相続で家族が争い、調停を起こしたご家庭の75%は遺された財産(不動産も含んで)が5000万円以下のご家庭なんですよ。
参考までわかりやすい資料がありましたのでご紹介します↓
*裁判所がとっている司法統計によると相続の遺産分割をめぐって調停を起こした人のうち、和解ができた人は、7485人(平成28年度)。
その内、争った遺産の額が1000万円~5000万円の間の人は約42%。
1000万円以下の人は33%です。
一目でわかるようグラフや表にすると↓
(H28年度司法統計年報の資料をもとに編集部でグラフを作成)
つまり亡くなった方の遺産が1000万円から5000万円の間というのは
●時価がおよそ2000~3000万円の戸建ての持ち家がある
●貯金は1000万円くらい
ということです。
「持ち家があって、現金がちょっとある」くらいの家庭が、親亡き後に家族でもめていることが多いのです。
このような資産状況の家庭は、あなたの周りにもたくさんあるのでは?
最初にお話ししましたが
遺産争いでもめて調停まで起こすのは、何億円も資産がある大金持ちが多いというわけではないのです。
裁判所に駆け込み調停を起こすまでいかなくても、親兄弟姉妹で遺産を巡ってもめる「争族」はその数倍はあるのではないかと言われており、私もそれを実感しています。
ではとくにお金持ちでもない普通の家庭が、なぜ相続でもめたりするのでしょうか?
その答えは……
★普通の家庭ほど遺産でもめるその理由とは? 気になる答えは次ページに!
とくにお金持ちでもない普通の家庭が相続でもめる理由。
そのひとつがズバリ
準備不足です。
な~んだそんなこと、と思ったあなた。
もしかしたら争族予備軍かもしれませんよ。
最初のところで触れましたが、1億円以上資産がある家庭では相続時に相続税を払わねばならないとの認識から、あらかじめ納税対策(相続)を事前に話し合っていることが多いのです。
それに比べると相続税の心配がない家庭では、相続についてあらかじめ親子間で話し合う機会が少ないように思います。
「うちには財産がないから、もめようがないよ。
俺が死んだあとはかみさんがそのまま自宅に住み、少ないけど残っているお金で老後を暮らしてほしいと思ってるんだ。
子供たちだって、言わなくてもわかっているはずだよ。
母親の老後資金を奪おうとするそんな子供はうちにはいない」
と親の側は思っていたりするのです。
う~ん。
子供たちを信じたい気持ちはわかりますが、ところが現実はそうはいかないんですよ……。
特に親の側から自分亡き後の遺産の分け方について、あらかじめ希望や考えを伝えるという「相続準備」があるのとないのでは、亡くなった後のもめ方の度合が俄然違ってきます。
たとえ財産が少なくても親が生前子供たちにその処理についてきちんと希望や考えを告げている場合は、子供たちは親の意向を尊重するケースが多いのです。
「看護してくれた長男夫婦には苦労を掛けた分、少し多めに残したい。次男も承知しておいてほしい」
あるいは
「妻に全部遺してやりたい、安心して穏やかな老後を過ごしてもらいたい」
など、J子さんの義父も意思表示をしておけば、こじれることはなかったのではないでしょうか。
または潤沢な預貯金があれば姑が老人ホームに入って100歳生きたとしても十分な金額を確保し、残りを夫と義弟で分けることも可能であったと思います。
でもJ子さんの義父が遺した財産は預貯金が約300万円と自宅でした。
もし夫と義弟が「平等に」と100万円ずつ遺産をもらったら、姑にわたる現金は100万円だけ。
一方姑の収入は、自身の年金と遺族年金で合計月に12万円ほど。
自宅に住み続けるとしても不安な額です。
そのため息子たちが争っているのを目の当たりにしても「だったら現金をみんなで平等に分けよう」とお姑さんは言えなかったのです。
J子さんとお姑さんの話をきいた私は「兄弟の間に入って分割協議そのものに携わることは立場上できませんが、お姑さんの本音を聞いて今後とる対策の選択肢を増やすお手伝いならできると思います」
とお引き受けしました。
そしてこのあとこの〝争族〟問題は一気に解決することになります。
★一体どうやって? 気になる続きは次回をお読みください!
●明るく気さくな人柄の安田さんが所長の「元気が出るお金の相談所」↓