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松坂桃李さんが「濡れ場」で表現したかったこと(インタビュー/前編)

ここ1、2年の作品だけでも、29歳で童貞の小学校教師から、朝ドラヒロインの夫、パディントンベア(日本語吹替版の声)に殺人鬼……と、演じる役柄の振り幅が広すぎる俳優・松坂桃李さん。

4月6日に公開されるR-18指定の映画『娼年』(しょうねん)では、全身をさらして、さらに新しい世界の扉を開けた。

 

撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/AZUMA(M-rep by MONDO-artist) スタイリスト/伊藤省吾(sitor) 取材・文/岡本麻佑

 

松坂桃李さん

Profile

まつざか・とおり●1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年に『侍戦隊シンケンジャー』でデビュー。以来、映画、ドラマ、舞台、CMなど多方面で活躍中。2016年の舞台に続き、4月6日公開の映画『娼年』ではセンセーショナルな“娼夫”役を体当たりで演じている。役所広司とタッグを組んだ映画『孤狼の血』は5月12日公開、6月29日~7月29日には愛知・兵庫・東京にて主演舞台『マクガワン・トリロジー』が控えている。

 

この作品と出逢えて、ラッキーでした!

松坂桃李が、話題作に主演している。映画のタイトルは『娼年』。原作は2001年に石田衣良氏が発表した小説で、発表直後から映画化が待望されていたものの、内容が過激なことから、なかなか実現しなかったという。

 

「この作品に出逢えたこと、すごくラッキーだと思っています」

インタビューでまず彼は、そう話し始めた。

 

「今まで何度も映像化の企画が持ち上がったのに、結局、実現しなかった。だから今回、このタイミングで僕にまわってきたのは、ラッキーだと思います。もちろんラブシーンが多いのは知っていましたけど、お話をいただいたとき、僕に躊躇はまったくありませんでした。2年前にまず舞台をやり、その舞台が終わった時点で、今度は映画にしようと、動き出したんです」

 

松坂が演じるリョウという青年は女性専用コールクラブに所属し、依頼に応じて女性の相手を務めるのが仕事だ。”女なんてつまらない””SEXなんてくだらない”と口にしていた冷めた青年が、SEXを生業とすることで女性の抱える悩みを知り、女性が秘める闇に迷い込み、女性の欲望に奉仕することで、自らもまた、解放されていく。ひとりの青年の、成長を描く物語でもある。官能的な映像が続くが、生々しさはない。

 

「そこは監督も気を付けたみたいです。女性に見て欲しいので、過剰になりすぎないように。どこかフランス映画のような、そんな仕上がりになっていると思います」

 

撮影は昨年の夏、約1ヶ月かけて行われた。本作は全部で119分、ほとんどのシーンに彼は登場する。その撮影現場は、かなり過酷なものだったらしい。

 

「かなり、追い詰められました。僕が今までやってきた作品とはまったく毛色も違いますし、女性とのシーンでは、言葉ではなく身体や仕草でコミュニケーションを取り、それを表現しなければならない。しかも僕、自分のテンションを下げたくなかったので、自宅に戻らず、連日渋谷にあるビジネスホテルに泊まっていたんです。自宅に戻ると、そこにはマンガがありDVDがありゲームがあって、素の自分に戻ってしまうから。スイッチオフにしてしまうのが怖かったんです。微妙なオンのまま部屋に戻り、オンのまま風呂に入り、明日の撮影のことを考えながらベッドに入る、という毎日でした。お酒は一滴も飲んでいません。正直、思いましたよ、なにか事件が起こって、撮影が中止になればいい。インフルエンザにかからないかなって (笑)」

物語の始まりでは、リョウはふつうの大学生。それが娼夫という仕事を経験して、次第に研ぎ澄まされていく。ふつうなら衣装でその変化を表現できるけれど、服を脱ぎ捨てるシーンが続く本作では、それができない。身体作りも大変だったのでは?

 

「それが、大丈夫だったんです。僕はもともとインドア派なので、ジムで身体を作るとか、あまり好きじゃない(笑)。リョウはふつうの大学生役なので、ふつうの身体で始まり、途中からだんだん絞っていく予定でした。でも連日、朝から26時くらいまで撮影するという過激スケジュールだったので、身体が勝手に痩せてくれました(笑)。撮影期間中、体力だけでなくメンタルも、消耗しましたね。だから撮影がすべて終わった瞬間は、頭の中が真っ白。『あしたのジョー』の最終回、ラストシーンのジョーみたいな。まさに燃え尽きた、という感じでした」

 

(自らの女性観を語った「インタビュー後編」はコチラ

 

『娼年』

虚ろな日々を送る大学生・森中領(もりなかりょう/松坂桃李)は、女性専用コールクラブのオーナー・御堂静香(みどうしずか/真飛聖)の導きで、”娼夫”の仕事にのめり込んでいく……。

4月6日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

配給:ファントム・フィルム

(c)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

監督・脚本:三浦大輔

公式サイト:http://shonen-movie.com/

 

原作の『娼年』は、人気シリーズに!

『娼年』(しょうねん)  2001年の発表以来、版を重ねるベストセラー。石田衣良さん初の直木賞候補作。(集英社文庫 400円+税)

 

 

『逝年』(せいねん)  リョウが娼夫になって1年。御堂静香はエイズを発症し……。2008年発行。(集英社文庫 430円+税)

『爽年』(そうねん)  シリーズ最終章。7年の時を経て、リョウが下した決断とは?(集英社 1400円+税 /2018年4月5日発売)

 

【著者略歴】
いしだ・いら●1960年生まれ、東京都出身。成蹊大学卒業後、コピーライターなどを経て1997年『池袋ウエストゲートパーク』でオール読物推理小説新人賞を受賞し、作家デビュー。2001年『娼年』、2002年『骨音』が連続して直木賞候補作となり、2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞を受賞。『眠れぬ真珠』『北斗 ある殺人者の回心』『愛がいない部屋』など著書多数。公式HP http://ishidaira.com/

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