アラフィフの今こそ !
自分で自分をアップデート
著者interview
バブル世代は目利き。
目指すは誰もが認める素敵なおばさま!
スタイリストとして流行の最先端で活躍してきた地曳さん。センスのよさと読者にも取り入れやすい提案には定評があり、『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)、『50歳、おしゃれ元年。』(集英社)など、大人の女性のためのおしゃれ指南書は、ロングセラーに。
地曳いく子さん
Ikuko Jibiki
それほどアラフィフ世代はおしゃれに自信がないということ?
「ある意味、仕方ないんです。時代の変化が早くて、ただでさえお手本が少ないのに、そのうえ長生きしなくちゃならない。だから、どうしても若く見えることに執着してしまいがち」
問題は、見た目は若くできても中身は若返らない点、と鋭い指摘。
「経験は消せないですから。いくら若づくりしてもカラオケで歌ったら、一発でばれますよ。ニュースで話題になった自称38歳エリコさん(※)は、タイに行ったまではよかったけど、玉手箱が開いたとき、ギャップがあらわに。それがイタさの原因」
※2017年、入国管理法違反の疑いでタイで逮捕された62歳の容疑者
とはいえ、老けて見えるよりやはり若々しく見られたいのが人情。
「若く見られたいなら"2割引きの法則"で。自分の実年齢から2割引いた年齢が適正な若見え年齢です」
50歳なら40歳を目安に、それ以上サバを読まないことだとか。
「アラフィフ世代は、親の介護や更年期症状など、おしゃれにかける余裕がないのが実情。そこで陥りやすいのが、自分がいちばんきれいだったときの流行スタイルに固執してしまうこと。これをやってしまうと、単に古い昔の人になってしまい、逆効果です」
次ページに続きます。
自称38歳エリコさんの対極が、フランスのマクロン大統領夫人のブリジットさん。ありのままをさらす強さが若々しく、まさに素敵なおばさまのお手本。とはいえ、年配者をリスペクトする文化がある欧米に比べ、日本では若くかわいい文化が幅を利かせています。
「私たちでおばさま文化を作ればいいんです。そのとき、力を発揮するのがバブル時代一流品を知った経験"バブル・フォース"です」
バブル時代に多くの人が一流ブランドを身につけた経験が、私たちを上質を見極める目、いわゆる目利きにしてくれたのだそう。
「そのおかげで、同じユニクロのカシミアでも安っぽくならない色を選んで高級ブランドと組み合わせ、上質感を演出できる。そういうコーディネートは若い人たちには逆立ちしたってできません」
むやみに流行を追いかけたり、若くきれいだった頃の自分に固執せずに、適宜アップデートしながら、自分が好きなものを心地よく着ることが許される年代、それがアラフィフ、と地曳さん。
「バブル時代を経験したことで得たものを、上手に使う。それが若い世代に素敵だと思われる秘訣」
何をどう着るかは自由。大切なのは自分がどうしたいか。ブリジットさんになりたいのか、自称38歳エリコさんか。
「私だったら、SHIGETAの香りがほんのりする小ぎれいなおばさまになって、そうでないおばさまより、レストランでいいテーブルに案内してもらえるほうがいいなと思います(笑)。フレッシュなぶどうジュースもいいけれど、長い年月をかけて熟成したワインにはかないません。私たちが目指すは、熟成ワイン。間違ってもフレッシュジュースは目指さないように」
はい! よくわかりました、地曳さん。
『脱「若見え」の呪い “素敵なおばさま„のススメ』
地曳いく子 著/マガジンハウス
1,200円
素敵なマダムとイタいオバサンの差を、仏マクロン大統領夫人ブリジットさんと自称38歳エリコさんを例に、鮮やかに一刀両断。鋭い指摘は、的を射ているだけに痛快。バブル時代に培った上質を見極める目は強みという言葉は、自信を失いがちなアラフィフ女性へのエール。
撮影/矢部ひとみ〈地曳さん〉 久々江 満〈本〉 取材・原文/佐野美穂