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西島秀俊さんが涙した父親の苦悩(インタビュー/前編)

アクションから時代劇、ときにユーモラスな芝居まで、自由自在。

映画にドラマに、近年ますます存在感を増している西島秀俊さん。

この秋1番の注目映画『人魚の眠る家』では苦悩する父親役を演じている。

誰もが認める演技派であり、役作りに熱心な彼が、この役に賭ける思いとは?

 

撮影/武重到 ヘア&メイク/亀田雅(The VOICE) スタイリスト/TAKAFUMI KAWASAKI (MILD) 取材・文/岡本麻佑

西島秀俊さん

Profile

にしじまひでとし●1971年3月29日、東京都生まれ。1993年のドラマ『あすなろ白書』で注目を集める。『ニンゲン合格』(99年)、『Dolls(ドールズ)』(02年)、『劇場版MOZU』(15)など多数の映画に出演。2018年の秋は『散り椿』、『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』、そしてこの『人魚の眠る家』と、出演作が目白押し。主演映画『空母いぶき』は2019年公開予定。

 

 

子を持つ父親として、

この役には覚悟が必要でした。

 

愛する子どもが事故に遭い、回復の見込みもなく、脳死状態になったら・・・・。

 

話題作『人魚の眠る家』で、西島秀俊さんは苦悩する父親を演じている。篠原涼子さん演じる母・薫子が無条件に献身的な愛情を娘に注ぐその一方で、西島さん演じる父・和昌は当初、何もできずに、とまどっているようにも見える。

 

「父親の愛と母親の愛は、どこか違うのでしょうね。僕の演じる和昌は、社会から家族を守るということに意識が向いている。社会性が捨てきれないんです。でも、途中からこの作品はすごい展開になっていて、誰も予想がつかない方向に転がり出します。

クランクインする前は僕も、この父親はクールで理性的で、でも家族の一大事に直面して愛情を取り戻す、そんな物語なのかと思っていたのですが、全然違いました。篠原涼子さんの熱演に引っ張られた、というのもありますし、自分がイメージしていた演技では間に合わない。もっと自分の内側の、奥の方を掘り起こすような、自分で自分の中に飛びこむような、そんな熱量を持たないと演じきれない役でした」

 

和昌はIT機器メーカーの2代目社長。最先端の科学技術が身近にある。娘の生命維持のためにできることはないのか? そう考えた和昌は・・・・・。

「家族の誰かが病気になって、という話だけではないんです。家族の話はこの映画の前半戦にすぎなくて、後半はあくまでもミステリー。予想外の展開を経て、深い感動に至る。見たこともないエンタテイメントだと思います。怒濤の展開と、その先に見つける真実、というところを、見て欲しいですね」

 

今まで幅広くいろいろな役を演じてきた西島さんだけど、こんなにがっぷりと父親役に取り組む彼を見たのは、初めてのような気がする。

実生活では2014年に結婚し、現在ふたりの男の子の父親。もちろん俳優にとって実生活と演技は別物なのだけど。

 

「台本を読んでいるだけで、泣けてきて仕方ありませんでした。この物語で家族が直面するのは想像もしたくないような、非常に厳しい現実です。

僕自身、ふたりの子どもの父親ですから、参加することに覚悟がいりましたし、ワンシーン撮り終えるたびに、考えました。人の命は、魂は、どこにあるのか。何をもって人は”生きている”と言えるのか。

演じるにあたっては、自分がふつうに、人として生きてきたことが役に反映されて、演技としてなにかしら厚みが生まれたのだとしたら、それはすごく、うれしいことですね」

 

撮影中、こんな場面もあった。

 

「篠原さんが夫に向かって、『あなたは泥にまみれない!』って怒るところがあるんです。そのときは僕を含めた男性スタッフがみんな、ちょっとしょんぼりしました。自分が怒られたわけでもないのに、下を向いてしまった。男には痛い言葉なのかもしれませんね(笑)」

 

(自身の肉体改造について語った、インタビュー後編はコチラ

 

『人魚の眠る家』

播磨和昌(西島秀俊)、薫子(篠原涼子)夫婦は2児をもうけたものの、離婚寸前。ある日、娘の瑞穂がプールで溺れ、意識不明となる。回復の見込みのないまま眠り続ける瑞穂を前に、夫婦はある決断を下すのだが・・・・。

11月16日(金)より、全国ロードショー。

配給:松竹

監督:堤幸彦 原作:東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)

出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子ほか。

(c) 2018 「人魚の眠る家」 製作委員会

公式サイト:ningyo-movie.jp

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