50代は、女性の体のターニングポイント!
「生涯でティースプーン1杯分」 ! しか分泌されない女性ホルモン。
女性の健康をキープするために、エンジンオイルのような働きをしているのだそう。
だから、足りなくなると、体のあちこちで不調が起きてしまうのです。
更年期を迎え、卵巣の働きが衰えて排卵しなくなると、脳下垂体が「休んでいちゃダメーー! 早く排卵してーー!」と、卵巣に向かってガンガン信号を送ります。でも、卵巣は「もう、これ以上はムリーー」とパニック状態に。
そうこうするうちに自律神経が乱れ、大汗をかくホットフラッシュをはじめ、さまざまな不調が…。
これが更年期のメカニズムです。
そもそも、“卵巣の働きが衰えて、女性ホルモンが減少する”というのは、どういうことなのでしょうか?
『50歳からの婦人科 こころとからだのセルフケア』を監修した松峯寿美先生によれば、
「女性は生まれたときに、なんと30万個もの“卵子のもと”を持っているのだとか。でも、閉経後には、それが300個以下に激減します。毎月1粒ずつ排卵するとはいえ、50歳になったときには生まれたときの1000分の1まで減ってしまうのですから、女性ホルモンの分泌量も激減するわけですね」
「『更年期だから仕方がない』『もう閉経しちゃったし…』と、不快な症状を我慢している人も少なくありません。
でも、ティースプーン1杯分の女性ホルモンを使い切ったあとも、ホルモン補充療法(HRT)や漢方、植物療法などで不調をやわらげる手立てがあります!
「ホルモン補充療法をこわがる人も多いけれど、皮膚から吸収する塗り薬や、貼り薬、腟剤は濃度が低め。副作用の心配はほとんどありません。一生続けなければいけない治療ではないので、こわがらなくても大丈夫。体調が戻れば減薬できるし、体調がよくなって使用するのを忘れるくらいなら、やめてしまっても構わないんです。『困ったときにホルモン補充の助けを借りよう』と、お守り的に考えればいいと思いますよ」と、松峯先生。
この本では、加齢とともにゆるゆるに緩んでいく“骨盤底筋”や“腟まわり”の変化が、20代~60代以降まで年代別にイラストでわかりやすく解説されているので、自覚はない部分ですが、自分がどのあたりの状態なのか予測できます。
「骨盤底筋は、20代の頃には7㎝程度の分厚いプレート状の筋肉なのですが、それが60代以降には、半分くらいの薄さになってしまうって、知っていますか? でも、40~50代から対策を始めれば、骨盤底筋の衰えを食い止めることができます。筋肉は年齢を問わず、鍛えることができるからです!」
そして、「40~50代の女性におすすめしたいのは、骨盤底筋の3つの穴(尿道口・腟口・肛門)をキュッと引き締めること」と、松峯先生。
これこそ、尿もれや骨盤臓器脱(子宮脱など)を予防する“骨盤底筋トレーニング”なのです。
骨盤底筋トレーニングって〝3つの穴″をトレーニングすることだった!? さてどうやって?
次ページで具体的に解説します!
骨盤底筋の3つの穴=尿道口・腟口・肛門は、ふたつのトレーニングで鍛えられるんです!
まずは、いすに座って背中をまっすぐに。両ひざ&かかとをピタッとくっつけ、フーッと息を吐きながら、キュッと締めてみます。確かに体の前側、尿道口と腟口がキュッと締まるのがわかります!
次に、両脚を開脚したまま、フーっと息を吐きながら、キュッ。肛門側が締まるのを実感できます!
椅子に座ってできるから、簡単ですよね!
軽い尿もれなら、このトレーニングを1セット5回、1週間続けるだけで改善できるそうなので、ぜひお試しを!
「50歳以降は、いかにして健康を守り、自分なりのきれいを維持していくかがテーマ。子宮脱をはじめとしたさまざまなトラブルを予防するためにも、“閉経後の15年間(50~65歳)は、改めて体の土台作りをする必要がある”と知ってほしいです。残念ながら医学の力をもっても、老化を止めたり、30~40代の体に若返ることはできません。でも、自分の体をいつくしんでケアすることで、老化のスピードを遅らせることは可能ですよ。目指すは50代の体の若さをキープすること! 人生最期のときまで、QOL(生活の質)を維持することを目指し、いつまでもイキイキと、きれいなあなたでいてください!」(松峯先生)
松峯寿美先生(プロフィール)
東京女子医科大学卒業。東峯婦人クリニック名誉院長。医学博士。日本産婦人科学会専門医。女性専門外来の先駆けとして、妊娠・出産、更年期、老年期まで、婦人科系QOLを保つ医療を実践。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術を行う。「女性の一生を支える存在でありたい。心も体も美しく、イキイキと過ごせるように」との思いで、日々診療にあたっている。
文/大石久恵