「『體』という漢字、
何と読むかご存知ですか?」
「骨」+「豊」・・・? 『はも』は鱧だからちょっと違いますよね…。
女子栄養大学 栄養生理学研究室の上西一弘先生のお話は、こんなクイズから始まりました。これは、一文字で『からだ』と読みます。
「では、骨が豊かではない状態は?というと、骨粗鬆症なんですね」
実はこの日は
骨の健康
をテーマにしたセミナーだったんです。
「私たちの骨は、健康なら骨量が多く密度が高い状態です。それが、骨粗鬆症になってしまうと骨量が減って構造的にもろくなるため、上から圧力がかかるとつぶれてしまいます。そのため、身長が縮んだり、いつのまにか骨折という圧迫骨折の危険が高くなるのです」
そんな骨粗鬆症の予防にはカルシウムが必要だと知っているのに、多くの人が足りていない現状があると上西先生は続けます。
カルシウムはこんなにも働き者だった!
「カルシウムは、ヒトが生きていくために欠かせない栄養素です。骨を作るのが大事な働きで、体内のカルシウムの99%は骨や歯に存在しています」
残りの1%は筋収縮や神経細胞の分泌、増殖など、体のさまざまな機能を調整しているのだそう。心臓がドキドキするのも、カルシウムが関係しているんですって。
骨とカルシウムの密接な関係
「では、視点を変えて骨の働きは?というと、体を支える、筋肉とともに体を動かす、臓器を保護するというだけでなく、カルシウムの貯蔵庫でもあります。これがとても重要で、血液中のカルシウムが不足すると、骨のカルシウムから溶かして使われてしまうのです」
つまり、不足していると体が判断して骨のストックからカルシウムを使い過ぎる状態が続くと、骨粗鬆症になってしまうわけです。これはマズイです! さて、皆さんはカルシウムをきちんと摂取できていますか?
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日本人は昔からカルシウム不足?
厚生労働省が5年ごとに改訂して定めている「日本人の食事摂取基準」の最新版(2015年版)では、私たちOurAge世代の女性の1日あたりのカルシウム推定平均必要量は550mgとされています。そして摂取推奨量は650mg。
「骨粗鬆症予防として、成長期にできるだけ骨量を増やすこと、成人期にも骨量を増やす、減らさないことが大切なので、1日のカルシウム摂取推奨量が多くなります。さらに高齢期も、骨量減少を抑えるためにカルシウムを摂取することはとても重要です」
では実際はどれだけ摂取されているのでしょうか? 昨年、IOF(国際骨粗鬆症財団)から国別で比較した1日あたりのカルシウム摂取量が発表されました。
「アメリカやヨーロッパなどの酪農が盛んな国が十分摂取できているという結果が出ている一方、日本では1人1日あたりのカルシウム摂取量は500mg前後を推移と、50年前から足りていない状況が続いています」
OurAge世代にも牛乳がオススメな理由
酪農が盛んな国が十分に摂取できているのは、牛乳や乳製品をよく摂取していることが関係しているようです。
「日本では、男女とも成長期の摂取量はここ10年で100mgほど少なくなっているというデータもあります。これは、学校給食で牛乳を飲まなくなったことも原因のひとつと考えられます。
牛乳はカルシウムを多く含んでいるだけでなく、吸収率が40%とカルシウムを多く含む他の食品よりも非常に優れています。しかも、必須アミノ酸を含んだタンパク質、細胞の栄養として働くリンやカリウム、主要なビタミン類も摂取できます」
また、OurAge世代にとって見逃せないのは、
「抗肥満効果」「牛乳中のペプチドが高血圧対策になる」
とされていること。ペプチドに関しては、トクホとして許可された乳製品も販売されています。
「総合的に見てメタボリックシンドロームの予防に有用な可能性があると示唆され、現在研究が進められています」
牛乳には、骨の対策以外にも、こんなに頼もしい効果が期待できたのです。
ある調査では、毎日牛乳を飲まない人の半数以上が「家にあればもっと飲む」と回答したそう。骨と健康のために、まずは牛乳を家に常備して、飲む習慣を付けてみるのはいかがですか。