全人口に対して、65歳以上の高齢者が21%を超えた状態を〈超高齢社会〉と言います。
日本は世界に先がけて2007年に超高齢社会へと突入し、高齢者の割合は年々増加傾向に。65歳以上の女性が2000万人を超えているとご存知でしたか?
長生きになったのは喜ばしい一方、大きな懸念も抱えています。
「今の日本にとっての重要な課題は、健康寿命の延伸です。〈平均寿命〉と、日常生活に制限のない〈健康寿命〉は男性は約9年、女性では約12年のギャップがあるとされているのです」とは、味の素 取締役 常務執行役員の木村毅さん。
このギャップには、加齢や病気などによって筋肉の量が減ってしまうサルコペニアや移動機能が低下してしまうロコモティブシンドローム(通称ロコモ)、筋力と共に心身の活力まで低下してしまうフレイルが要介護の入り口になってしまうことにあります。
「まだまだ現役!」とはいえ、歳を重ねるごとに「1年ってあっという間」が加速していると感じていませんか? そんな1年を積み重ねるごとに、私たちは高齢者へと一歩ずつ近づいているんですよね。
では、〈健康寿命〉を延ばすために今から私たちが出来ることとは? 味の素が主催した「シニアの筋肉づくり最前線」セミナーで、その対策が見えてきました。
減る一方の筋肉量。増やすにはロイシンが鍵を握っていた!?
「健康な人でも、加齢によって筋量は減少してきます」とは、立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡先生。これがサルコペニアですよね。
「筋肉は、食事でたんぱく質を補給すると作られ、空腹時にはエネルギーとして使われるという〈合成〉と〈分解〉を日々繰り返しています。
若い頃は合成と分解のバランスがトータルでゼロになるようバランスが取れているため、筋肉の減少が抑えられています。しかし、若い頃と同じように食べても、加齢と共に筋肉の合成は衰えてきてしまいます。そこで意識して摂取するようにしたいのが必須アミノ酸です」
私たちの体のたんぱく質はアミノ酸で構成されており、その中で体内で合成することが出来ないのが必須アミノ酸です。だからこそ積極的に摂取する必要があるわけですが、なかでもロイシンが筋肉の合成を刺激するのにとても重要なんだとか。
「筋肉をつくるには運動も必要で、1回筋トレをすれば筋肉を合成する効果は2日間も続きます。さらにロイシンを摂取すると、その相乗効果から高齢者でも筋肉合成のスイッチが入りやすくなるとわかっています」
ロイシンは、魚類や肉類、大豆や乳製品などに含まれています。では、どれくらいの量を摂ればいい? 次のページへ!
見直すべきは、朝食や昼食だった!
「アミノ酸摂取量と健康との関係についてはまだまだ研究が少ない段階ですが、サルコペニアに着目したアミノ酸の摂取推奨量では、1食あたりロイシンが2.5~2.8g含まれると、たんぱく質が合成されやすくなるという論文があります」
そう説明してくださったのは、国立健康・栄養研究所 栄養ガイドライン研究室 室長の髙田和子先生です。
では、1食あたり2.5gのロイシンを私たちは摂取できているかというと、夕食では多くの人が足りているものの、朝食や昼食では、男女とも年齢に関わらず不足しているという研究結果があるのだそう。
そう言われてみると、夕食には肉や魚などをしっかり食べているものの、朝や昼は…。思い当たる人、多いのでは?
ワンプレートでもアミノ酸たっぷりが叶うメニュー
「国内外で進められているロコモ・サルコペニアの研究の中で、1食あたり20g以上のたんぱく質摂取が専門家により推奨されています」とは、料理研究家の浜内千波先生。
「これをお肉20g、お魚20gで大丈夫と勘違いなさっている方がいるようですが、食材ごとにたんぱく質の含有量は違います。たとえばお魚やお肉は約100gのうち含まれているたんぱく質はその20%ほどが目安となります」
つまり、毎食お魚やお肉100gで、1食あたりのたんぱく質推奨量が摂れるわけです。う〜ん、これはなかなか難しいかも。だから不足している人が多いんですよね。
「お肉や魚だけでなく、野菜や果物にもたんぱく質(ロイシン)は含まれています。いろいろな食材から摂るように心がけていただきたいですね」
おすすめのメニューとして、手軽に作れるワンプレートメニューを提案してくださいました。こちらは、キャベツやレタス、トマトなどと、ソテーした鶏むね肉、人参、玉ねぎなどをあわせたワンプレート。
きゅうり、春菊、レタスの上に、ソテーした葱やブロッコリー、鯖をオン。とうもろこしやアーモンドもトッピングしています。
「生野菜をちぎって、そこに焼いた野菜とお肉や魚をのせただけ。下味も味付けも一切不要で、最後にドレッシングをかければ終了です」
セミナー会場の入り口には、浜内先生が提案してくださったワンプレートメニューと一緒に、味の素が展開するアミノ酸のサプリや「たんぱく質がしっかり摂れるスープ」などが展示されていました。これらを活用するのも、筋肉づくりに役立ちそうです。