キアヌ・リーブスがどんどん素敵になっていきます。彼からにじみ出る“人間としての優しさ”はどこから来るのでしょうか?今回のインタビューでもあまり表情を変えない仏頂面に変わりはないのですが、1人1人の質問に答える態度がとても優しかったのです。
あまり言いたがらなかった“自分のこと”も話してくれました。先日、60本近い出演作の中の役で、いちばん好きなキャラクターは「1986年の『リバース・エッジ』 のマットだ」と聞いて、キアヌ・リーブスという人がもう少し見えたような気がしました。
マットというキャラクターは友だちや家族に優しいティーンエイジャーですが、戦わなければならない時には立ち上がる強さももっている少年です。そんな、愛する人たちを護り、大切にする優しさがジョン・ウィックのストーリーを支えているのかもしれません。
ニューヨークで行われた今回のインタビュー。控室では記者達がコーヒーを取りに行ったりしてウロウロしています。その隣の部屋の真ん中に、長い黒髪&髭もじゃのキアヌが、目をつぶってひとり、じーーーっと座ってます。皆が「あれっ?キアヌだ」と横目で見ながら、行ったり来たりしても時間が来るまで目も開けず座ったままでした。
あんな風に瞑想をよくするんですか?と聞くと「イヤ、たまにね。みんなにもすすめるよ。頭がすっきりするんだ」と平和な顔で答えてました。梳かしてないような長髪にピシャっとネクタイまで締めて黒いスーツを着てるのがちぐはぐなのですが、これは隅から隅までジョン・ウィックそのものです。ちなみにそのスーツはロンドンのサヴィル・ロウ (名門高級紳士服店が集中する通り)にある、チェスター・バリー仕立てだそうです。
2014年にスタートした殺し屋シリーズ『ジョン・ウィック』 の第3作、“Parabellume (パラベラム・原題)”がアメリカ公開2週間で興行収入118億円も上げました(インターナショナル総計182億円)。そもそも低予算で作った小さなストーリー、愛する妻のために殺し屋業から足を洗い、幸せに暮らしていたジョン・ウィックを襲う不幸と、過去のしがらみからくる残忍な出来事。絶望から彼を再び殺し屋業に駆り立てるというスタートで、前2作はニューヨークだけが背景でしたが ”3“ではサハラ砂漠まで登場します。
キアヌが「主に柔道と柔術のトレーニングを受けた」と言うように、柔道の技がたくさん登場します。空中での飛んだり跳ねたりはいっさいなく、足が地についてるアクションシーンとそのシーンの美しさも人気の原因の一つです。アクションは90%以上キアヌ本人がやってます。
「アクションを自分でやってるからこそ、ジョン・ウィックと見る人の間に繋がりが生まれる」とキアヌは言います。それはそれは見事な動き、55歳という年齢を全く感じさせません。うわああ、カッコイイ!と思わせる出来栄えなのです。映画の中では、セリフよりも銃撃戦の銃の音の方が多いくらいですが、ジョン・ウィックに当たる弾はないのです。
「ジョン・ウィックのストーリーにハートを感じた」とキアヌは言います。
「このストーリーがおもしろいのは、ジョン・ウィックにはリミットがない。(つまりなんでもあり)ということ」と笑ってます。「まだまだ話したいエピソードが山ほどあるんだ」とジョン・ウィックに、はまっているよう。
“3”ではついにオートバイで戦うシーンが登場します。オートバイに乗らない日は何か調子がおかしい、と言う彼は、高級カスタムメイドの(一台平均28,000ドルだそうです)Arch Motorcyclesというオートバイ会社を共同経営しています。「オートバイの姿形、オートバイのバイブレーション、乗ってる時の孤独な世界、その開放感が好きだ」とキアヌは言います。
事故・怪我の経験はないの?
「夜のトパンガキャニオンで(ロス・アンジェルスからちょっと北にある曲がりくねった山道)で事故を起こし、暗闇の中で大声で『助けて! 助けて!』と叫んだことがある。暗闇の向こう側から『今助けが向かってるぞお』というどなり声が聞こえて、ちょっとしたら救急車のヘッドライトが近づいて来た。結局救急車を呼んでくれた人の顔は見なかったんだ」と笑ってました。
ロスに住んでるんですよね?
「ウェスト・ハリウッド だよ。丘の上で景色が良いんだ」(ディカプリオの隣人です)
料理とかするんですか?
「I don’t cook(料理はしない),でも僕は良いディナー客だという自信がある(笑)。何でも美味しい美味しいと食べる。それに最後は皿洗いして後片付けもしてあげる(笑)」
ジョン・ウィック 4 の制作が発表されました。映画そのものより、次に会うキアヌの変貌が楽しみです。「愛は人間を磨いてくれる。愛の形はいろいろある」と言ってました。