はじめまして、トラベルジャーナリストの岩佐史絵です。フリーランスのジャーナリストとして、“人生を豊かにする旅”
写真のように、メルボルンには英国統治時代の古い建築物が多く、それがまたハリーポッターワールドを思わせるのも、上演地に選ばれた理由のひとつかも?
2016年にウェストエンド(ロンドン)で初公演のあと、ブロードウェイ(ニューヨーク)でも上演され、ロングランの大人気作となっているのが、ハリー・ポッター劇場版『ハリー・ポッターと呪いの子』。『ハリー・ポッターと呪いの子』の演出家、ジョン・ティファニー氏によると、ロンドンのウェストエンド、ニューヨークのブロードウェイに並び、メルボルンのイーストエンドは「古くから観劇文化があるから」という理由で選ばれた上演地。メルボルンのダウンタウンの東側にあり、ハリー・ポッターが上演される老舗劇場のプリンセスシアターをはじめいくつもの劇場が点在。今や街並みもハリポタ色で、プリンセスシアターの外観のデコレーションはウェストエンドやブロードウェイと同じです。
観劇の前後で楽しめる環境であるというのもイーストエンドの魅力。レストランやバーが密集しており、食事に出かけるにももってこいのトレンドスポットです。
特徴的なのは、多くのレストランでシェアスタイルを採用しており、日本の居酒屋のように気軽にお酒や食事を楽しめること。気になる一皿を選ぶのに迷ってしまったら、「シェアします」と伝えるだけでOK。また、そうしたスタイルに慣れているお店が多いので、同行者と「一口ちょうだい!」なんてやりあっていてもマナー違反と思われることもありません。観劇の前にちょこっとなにかつまみながら小腹を満たし、舞台を観終わったらその感想を述べつつディナー、といったスタイルで楽しむことが可能です。
シェアリングスタイルOKのレストランのひとつ、「Cumulus Inc .(https://cumulusinc.com.au/)」は、最近ウォークインでは座れないかも、というほどの人気店。オーストラリアの食材をいかした料理が楽しめます。
そうしたトレンドスポットにおいて、どれだけ“いいお店”を知っているか? はメルボルンのトレンドセッターにとっては最重要事項だそう。雑誌やガイドブックなどに紹介されているような有名店ではなく、また、大通りではなく、「レーン」と呼ばれる小道や裏通りにひっそりたたずむ隠れた名店を探し出すのはメルボルンらしいお楽しみのひとつといっても過言ではありません。
とはいえ、旅行中に要領よくそうしたお店を自力で見つけるのはちょっと難しいもの。というわけで利用したいのが、「Hidden Secret Tours(https://hiddensecretstours.com/)」。その名のとおり、メルボルンの“隠された秘密”をめぐるウォーキングツアーで、テーマに沿ってガイドさんがメルボルンの街を案内してくれます。いくつかのツアーのうち、「Food」をテーマにめぐるものもあり、メルボルンのフードシーンを体験することができるのです。
今回私が利用したのは「Lanes and Arcades Walk」。約3時間のツアーでめぐるのはまさに裏通りばかりで、そのなかでちらほらとガイドさんイチオシのお店が紹介されます。
このツアーでは、レストランは入店せず、どんなお店で、なにがシグネチャーかを教えてくれるのみですが、お店の場所や雰囲気がわかるので、レストラン選びの参考になることは間違いありません。また、街のそここに描かれたグラフィティの鑑賞ツアーでもあり、ストリートアートを楽しみながらのお散歩といった趣も。土地勘がつくのでなるべく早めに参加するといいでしょう。
音楽好きに刺さる小道「AC/DCレーン」は観光名所となっています。実はこのレーンの奥に、隠れ家的レストランがあるのですが、ツアーでは詳細はヒミツ・・・。興味のある人は、自分で調べるのも旅のお楽しみ。
チョコレート屋さんやコーヒーショップに立ち寄っての味見も。
オーストラリアで最も古い歴史をもつチョコレート専門店「Haigh’s Chocolates(https://www.haighschocolates.com.au/)で試食。ショーケースの中から好きなものを選ばせてくれます。奥にはカフェもあるので、あとで戻ってきてゆっくり楽しんでも。
メルボルンのお楽しみは、ちょっと足を延ばして郊外でも。オーストラリアきってのワイン産地ヤラバレーは、ダウンタウンから車で約1時間の近郊にあります。ここではワイナリーめぐりが楽しいのもさることながら、近年ではジンの蒸留所が大人気です。
オーストラリアでのジンといえばこの「Four Pillars(https://www.fourpillarsgin.com.au/)」が先駆者として注目を集めています。ジンの世界的流行は今、さまざまな材料で作ることができる “クラフト系”。この蒸留所の人気はまさにそこで、オーストラリアに自生するハーブやスパイスなどを用いてジンをつくっています。その作り手による“こだわり”のテイスティングができるのが人気の理由で、原材料の香りやその特性から、飲み方のコツまでを情熱的に語ってくれるので、つい引き込まれてしまいます。メルローから作られた、ちょっと甘味のある真っ赤なジンなど、個性あふれるジンが揃っているので、どれも一度はトライしてみたくなります。ジンの味わい深さに驚かされることうけあいです。
ヤラバレーでランチやディナーに迷ったら? ぜひ立ち寄りたいのは、ワイナリーが運営するレストラン。自慢のワインにマッチさせる料理だから、自然にこだわりも生まれるというものです。
「Tarra Warra Estate(http://www.tarrawarra.com.au/)」は「最高のピノ・ノワールとシャルドネをつくる」というビジョンのもとに1983年に建設されたワイナリー。併設するレストランでは敷地内で育てられた果物や野菜のほか、カンガルーなど地元の食材を多用しており、まさにローカルな体験ができるのが魅力。同じ土地で育ったワインとマッチしないはずがありません。
「Tarra Warra Estate」ではヴィンヤードを眺めつつデッキテラスや芝生の上でのんびりすることもできますし、オーナー夫妻の美術品コレクションを美術館で公開もしているそうなので、のんびり時間をとって過ごすのがおすすめ。
もうひとつのおすすめ、「Chateau Yering(https://chateauyering.com.au/)」はホテルも併設する、1854年に設立された老舗シャトー。ヘリテージビル好きにはたまらない、英国統治時代らしいビクトリアンな雰囲気が漂います。
ここのメインダイニング「ELEONORE’S」はそのオーソドックスな空気感に反して、料理はとてもモダン。注文したビーツのサラダには、あっと驚く仕掛けが隠されています。
ビーツは赤だけでなく、黄色いものもあると初めて知りました。カップはなんとダークチョコレートでできているのです。「ELEONORE’S」の料理は世界の料理から少しずつアイデアを拝借し、最高のマリアージュを作りだしています。
日本からはカンタス航空の直行便で約10時間半と、気軽に訪れることができるメルボルン。美食に、観劇、町歩き、お楽しみがぎっしりです。
取材・文/岩佐史絵
ラグジュアリーからアドベンチャーまで、“人生を豊かにする旅”
<取材協力>
オーストラリア政府観光局:www.australia.jp
ビクトリア州政府観光局:https://jp.visitmelbourne.com/