「緑茶が健康にいい」とは昔からよく言われていますよね。その理由として、カテキンを思い浮かべる人は多いと思いますが、実はもっとすごいパワーが!
それは、緑茶に含まれる「テアニン」。カテキンは渋み成分なのに対し、テアニンは緑茶の旨味・甘みの成分で、リラックス効果があることなどが知られています。そしてさらに今回、この「テアニン」の新たな可能性が、サントリー食品インターナショナルと九州大学・久山町研究との共同研究によって確認されたそうなんです。
さて、「久山町研究」のことはご存知でしょうか? 説明してくださったのは、同研究の代表を務める九州大学大学院医学研究室 衛生・公衆衛生学分野 教授の二宮利治先生です。
「福岡県久山町の住民は、全国の平均とほぼ同じ年齢・職業分布になっています。そこで、日本人の代表的なサンプル集団として60年前から住民を対象にした疫学調査を実施。今までに約1万人の住民を対象に詳細な健康情報を収集し、我が国のコホート研究※の実現に貢献してきました」
※疾病の要因と発生の関連を調べる検察的研究のこと
まずは高血圧の調査からスタートし、現在では認知症、糖尿病など、研究テーマは生活習慣病全体に広がっているのだそう。
「認知症は世界でも大きな問題となっており、特にアジアで患者数が増えてくると言われています。久山町研究では65歳以上の久山町住民を対象に追跡調査を行い、日本の認知症患者数は2025年には700万人に見込まれると導き出しました。さらに、どんな生活をしている人が認知症を発症しないのか、予防のために気をつけたい危険因子も続けて探求しています」
このデータは厚生労働省が発表している将来推計に引用され、国民の健康調査に大きく役立てられているのです。
そのほか、脳卒中、虚血性心疾患、肥満、メタボリックシンドロームの実態と危険因子を解明するなど、久山町研究は多くの成果を上げてきています。そして新たにあきらかにしたという、「テアニン」の可能性とは…。
「テアニン」は茶葉特有のアミノ酸で、お茶に含まれるアミノ酸の60%以上を占めています。
「煎茶1杯あたり約8mg、それに比べて玉露や抹茶だと1杯あたり約40mgと、上質な茶葉ほど多く含まれています」
そのほか、深蒸し茶もテアニンを多く含んでいるそう。
テアニンは摂取後約1時間をピークに速やかに代謝され、グルタミン酸とエチルアミンに分解されて24時間以上血清中に残存します。
「今回の共同研究には7年を費やし、緑茶をよく飲んでいる人ほど血清中に残存するエチルアミンの濃度が高いと確認出来ました」
何と、
緑茶を1日4杯以上飲んでいる人は1杯の人より4倍
も濃度が高かったんですって!
そして注目したいのがこの研究結果です!
今まで、血清エチルアミンの濃度と2型糖尿病発症の関係を検討した疫学研究はなかったそうですが、今回の研究により、血清エチルアミンの濃度が高いほど2型糖尿病の発症リスクが低下すると確認出来たのだそう。
「なかでも〈65歳未満〉〈境界型糖尿病〉〈肥満者〉の群が30%も発症リスクが低下すると確認出来ました」
この研究は論文でも発表され、米国糖尿病学会の専門誌「Diabetes Care」のオンラインでも取り上げているのだとか。
境界型糖尿病とは、「糖尿病」と診断されるほどではないものの、正常より血糖値が高い状態でいわば予備軍。また、肥満は2型糖尿病を発症しやすい傾向にあるとされています。つまり
糖尿病発症リスクが高い人でも
血清エチルアミンの濃度が高くなればそのリスクは低下する
ということ。緑茶を飲むことは糖尿病予防につながる可能性があるわけです。
糖尿病ではないものの、人間ドックなどで血糖値がやや高いと指摘されたことがあったり、「糖尿病は心配だけど、糖質制限はなかなか難しくて」という人は、1日4杯以上の緑茶を飲む習慣、早速今日から始めてみては?