『ゴーン・ガール』で体裁をかなぐり捨てて“裸の演技”を見せているベン・アフレックですが、実際シャワーシーンでは本当に全裸なんです。こちらではこれを、フロンタル・ヌード(正面ヌード)と言って、肝心な部分の露出を意味します。ベン自身も「3Dで見て欲しい」と冗談を言いながら照れてます。
ヨーロッパの俳優さんたちは 、自分が演じている役柄に必要なら、という場合は、裸になることを躊躇しません。
ところがハリウッドでは、裸になることはチープな事と思い込んでいるふしがあり、特に女優さん達は不自然なほどに裸になることを拒みます。極端な例だと、ベッド・シーンでブラウスを着たままだったり、夜を共にしたカップルの朝のシーンで、ブラジャーを付けていたりするのです。その限りない不自然さに、ストーリーの展開が妨げられてしまうくらいです。最近少しづつ変わって来てますが、それでもまだまだ必死でシーツを使って誤魔化しているベッドシーンはたくさんあります。
そんな事からベンも「この映画はヨーロッパ風アプローチで撮られている。無理やりシーツで乳首を隠す、というようなわざとらしい事を、デイビッド(フィンチャー監督)は絶対に許さなかった」と言っています。
監督は最初から「演技の中で見栄は一切許されない、見栄を捨て去って望んで欲しい」と警告したそうです。
『ゴーン・ガール』は作家ギリアン・フリンのベストセラー。
ノース・カロライナ州の平和な町で起こる結婚6年目のニック・ダン(ベン・アフレック)と妻エイミー・ダン(ロザムンド・パイク)を巻き込む失踪事件。
ある日突然、妻が消えてしまい、夫が容疑者として最短距離にいるというサスペンス。二転三転しながら進む謎解きは摩訶不思議で、エンディングを知っている原作の読者をも、退屈させずに巻き込んでしまいます。フィンチャー監督の秀作であり、彼の作品の中で最高の興行収入を上げています。
美男美女のカップル、ニックとエイミーの幸せな日々を振り返りながら 結婚というものの底知れないミステリーを見せていきます。愛し合って結婚した二人の6年間に、どんな心の変化があったのかは本人しか分かりません。夫婦間の騙し合いに苦笑し、暴露されて行く秘密に唖然とし、うつろいやすい愛のあり方に納得し、それでも別れずに居る結婚の中の、惰性と打算に自分を投影したりして……。そしてこのダークなサスペンスは展開していくのです。フィンチャー監督は結婚の醜い部分、その醜さが人間の最悪の部分を引き出してしまう、という現実を容赦無く突きつけてきます。
「デートをしてる最中は良いところばかりを見せようと頑張り、自分を誇大広告するのが普通だろう?」と笑うベン。「時間が経って『ちょっと違うんじゃないか?』と思い出した時に、そのギャップを埋めようと努力するだけの愛が残っているかどうかが、分かれ目になると思う。僕はいい妻に巡り会えて、“ベーリーラッキー”なんだ」と真面目な顔で続けてました。
ベンがこの映画に出たかった理由は、一にも二にもフィンチャー監督。「他の監督だったらやらなかっただろうと思う事の一つは「見る人が嫌なヤツだと思う役を」「見栄は捨てろ」と言うデイビッドの言葉通り、自分をさらけ出して演じたことだね」とフィンチャー監督への絶大な敬意を語ってくれました。