HAPPY PLUS
https://ourage.jp/karada_genki/137692/

新連載!第1回  乳がんはマンモグラフィで見つからないの?(前編)日本人女性に多く、発症リスクがやや高い高濃度乳房とは?

増田美加さん

増田美加さん

1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。30年にわたり2,000名以上の医師を取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力(』講談社)ほか多数。NPO法人 日本医学ジャーナリスト協会会員

医療ジャーナリスト 増田美加さんの更年期女性の医療知識アップデート講座

今回から始まる連載では、MyAge/OurAge世代の女性が知っておきたい最新の医療知識をご紹介していきます。教えてくださるのは、医療ジャーナリスト の増田美加さんです。

 

第1回 乳がんはマンモグラフィで見つからないの?

 

検診を受けていたのに 早期発見できないなんて!

 

「私は年1回、マンモグラフィ検診を受けていたんです。それなのに、なぜ早期発見できなかったのですか?  増田さん」

 

真剣なまなざしでそう問いかけられ、返す言葉がありませんでした。私が乳がん罹患後、NPO法人キャンサーネットジャパン認定の乳がん体験者コーディネーターとして、都内のあるクリニックで相談を受けていたとき、乳がん患者さんから突きつけられた質問です。 彼女だけでなく、私の前には定期的にマンモ グラフィ検診を受けていたにもかかわらず、進行した乳がんが見つかる女性が現れ続けていました。医療ジャーナリストとして長年、乳がん検診を受診することの重要性を訴えてきましたが、このままではいけない…という思いが日に日に強くなっていきました。

 

今、乳がん検診の分野で論議を巻き起こしている「高濃度乳房(デンスブレスト)」をご存じでしょうか?  乳腺濃度が高く、マンモグラフィ(マンモ)の画像でがんが見えにくいタイプの乳房のことです。乳腺濃度とは、乳腺が乳房内にどれだけ存在するかの割合。この高濃度乳房は、実は、私たち日本人を含むアジア人に多いタイプの乳房なのです。

 

乳がん検診では、医師はマンモの画像を4分類に分けて判定。右2つが高濃度乳房。日本女性の4~7割が高濃度といわれています

写真提供/NPO法人乳がん画像診断ネットワーク

 

 

高濃度乳房の問題点は大きくふたつあります。ひとつはマンモでは、乳腺もがんも"白く"写るため、乳がんが見つけにくいこと。乳がん専門医の間では、まるで雪原の中の白うさぎを探すかのようだと言われています。もうひとつは、欧米人に多い脂肪性の乳房に比べて乳がん発症リスクがやや高いこと。

 

マンモでは乳腺もがんも白く写るため、高濃度乳房ではがんかどうかの判別が難しい…。 にもかかわらず、国の検診指針では、乳がん検診の結果として本人に知らせるのは「要精密検査」か「異常なし」のみ。高濃度乳房のため「判別困難」であっても、伝える仕組みがないという問題に取材の中で気づきました。定期的に乳がん検診を受けていても「異常なし」と通知され、ある日突然、進行した乳がんが見つかる。もしかしたら相談に来た女性たちは高濃度乳房だったのかもしれない…。

 

高濃度乳房(右)は乳腺濃度が高く、乳がんがあっても見つけにくい。欧米人に多い脂肪性乳房(左)は、乳腺が少なくがんが見つけやすい

 

 

次ページに続きます。

マンモはしこりになる前の小さながんを見つけるのが得意で、世界で唯一効果が認められている乳がんの検診法です。だからこそ、 国は40歳以上の女性に対し、2年に1回の受診を推奨しています。だったらせめて、結果を「異常なし」ではなく、見えない場合は「判別困難」と通知してほしい。マンモでは見えにくい乳房のタイプであることを知っていれば、乳腺濃度の影響を受けにくい超音波検査を追加で受けるなど、対策をとれます。高濃度乳房の人が知らずにマンモだけの乳が ん検診を受け続けていたのでは、早期発見ができず、がんが進行してしまう可能性があります。多くの人は自分の身を守るために、がん検診を定期的に受けているのです。結果が「異常なし」で返ってくると、誰もが「がんはなかった」と安心してしまいます。

 

そこで2016年、厚生労働大臣に宛て、乳がん検診制度の見直しを求める要望書を全国の乳がん経験者の有志とともに提出し、厚生労働省で記者会見を行い、多くのメディアにニュースとして情報発信してもらいました。

全国の乳がん経験者有志と国に提出した要望書は、多くのメディアで伝えられました。国に求めたのは、受診者目線に立った制度作り

 

要望書提出の後、現在、国は専門家の検討会などで議論していますが、検討会の医師たちは「超音波検査のエビデンスが確立していない」「超音波検査を行う体制が整っていない」などを理由に「判別困難」の通知には慎重な意見です。しかし体制が整うまでには10年20年という時間がかかります。その間、検診を受ける人はどうしたらいいのでしょうか…。 私たちには自分の体を「知る権利」があります。

 

 

自分が高濃度乳房かどうか知るためには、どうすればいいのか。次回の連載で紹介します。

 

 

イラスト/堀川理万子

 

MyAge

大人のからだバイブル vol.2 「痛み知らずの体になる!」

OurAgeの人気記事が1テーマムックに!
何度も読み返せる保存版OurAgeです。

MyAge
試し読み Amazon Kobo 7net

この特集も読まれています!

子宮筋腫特集~症状から治療まで
フェムゾーンの悩み解決
ツボ・指圧で不調を改善
40代からでも「絶対痩せる」
広瀬あつこさんの「若返りメイク」
閉経の不安を解消

今すぐチェック!

まさか本当に誕生するなんて! リライズ改め「ブローネ ナチュリラ」に、待望の「ダークブラウン」が登場

まさか本当に誕生するなんて! リライズ改め「ブローネ ナチュリラ」に、待望の「ダークブラウン」が登場

supported by 花王
次の記事>

次の記事>
第2回/新連載!第1回 (後編) 乳がんはマンモグラフィで見つからないの? 自分で乳房の…

この連載の最新記事

乳がんか卵巣がんの人が血縁者にいたら「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」について知っておくべき!

第26回/乳がんか卵巣がんの人が血縁者にいたら「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」について知っておくべき!

乳がん、卵巣がんの血縁者がいる場合、どうする?二人の「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の女性の体験とは…

第25回/乳がん、卵巣がんの血縁者がいる場合、どうする?二人の「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の女性の体験とは…

実は閉経前後に上がる「乳がんリスク」!検査すれば確実に発見できるの?

第24回/実は閉経前後に上がる「乳がんリスク」!検査すれば確実に発見できるの?

この連載をもっと見る

今日の人気記事ランキング

今すぐチェック!

OurAgeスペシャル