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歩き方、スマホ操作時の姿勢、立ち上がり方・・・何気ない体の使い方が痛みを起こす!

ひどい肩こり、四十肩・五十肩、腰痛を繰り返す人も多いはず。「それは痛みの根源に姿勢の悪さがあり、さらに体を正しく使えていないからです!」と力説するのは、整形外科医でピラティスインストラクターの武田淳也先生。そんな痛みを引き起こす、「日常の体の使い方」について伺いました。

痛みの症状=「体の構造の問題」+「体の機能の問題(間違った姿勢や体の使い方)」!

 

「体の痛みを根本的に解決するためには、まずは姿勢を重心線に沿った、理想的なニュートラルポジションにすることです」と武田淳也先生。

 

「脊柱は頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個、尾骨1個で構成されています。ニュートラルポジションはそれらの椎骨がベストな場所にあり、均等に力がかかっている姿勢。そして、肩や膝の関節、股関節などにはそれぞれ可動域がありますが、その可動範囲で腕や脚がスムーズに動かせて、関節に最も負荷がかからない状態のことです」

 

では、少し体を動かしてみましょう。左右の肩甲骨を開くと背中は丸まります、左右の肩甲骨をグイっと後ろに引くと背すじが伸びます。

 

「では、肩甲骨を開いて猫背の状態で、天井を見上げてみると…真上まで向けますか? そのまま両手を上に挙げてみてください。真上には上がらないはずです。つまり、なにか動作を起こすときには、それぞれの関節に負荷が最小限ですむ姿勢があるのです」

 

猫背の姿勢のままで高いところにある物を取ろうとしたり、椅子に座ったまま後ろにあるものを腕だけを回して取ろうとしたり…。結構やってしまいがちです。

 

「こうなると、1カ所の関節だけに負荷がかかりすぎます。これを日常的に繰り返すことで、肩や首、腰に痛みを起こす原因となるのです。

 

痛みの症状は「体の構造の問題」(各部位の変形や変性)に加えて、「間違った姿勢や体の使い方」が加わることで起こります。こうした、姿勢と体の使い方を最適化させることを『モーターコントロール=モタコン』と呼び、筋トレ、ストレッチ、有酸素運動に加えて、モタコンを第4番目の新運動として生活の中に普及させたいと考えています」

 

 

こんなことやっていない? この何気ない動きが元凶です

 

では実践として、正しい体の使い方を学んでいきましょう。

 

① 歩き方 背骨の軸を意識して

 

× 猫背になっていたり、お腹が出ているのはNG。下を向き、両足をドタドタとついて歩くと、腰、膝、かかとなどに過度に負荷がかかります。

 

 歩行時、膝の関節にかかる負荷は、体重の3倍になるといわれています。この負荷を最小限にするためには、上体は背すじを伸ばして、ほんのわずかに前傾させた姿勢を保ちながら、胸のみぞおちの高さくらいにある背骨を回旋させる(左右に回す)のを意識して、片足を前に踏み出します。かかとを地面につけたら、重心をつま先へスムーズに移動させて、かかとへの衝撃を吸収します。顔は前を向き、肩はリラックスさせて、腕は自然に振ります。

 

スマホ操作時の姿勢 背すじを伸ばして、スマホの位置にも注意

 

体の使い方 スマホ

 

× 猫背で骨盤が後傾した姿勢で座り、スマホを下の位置に置いて、首を前に傾けた姿勢で長時間いると、肩こりをはじめ、首こり、腰痛の大きな原因になります。

 

 尾骨と頭のてっぺんが引っ張り合うように背すじを伸ばして座り、スマホは目よりも少し下くらいの位置に構えます。

 

 

ふり返るとき 体全体を使ってしなやかに振り返ります

 

体の使い方 振り向く

 

× 体はそのままで、首だけ振り向くと、狭い可動域の中で無理をすることになるので、頸椎に負荷が集中します。

 

 振り返る側の脚を後ろに引き、体全体で振り向くのが正解!
首の左右の旋回(回る)角度は各約60度、胴体部分の旋回角度は胸椎部分で約30度+腰椎部分で約5度で各約35度です。さらに振り返る側の脚を後ろに引き、股関節の可動域も加えることで、しっかりと後ろを振り返ることができるうえに、負荷を全身に分散させることができます。

 

 

立ち上がるとき 後頭部から骨盤までのラインはそのままに

 

体の使い方 立ち上がる

× 背中が丸まり、骨盤が後傾し、首が前に傾いた姿勢で座っていて、そこから背中を丸めたまま立ち上がると、腰と首に過度に負担がかかります。

 

 背すじを伸ばし、骨盤を前傾や後傾させないようにニュートラルポジションで座ります。立つときには太ももに両手をついて、後頭部から骨盤までのラインを崩さずに、体を椅子から浮かせます。このとき、片脚を少し後ろに引いてもOK!

 

階段の上り方 膝の中心と足の第2指(人差し指)がそろうように

 

体の使い方 階段を上るとき

 

× 膝が内に向いて、第2指が外を向いているなど、膝と指先の角度がそろっていないと、膝と股関節への大きな負担になります。無意識のクセになっていることもあるので、一度チェックを!

 

 踏み出す脚を真っすぐに出して、膝と足の第2指がそろうようにします。

 

 

荷物の持ち方 腰を落として、下半身に力を分散させます

体の使い方 荷物を持ち上げるとき

 

× しゃがまずに、腰だけ曲げて持ち上げると、腰に強く負担がかかります。ぎっくり腰の大きな原因に!

 

 背中を伸ばし、膝と足の第2指の方向をそろえて膝を曲げ、しっかり腰を落とします。持ち上げる物をできるだけ骨盤に近づけるように持ち、上体はそのままの姿勢を維持しながら、膝と股関節だけ伸ばして、持ち上げます。

 

 

顔を洗うとき 膝を軽く曲げ、背すじは伸ばしたまま

体の使い方 顔を洗うとき

× 膝を伸ばしたまま、腰から前かがみになると、腰に負担がかかります。

 

 背すじは伸ばしたまま、片方の膝を少し後ろに引き、両膝を軽く曲げます。お腹を平らに引き込んだ状態で、股関節から上半身を前傾させて、顔を洗面台に近づけます。こうすると、負荷を全身に分散させることができます。このとき、片膝を洗面台に当ててもOK! キッチンで料理や洗い物をするときなど、前かがみになるときは同様にこの姿勢で。

 

洗濯物を干すとき 肩甲骨を内側に寄せて、胸椎を伸ばして

体の使い方 洗濯物を干すとき

 

× 猫背で首が前に傾いた姿勢のままで両腕を上げると、肩や首、腰の大きな負担になります。体全体をしなやかに使うことが大切です。

 

 両手を上げるときは、左右の肩甲骨を内側に寄せて下げるようにして、胸椎を伸展させて(伸ばして)、腕を伸ばします。このとき、腰を反らしすぎないように注意しながら、お腹をキュッと引くようにして。尾骨をかかと方向に伸ばすように意識するといいでしょう。これは高いところにある物を取るときなどにも共通します。

 

日常に何気なく行っている動作で、1回2回ぐらいなら小さな負荷かもしれませんが、これが度重なると、首、肩、腰、股関節、膝に大きなダメージになります。

 

「体の痛みは、こうした悪い姿勢と体の動かし方が根源にあることを知っておいてほしいと思います」

 

 

【教えていただいた方】

武田淳也
武田淳也さん
医師、米国国家認定ピラティス教師
公式サイトを見る
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「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力


イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子

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