前回は、手指のトラブルをタイプ別にご紹介しました。今回は、タイプ別の症状について、具体的に解説していきます。
3.女性ホルモンの減少も原因に「手の不調」
更年期世代に多い手の不調
❶ 手根管(しゅこんかん)症候群
おもに親指から薬指にかけてしびれがあります。しびれは中指から始まることが多く、親指の肉球の部分の筋肉が痩せることも。悪化すると箸が使いにくい、財布からお金を出しにくいなど、物がつかみにくくなる症状が出てQOLが低下します。治療法としては、装具による手首の安静や注射、手術などがあります。
❷ ばね指
イラストで示した部分にある、指を曲げる腱(屈筋腱)の動きが悪くなり、指に痛みやひっかかりなどの症状が出ます。第2関節の痛みや、伸ばしづらさが出ることも。超音波検査で腱の太さや腱鞘(けんしょう)の腫れ具合を診断し、注射などの治療を行います。注射で症状が改善しない場合や、第2関節の伸ばしづらさがひどい場合、腱鞘切開や腱部分切除などの手術を行います。
❸ ヘバーデン結節
指の第1関節が腫れたり曲がったりしてきます。原因は不明ですが、加齢に伴う関節の変形です(結節とはふくらみというような意味)。変形は自然に治らないものの、痛みは時間とともにやわらぐことが多いようです。治療はテーピングや、痛みがひどい場合は注射をします。痛みが取れなかったり見た目が気になる場合は、関節を固定する手術を行うこともあります。
❹ ブシャール結節
指の第2関節が腫れたり曲がったりしてきます。ヘバーデン結節と同じく原因は不明ですが、ヘバーデン結節との大きな違いは関節リウマチの可能性があること。関節リウマチは基本的に第1関節には起きませんが、第2関節にはよく起きるため、初期だと区別がつきません。第2関節が痛む場合は、関節リウマチの可能性も考慮して診察を受けましょう。
❺ 母指CM関節症
親指の付け根の関節=CM関節が腫れたり、痛んだりします。物をつまむ、瓶のふたを開けるなどの動作で痛みが出ます。この関節はよく動き、指先の10倍以上の力が加わる箇所のため痛みやすく、使いすぎや加齢によって軟骨がすり減ったり関節がずれたりします。治療は装具治療を基本として、注射やリハビリを行います。それでも改善しない場合は手術になることも。
❻ ドケルバン病
親指を開く腱に起こる腱鞘炎です。手首の親指側が腫れ、痛みが出ます。パソコン作業や美容師など親指をよく使う人に多く、最近ではスマホの使いすぎでなる人も。超音波検査で腱の太さや腱鞘の腫れ具合を診断し、注射などの治療を行います。注射で症状が改善しない場合は腱鞘切開の手術を行いますが、ばね指に比べ、手術治療が必要になるケースは多くありません。
次回は、これらの「手のトラブル」について、その原因など手外科の前田利雄先生に詳しく伺っていきます。
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/上田恵子