「OurAge」で実施した読者アンケートでは「セックスをしていない」人が半数以上という結果に。性交痛外来のあるペインクリニック院長・富永喜代医師と、日本におけるフェムゾーンケアの第一人者森田敦子さんに、今の更年期以降世代前後が置かれている状況について伺いました。
セックスの価値感や定義が揺らぎはじめている
セックスの価値観はみんな違って、みんないい
──読者アンケートの結果では、アワエイジ世代の半数以上が「セックスをしていない」ということが判明。「パートナーがいない」「結婚はしているが夫とはしていない(できない)」など、事情はそれぞれ。この数字についてお二人はどう思われますか? そもそもセックスは、しなければいけないのでしょうか?
富永 リアルな数字だと思います。そして、「しなければいけないのか」の問いに対しては、答えはNO。「したい」人はいつまでもその願いがかなうためのケアをしてほしいけれど、したくない人は、無理にする必要はなし。「もう出産の役目は終わったのだから、したくない」という価値観の人もいますから。
森田 「したくない」と思う人の背景には、お悩み事例(下記)のように、「自分の腟に触ることができない」という人も多いですね。幼児期にお昼寝をしながら性器を触っていたら、「母親から手をたたかれて怒られ、トラウマに」という話は、トークショーの場でもよく聞くんです。子どもとしては「触ることで落ち着く」だけなのに「=悪いこと」と植えつけられてしまう。とかく日本はセックスに対して成熟した価値観が育ちにくい。「したくない」という人が多いのは社会背景にも要因がありそうです。
富永 そうですね。まず大前提として、セックスにおける価値観は「みんな違って、みんないい」。性は神聖で個人的なもの。社会や男性のものさしで線引きされるものではないですよね。ただ、する・しないは自由ですが、更年期前後の女性の腟は劣化が早い! なので自分で触れて、ケアをすることは医療の領域でも大切であるという点はお伝えしたいですね。
森田 まさにそう。腟まわりのケアは、アワエイジ世代にはマストです。なので私は、お悩みを持つ人にはいつも「いい手鏡を買って、それで見て」とアドバイスをします。最初はぎょっとするかもしれませんが、ケアをするうちに、どうしたって可愛く思えてきますから。
●お悩み事例
自分の腟を見られない、触れることができない人が実は多いという問題
腟まわりをケアすることの大切さを伝えると、自分の性器を「汚いところ」という罪悪感を抱えている人が多いんです。そのため、自分の腟を見たこともないし、触れることもできない、という声も少なくありません。(森田敦子さん)
性に対する「罪悪感」から解放されるために、まずは自分の腟まわりに触れて、愛して(森田敦子さん)
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。
日本における植物療法の第一人者。植物療法に興味を持ち渡仏、フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・開発や、「ルボア フィトテラピースクール」、フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」を主宰
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/佐々木 篤 構成・原文/井尾淳子