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性のスペシャリスト富永喜代先生に聞いてみた!「性」の正解? それは自分の意思で決めるんよ

10人いれば10人それぞれ異なる性の価値観。生育環境も違えば、既婚・未婚、子あり子なしなど、ライフスタイルも違い、体の悩みも千差万別。そんな令和の今、女性の性はいったい何が「正解」なの? 大人の性の悩みを解決してきた名医、富永ペインクリニック院長・富永喜代先生の新連載では、40代〜50代女性の切実な悩みに迫ります。

富永喜代
富永喜代さん
麻酔科医
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富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。 性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数27万人、総再生数は6000万回超。SNS総フォロワー数42万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。

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この国の女性は、ずっと「情報DV」を受けてたんよ

OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永喜代でございます。
愛媛県松山市にて富永ペインクリニックの院長を務め、性についての悩み、痛みを抱えた患者さまと向き合う日々を過ごしております。

 

40代〜50代というと、まさに私も同世代。この世代にとっての性をたとえるならば、「こんがらがって、さらにもつれて、ガチガチになった糸」のようなもの。さて、これをどこからほどいていくべきか。非常にデリケートなテーマなんですよね。

特に最近はフェムテックのブームも相まって、これまではずっと、「ブラックボックスの中に突っ込んでおればよかった」という性が、にわかに注目を集めるようになりました。

この風潮にとまどいを隠せない40代〜50代女性が多いのは、非常によくわかるんです。

 

 

だってね。この国の女性の性は、これまでずっと「ガマンと忍耐の歴史」だったんよ。

「日本の女性たちはずっと、情報DVを受けていた」。私はいつも、そんなふうにゆうてます。

 

これ、どういうことかというとね。「女はセックスについて、モノを言うたらあかん」「女のくせにはしたない」…そういうムードにさせられるっちゅうことは、「情報を与えない」ってことなんよ。かつて男たちが、「嫁はんを家の中に囲って、外の社会から切り離す」ということをしたのは、それがいちばん、支配コントロールしやすいから。ホンマは女性だって、世間ではどんなことが起きているのか、情報を知ることで、選択肢を与えられるべきやった。情報があれば、「私はこれをしたい」「これは自分らしくない」と、自分の価値観や立ち位置を決めることができるじゃないですか。特に性についてはずーっと、「わからんずくめ」にさせられてきた結果、受け身にならざるを得なかった女性たち。そして、そういう母親たちから育てられたのが、この40代〜50代女性やと思うんです。

 

けんど。健康な人間には、性欲本能というものが、当たり前にあるんよ。なのに情報を遮断して、「女のくせに」「ババァのくせに」と、性のモラハラをする。受ける側は、「私がいやらしいんだ、はしたないんだ」と、自己否定を植えつけられる。これ、DVの構造と一緒なんですよ。

 

フェムテックブームは、「進撃の巨人」だった

 

令和の今。その風穴をあけたんが、フェムテックブーム、セクハラについてのコンプライアンスですね。

 

「…なんかやりづらくなったなぁ」と思う男性は多いと思いますが、そらそうですよ。情報を知った女性は、ようやく選択肢を得ることができたんです。選択肢を持った女性たちのことを、男性は支配コントロールしにくくなった。だからブツブツ言うとるわけです。放っておきましょう。

マンガ・アニメ作品の『進撃の巨人』ってありますよね。あれは、巨大な壁で囲んで平和を守ってきた人類が、ある日突然、巨人の襲撃にあうというストーリー。情報統制されとる世界の中で暮らしていたから、人類はずっと外の世界、文明を知らんかった(知らないなりに、立体機動装置やらを作ってしまうんですけどもね笑)。それが巨人の出現によって壁を壊されて、これまでは知らんかったことを知っていく。

 

つまり現代のフェムテックは、この『進撃の巨人』やったんです。

「え? 欧米では女性が普通にバイブレーター買ってるの?」「え? 腟って、普通のボディソープで洗ったらにおってしまうの?」…etc.

 

「そんなこと、誰も教えてくれへんかった!」と、あなたはなりませんでした?
ほいでね。新型コロナウイルスによるパンデミックも、ある種の『進撃の巨人』だったんです。ステイホームが続き、セックスを再開する夫婦も増えた。家の中で、性の情報を配信するYou Tube番組を観る人も圧倒的に増えた(わたくしのYou Tubeチャンネル「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室」も登録者数が激増しました)。出会い系のマッチングアプリなんぞも登場して、40代〜50代にも出会いのきっかけが増えた。つまり今は、壁が壊れて、知らなかった性の情報がなだれ込んできた状態なんですね。

 

ここからはどうしたいか、自分の意思で決めるんよ

 

けんど。OurAgeのアンケートでは、6割近くの人が「(パートナーあるなし問わず)今、セックスをしていない」という結果になったそうです。

(OurAge 2021年10月1日~11月1日実施。回答者507人。平均年齢49.08歳)

そして今でもやっぱり、自分の腟を自分で、「見ることも触ることもできない」という抵抗感を持つ女性は多いんですね。

 

 

情報は解禁となり、選択肢も与えられたけれども、ここまで生きてきて、気づいたら更年期ですよ。内閣府の『高齢社会白書』による平均寿命の推移を見ると、1947年の女性の平均寿命は、なんと53.9歳! 更年期の性をどうするかなんて考える前に、もう亡くなってたんです。

 

さぁそこで、

「人生100年時代」に生きる令和の皆さんは、どうしますか?

 

豊かな生活というのは、「選択肢のある生活である」とも、私は言うとるんですけども、ようやく今、ケーキもあるし、豆大福もあるし、おかきもせんべいもあるよ、という「選択ができる時代」が到来しました。

 

 

つまり、ここからが、自分の意思なんよ!

 

いろんな選択肢があることを知った今は、自分の意思で、自分で決めるんです。「今からひと花咲かせたい!」という人は、ずっとセックスを楽しめるように、必要なケアをしてほしいし、それは決して「いい年して、頭おかしいんちゃう?」と他所様に言われることではない。おつとめ的な義務感のセックスをしている人は、そこから解放されていいし、パートナーがいない人も、快感をあきらめなくていい。だって今はセルフプレジャーのトイもいっぱいあって、インターネットでも買えますからね。したくない人は、まわりがイケイケだからって、しなくてもいいんです。ノンバイナリー(自分の性自認〈=体の性ではなく、自分で認識している自分の性〉が男性・女性という性別のどちらにもはっきりと当てはまらない、または当てはめたくないという考えで、「 第三の性」ともいわれる)の人は、その生き方でいい。

いちばん大切なことは、自分が願う性のあり方は何かを追求すること。そして、それを全うすることや。

 

今の自分は、どうありたいのか? 田舎で暮らしたいんか、オーガニックを食べたいんか、今日はパンツじゃなくてワンピースが着たいんか? 「自分の性をどうしたいんかわからん!」という人はまず、日常を自分の意思で選択するトレーニングをしましょう。すべてはそこからやと思いますよ。

 

 

 

 

撮影/天日恵美子(先生) 角守裕二(花) 取材・文/井尾淳子

 

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